第4章:レベル1 ― 時間の代償 ~宇宙ステーションの死闘と、『残り寿命』を通貨にする謎の商人~
宇宙の凍てつく冷気が軌道ステーションの分厚い防弾ガラスを透過し、エリアスの骨の髄まで染み込んでくるようだった。長い一瞬の間、肺の中で呼吸が止まった。絶対的な暗闇の海の中で無言のまま自転する地球――そのあり得ない光景が、彼の冷静さを崩壊させようとしていた。湿った下水道や地下の化学実験室から、グリッチを起こしたたった一度のまばたきのうちに地球の軌道上へと飛ばされたのだ。
だが、何千時間ものデジタルなサバイバルで鍛え上げられたゲーマーの本能が、再び主導権を取り戻した。(背景に気を取られるな)彼は首を振って自分に言い聞かせた。(ただのスカイボックス(背景テクスチャ)の変更だ。基本ルールは変わらない。タイマーがあるなら、それを攻略する方法も必ずあるはずだ)
エリアスは無限の宇宙から視線を外し、今自分が立っている超モダンな部屋へと意識を集中させた。無菌状態の空間で、白いポリマーの壁に埋め込まれた冷たいLEDパネルに照らされている。中央には、暗いスクリーンが並ぶ指令コンソール群が鎮座していた。1秒たりとも無駄にできないことはわかっていた。右上のタイマーは、大脳皮質崩壊へ向けて容赦なく時を刻み続けている。
彼は体系的にエリアの探索を開始した。膝をつき、プログラマーがガムテープで貼り付けた救急キットや弾薬がないかと期待して、コンソールの下に手袋をはめた手を滑らせる。何もない。壁の根元にある通気口の格子の後ろを確認する。何もない。異常な当たり判定や隠しパネルがないか滑らかな壁を手探りする。やはり何もない。
苛立ちから悪態をつきかけたその時、視界の端に微かな反射が捉えられた。天井の最も奥まった隅、LEDの影が届かない場所に何かが挟まっていた。エリアスは目を細めた。黄金のスカラベ(コガネムシ)に似た小さな機械仕掛けの虫で、極めて微弱な光の点滅を放っていた。手が届かない絶妙な高さに配置されている。ジャンプして腕を伸ばしてみたが、指先は標的の数センチ手前で空を切った。
「クソッタレなレベルデザイナーめ」彼は唸った。それの正体は正確にわかっていた。古いアクションゲームやアドベンチャーゲームでは、こうした手の届かない小さな収集アイテム(コレクタブル)には武器を使う必要があるのだ。
タクティカルナイフを抜き、距離を計算して滑らかな動きで投げた――いや、投げようとした。『システム』は近接武器を投擲することを許可していなかったのだ。インベントリの物理法則がナイフを彼の手に固定していた。
(考えろ、エリアス。考えるんだ)
助走をつけ、指令コンソールの上に片方のブーツを乗せて踏み切り、壁を蹴って跳躍の最高到達点で真上に向かってナイフを突き出した。刃がキーンという金属音を立てて黄金の虫を捉えた。スカラベは黄金の火花の雨となって砕け散り、彼の肉体へと吸収された。
甲高く神々しい通知音が頭の中で鳴り響き、HUDが点滅した。
【シークレット発見。ボーナスタイム追加:+30分】
エリアスはタイマーを見た。赤い数字がグリッチを起こし、再調整される。
【大脳皮質崩壊まで:05:19:22】
捕食者のような笑みが唇に浮かんだ。「よし」両足で重く着地しながら、彼は囁いた。「これで時間をチャージできることがわかったぞ。だが、シークレットがこんな顕微鏡サイズなら、鷹のように目を光らせておかないとな」
その瞬間、氷のように冷たい気づきが彼を襲った。ジャケットから再びラミネート加工のマップを取り出す。まだ読めないコードで埋め尽くされた白い紙のままだった。ゲームは彼のプレイスタイルに合わせて進化していたのだ――地下研究所で彼がマップに頼りすぎたため、『システム』は彼からマップを奪い取った。今や頼れるのは彼自身の知覚力だけだ。
ホールの最後の隅がまだ未確認のまま残っていた。そこにはスイッチやボタンだらけの奇妙な金属棚があった。エリアスは論理的な組み合わせを探して3分間かけてすべてのボタンを押してみたが、何も起きなかった。ただの背景オブジェクト(プロップ)だと彼は推測した。スクリプトが紐付けられていない使い回しのアセットだ。
それでも、立ち去るなと本能が告げていた。身をかがめ、宇宙の塵が溜まっているような棚の後ろの狭い隙間に手を伸ばした。指先が冷たい円筒形の金属に触れる。それを掴んで引き出すと、9mm弾の小さなパッケージが2つ出てきた。見事に隠された合計9発の銃弾だ。
ベレッタのマガジンを抜き、丹念に弾を込めた。
【ベレッタ残弾:14発】
これで部屋は完全にクリアになった。回収できる有益なピクセルはもう1つも残っていない。彼は唯一進める扉――重厚な空気圧式のスライドハッチへと向かった。
敷居を跨ぐ前、エリアスはドア枠に身を張り付けて中を覗き込んだ。目の前の回廊は果てしなく長く、酸性のような緑と血のような赤の間でヒステリックにグリッチを起こすネオンの光だけによって破られた薄闇に沈んでいた。10メートルほど先、通路の真ん中に2体の存在が立っていた。
エイリアンだった。だが、筋肉モリモリのグロテスクな怪物ではない。古典的な『グレイ』の姿そのものだった――背が低く、華奢で、電球のように膨らんだ頭と大きな黒い目を持っている。無防備に見え、その脆さゆえにどこか愛らしくさえ見えた。
だが、エリアスは素人ではなかった。「サバイバルホラーにおいて」銃をしっかりと握りしめながら彼は呟いた。「何かが無害に見えるとしたら、それは油断した瞬間にプレイヤーを殺すよう設計されているからだ」
彼は回廊へと飛び出した。ブーツが金属の床に触れた瞬間、2体の小さなエイリアンがダッシュした。そのちっぽけな肉体は不自然な速度で動き、狂った虫のように空気中で残像を描いた。その無音ぶりは、どんな咆哮よりも恐ろしかった。
エリアスはベレッタを構え、最初のエイリアンの膨らんだ頭に照準を合わせて引き金を引いた。
バン!
巨大な黒い両目のど真ん中を捉えた、完璧な一撃。だが、エイリアンは倒れなかった。鉛の弾丸は割れた陶器のような音を立てて灰色の皮膚に弾かれ、1ミリもダメージを与えることなく軌道を逸らされたのだ。
(銃弾無効か!)心拍数を跳ね上げながら、エリアスは悟った。当然だ。弾薬を無駄遣いさせるために、銃火器に対する耐性を持たせた小型モンスターなのだ。
本能はショットガンを抜くよう促したが、アイテム管理の論理が急ブレーキをかけた。12ゲージの弾は残り1発しかない。こんな雑魚敵相手に使うわけにはいかなかった。
最初のエイリアンが飛びかかってくるほんの一瞬前、彼はスリングに吊るした銃から手を離し、タクティカルナイフを引き抜いた。怪物が跳躍する。エリアスは地面に両足を踏ん張り、上半身をひねって残忍な一閃を振り下ろした。
さっきの巨人の鎧には通用しなかった刃が、小さなエイリアンの柔らかい頭蓋骨にはバターのように深く沈み込んだ。小鬼は黒いピクセルとなって砕け散った。
だが、近接攻撃のせいで一瞬だけ隙が生まれた。2体目のグレイが彼に飛びかかり、左腕にしがみついてきたのだ。怪物が口を大きく開ける。小さな歯ではなく、ヤツメウナギのように同心円状に牙がびっしりと並んだ、拡張可能な円形の顎だった。
エイリアンはエリアスの腕の肉へと歯を突き立てた。
火山が噴火したような引き裂かれる激痛が神経で爆発した。服が裂け、温かい血が肘を伝って流れるのを感じながらエリアスは絶叫した。怪物の口は、その体格とは完全に不釣り合いな大きさだった。
視覚HUDの上で、5つの真紅のハートのうちの1つが砕け散り、空っぽの灰色の輪郭へと変わった。
【体力:4/5】
激痛に狂乱しながらも、エリアスはそれを引き剥がそうとはしなかった。空いている右腕で、自分の肉に噛みついている小さなエイリアンの脇腹を何度も突き刺したのだ。3回、4回、5回と闇雲にナイフを突き立てると、怪物は甲高い金切り声を上げてグリッチと共に消滅し、袖を赤く染めて荒い息を吐くエリアスが膝をついたまま残された。
脈打つ腕をさすりながら、彼は苦労して立ち上がった。2体のうち少なくとも1体は何かを「ドロップ」しているだろうと期待して地面を見たが――何もない。医療アンプルも、パワーアップアイテムもない。『システム』は生存に報酬を与えず、ただミスだけを罰した。
重い息を吐きながら、長い回廊を再び歩き出した。緑と赤の照明が視界をぼやけさせ続け、幻のような影を作り出す。通路の突き当たりにある重厚な気密扉に到達し、右上へと視線を投げた。
【大脳皮質崩壊まで:05:01:57】
失ったハート1つ分の喪失感が、肉体的な傷と同じくらい痛んだ。「あり得ないな」長く空っぽの金属の腸のような通路を振り返りながら、エリアスは呟いた。「厄介な敵を2体も配置したこんな長い回廊が、ただ扉に繋がっているだけだと? アセットの無駄遣いだ。絶対に『隠し部屋』があるはずだ」
出口の扉を無視して引き返し、回廊の壁を必死に触り始めた。初期の3Dシューティングゲームの古典的な論理を使い、滑らかな金属板に手のひらを押し当て、継ぎ目を叩き、パネル間のテクスチャの違いを探した。
4分間の空振りの末、故障した緑色のネオンに照らされた、他の壁と全く同じに見える一画を強く押し込んだ。
空気圧のシューという音と共に、パネルが内側へと引っ込み、横へとスライドして開いた。
隠された小さな窪みの中、ホログラムのマネキンの上に『宇宙服』が浮かんでいた。洗練されたデザインで装甲されており、ケブラー繊維の縁取りとミラーバイザー付きのヘルメットを備えている。エリアスが手を伸ばして合成繊維に触れた瞬間、宇宙服は物質転送されるように消え、脳内インベントリの新しいサブメニュー【衣装】の項目に瞬時に登録された。物理的に着脱する手間をかけず、コマンドひとつで一瞬にして装備・解除できる仕様だった。
(宇宙服をくれるってことは、もうすぐ酸素が保証されないエリアに出るってことだな。ステージクリアの必須アイテムだ)
発見に気を良くした彼は気密扉へと戻り、ロック解除パネルを押した。
次の部屋はエアロック(減圧室)だった。足を踏み入れた途端、新たな脅威と鉢合わせた。今度のエイリアンは背が高く、大柄な人間ほどの体格をしていた。その皮膚は腐ったような緑色で粘り気があり、無数の腫瘍のような突起に覆われている。
エリアスの計算高い頭脳が即座に回転し始めた。(さっきの小型エイリアンは銃弾無効で、俺にナイフを使わせるよう誘導してきた。普通のゲームなら、弾を節約するためにこいつにもナイフを試すところだ)
だが、『プロトコル0』のシステムは普通のゲームではない。進化し、順応し、プレイヤーの予想を裏切る。もしゲーム側が彼の近接攻撃を待ち構えているのなら、やるべきことはその「真逆」だ。
彼はベレッタを抜いた。緑のエイリアンが唸り声を上げ、隔壁を震わせる重い足音で彼に向かって走り始めた。
エリアスは頭部に狙いを定めて発砲した。銃弾は怪物の頭蓋骨のど真ん中を捉えて綺麗な風穴を開けたが、エイリアンは1ミリも速度を落とさなかった。クリティカルダメージが入らない。
「頭に脳みそがないタイプか。定番だな」後ずさりしながらエリアスは呟いた。怪物の強烈な張り手をかわしながら素早く視覚スキャンを行い、ある特徴に気づいた。緑のエイリアンの胸の中央で、他の部位よりもはるかに黒ずんで濃い緑色をした球根状の組織の袋が脈打っていたのだ。
銃口を向け、息を止めて照準を安定させると、その袋のど真ん中に単発で1発撃ち込んだ。
ドォン!
黒ずんだ塊が破裂し、床に黄色っぽい酸を撒き散らした。エイリアンの肉体は瞬時に硬直し、ただの死肉の塊となって前のめりに倒れ込んだ。
素早く残弾インジケーターを確認する。
【ベレッタ残弾:12発】
鮮やかな勝利にもかかわらず、彼は気を抜かなかった。銃をしまい、エアロックの徹底的な探索を開始する。1平方ミリメートルたりとも見逃さず漁った。空調ダクトの上、網目状の金属床の下、油圧サポートの近くの死角。
タイマーが容赦なく減っていく。5分、10分、16分が経過した。
ちっぽけな部屋を漁るために失われた16分間。このサディスティックなゲームにおいて、時間は文字通り彼の生命資源だった。アイテム探しに費やす1秒1秒が、脳死への一歩なのだ。
自分自身の頑固さを罵りながら諦めかけたその時、地面の最後の暗い隅、排気パイプの影とほとんど同化するような場所で、艶消しの黒い金属でできた小さな六角形のデバイスを見つけた。
拾い上げると、HUDが即座にそれを識別した。
【フェーズ運動エネルギー・ディフレクター(偏向シールド)】
説明:正面からのあらゆる攻撃を反射する量子シールドを生成するブレスレット。最大チャージ数:3回。リチャージ不可。
エリアスはそれを左手首に装着した。心強いクリック音と共にデバイスが肌にぴったりとフィットする。「上出来だ」16分間が無駄ではなかったと感じながら、彼はため息をついた。サバイバルホラーにおける絶対防御アイテムは、終盤級の装備だ。
目の前に残されているのは、宇宙船の巨大な外部ハッチだけだった。分厚く密閉されたその金属の向こうは、絶対零度の宇宙空間だ。
インベントリメニューを開き、『宇宙服』を選択した。デジタル化された光の閃光の中で普段着が消え去り、分厚く防護された宇宙装甲服へと切り替わる。HUDに酸素残量と気圧のインジケーターが追加された。
すべての武器をタクティカルサブメニューに整理し、両手を空けた状態でディフレクターの起動スイッチをいつでも押せるよう準備を整える。時間はあまり残されていない。
ロック解除ボタンを押した。ハッチがシューという音を立てて開き、残っていた空気を外へと吸い出していく。エリアスは虚無の中へと一歩を踏み出した。
無重力と宇宙の完全な静寂が彼を包み込んだ。宇宙船の外壁は湾曲した金属プレートの広大な広がりだった。機体の背面に沿って、黄色い安全用の手すり(ハンドレール)が一本の強制ルートを描いている。
手すりに沿って不器用に浮遊しながら前方へと進み、船体の上部付近に到達したところで足を止めた。
広大な外部プラットフォームの中央に、超巨大なエイリアンが仁王立ちしていた。重厚なバイオメカニカル(生体機械)の鎧を身にまとい、アサルトライフルとプラズマキャノンを掛け合わせたような武器を構えている。『ボス』だ。
エリアスは攻撃を仕掛けようとしたが、計算高い彼の頭脳がピタリと凍りついた。(待てよ)船体の構造を見渡す。(ここは360度マップだ。浮遊する足場があるすべてのゲームにおいて、プログラマーは最高のシークレットを文字通り『プレイヤーの足元の裏側』に隠すものだ)
宇宙服のマグネットブーツで手すりにしっかりと固定し、眼下に広がる無限の虚無へのパニックとめまいに逆らいながら、逆さまになって後ろへと身を乗り出し、宇宙船の腹の下を覗き込んだ。
そこにあった。停止した2基の巨大なスラスターの間に挟まるようにして、明るく脈打つ赤い『ハート』が浮かんでいたのだ。最大体力を増やす王道のパワーアップアイテムだ。
宇宙の虚無へと投げ出されずに物理的に手が届く距離ではなかった。(最高の直感だぜ)ためらうことなくベレッタを抜き、虚空の中で慎重に狙いを定めて発砲した。銃弾がパワーアップアイテムを捉える。ハートは赤い光となって砕け散り、彼に向かって飛来すると宇宙服の中へと吸い込まれた。
勝利のファンファーレのような音と共にHUDが更新され、体力ゲージに6つ目のハートが追加された。
【最大体力上昇。現在値:5/6】(満タン5個、グレイに噛まれた分で空が1個)。
エリアスは身を引き上げ、元の直立姿勢へと戻った。さあ、ボスの相手をする時間だ。
目的が奴を殺すことなのか、それとも一定時間耐え抜くことなのかを見極める必要があった。普通のゲームならマガジンを空にするまで撃ちまくって運を天に任せるところだが、『プロトコル0』において銃弾は神聖な資源だ。
まずは円形の手すりに掴まったまま怪物の周囲を歩き回り、攻撃パターンを研究するために巨大なエイリアンをじっと観察することから始めた。
ボスは待たせなかった。生体機械の武器を持ち上げる。銃身が暴力的な青い光で輝き始め、純粋なエネルギー光線をチャージした。
音もなく一撃が放たれた――エリアスの胸を真っ直ぐに狙うプラズマの稲妻だ。
電光石火の反射神経で、エリアスは手首のボタンを押した。ディフレクターが半透明の青いエネルギーシールドとなって展開する。レーザー光線が障壁に激突し、目もくらむような閃光と共に跳ね返ると、飛んできた軌道を正確に逆戻りしてボスの胸板のど真ん中に直撃した。エイリアンはよろめき、エリアスのヘルメット内の無線を通して唸り声を響かせると、明らかに気絶して片膝をついた。
(ギミックは理解したぞ)エリアスは興奮しながら考えた。(奴の攻撃を反射すればいいんだ)
だが1秒後、システムの冷酷な論理が彼の脳内で警報ランプを点滅させた。(いや、そんなに単純なはずがない。こいつはボスだ。俺を含む普通のプレイヤーなら、あと2回撃ってくるのをただ待って、シールドの3回分のチャージを使い切って楽に勝とうとするはずだ。ゲームデザインにおける『3の法則』だからな)
もしゲーム側が「ありがちな選択」を罰するように進化しているのなら、システムがそのギミックを死の罠へと変える前に、戦略を変えなければならなかった。
エイリアンがまだ負傷して膝をつき、無防備になっている間に、エリアスはベレッタを構えて正確な一撃を放った。銃弾は怪物の弱体化した鎧を貫通し、絶叫を上げさせた。
(よし、今なら通常弾でもダメージが通るぞ!)
ボスは激怒して立ち上がり、さっきよりもはるかに巨大なエネルギー弾をチャージした。狙いを定め、発砲してくる。
エリアスはシールドの2回目のチャージを起動した。ディフレクターが激しく振動してプラズマの波を跳ね返し、それをまともに浴びたエイリアンが後方へと大きく体勢を崩した。
今度、エリアスは怪物が膝をつくのすら待たなかった。反射した直後、即座に銃の照準を合わせ、気絶したボスの頭部に向かって薬室内の最後の1発を真っ直ぐに撃ち込んだ。
銃弾が標的のど真ん中を捉えた。巨大なエイリアンの頭部が、白い光の粒子の無音の爆発となってメロンのように弾け飛んだ。
【大脳皮質崩壊まで:04:36:21】
エイリアンの爆発は消えなかった。際限なく膨張し始め、エリアスの視界全体を飲み込んでいく。白い光が宇宙船を消し去り、星々を消し去り、地球そのものを消し去った。タイマーがほんの一瞬だけ停止する。
感情の一切ない合成された女性の声が、あらゆる場所から、そしてどこでもない場所から響き渡った。
【レベル1クリア】
【クリア報酬タイム追加:+60分】
【大脳皮質崩壊まで:05:36:17】
重力が突然戻り、息が詰まった。目もくらむような光が消えた時、エリアスは全く異なる状況の中にいた。
怪物もいなければ、血もない。宇宙でもなかった。
そこは影ひとつない、明るく心地よいリンボ(辺獄)――絶対的で無限の虚無の空間だった。彼は座り心地の良い革張りの椅子に腰掛けていた。目の前には、ピカピカに磨かれた長いオーク材のテーブルを挟んで、もうひとりの人物が座っていた。
完璧に仕立てられたスーツを着て、鼻の上に丸眼鏡を乗せ、唇に読み取れない笑みを浮かべた老紳士だった。彼の前のテーブルの上には、高級ブティックのショーケースのように、ベレッタのマガジン、ショットガンの重い赤いシェル、ハート型の小さなクリスタル(1HP回復)、そして異なる環境を映し出す3つの奇妙な浮遊するホログラム球体が並べられていた。
「『聖域』へようこそ、旅人よ」温かく安心感を与える声で、男が言った。「私は『商人』だ。ここには君が必要とするすべてのものが揃っている。ベレッタの弾薬、12ゲージのシェル、回復のハート、そして何よりも……君が挑む『次のレベル』の目的地を選ぶ権利だ」
エリアスはまばたきをし、宇宙服のヘルメットをゆっくりと脱ぎながら状況を分析した。ステージクリア後のショップハブだ。「悪いな」しゃがれた声でエリアスは言った。「いい品揃えだが、俺が後ろに残してきた死体からは硬貨の類は何ひとつ見つからなかった。通貨なんてない。金貨1枚すら持っていないぞ」
商人は笑みを深め、手入れの行き届いた指をテーブルの上で組んだ。「それは違うよ、エリアス。君は自分が思っているよりもずっと裕福だ」老人は指を1本立て、青年の視覚HUDを指差した。「見たところ、君の手元にはきっかり『05:36:17』があるようだね。ここでは、君の『時間』こそが通貨なのだ。そしてそれは完全に交換可能だよ」
エリアスは目を見開き、喉の奥で息を呑んだ。
銃弾を買うことは、大脳皮質崩壊(脳死)へと近づくことを意味していた。傷を癒やすことは、現実の命の分数を放棄することを意味していた。これまで目にした中で最も残酷な経済システムだった。驚いたものの意気消沈することはなく、彼の頭脳は即座に交換レートとリスク・リターンの比率を計算し始めた。(狂気的なまでの慎重さで選ぶしかないな)
「ただし、小さな条項がひとつある」商人はベストに着けた黄金の懐中時計を軽く叩きながら付け加えた。「このテーブルに座っている間、君の生命タイマーは進まない。ここは安全だ。だが、買い物を済ませて次の目的地を決めるために与えられた『現実世界の時間』は、たったの5分間しかない」商人の瞳が冷たく無慈悲なものへと変わった。「もし制限時間が切れた時点で次のレベルを選んでいなかった場合、最も多くの分数を消費するレベルへと強制的に転送されることになる」
エリアスはゆっくりと頷き、テーブルに両肘をついた。チェスのゲームは新たなフェーズへと突入したのだ。自分自身の命を消費し始める前に、手持ちの正確な確認を行うためインベントリを表示させた。
--- 装備・ステータス確認 ---
【銃火器】
・ベレッタM92F(9mm):残り9発
・ショットガン(12ゲージ):残り1発
【近接武器/ツール】
・タクティカルナイフ:1本
・大型パイプレンチ:1本
【防具】
・フェーズ運動エネルギー・ディフレクター:残り1チャージ
・宇宙服:コマンドでいつでも装備可能
【体力・ステータス】
・ハート:5/6
・精神状態:極限の緊張下にある冷静さ
・所持通貨(残り寿命):05:36:17




