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第16章:地下4階(ベースメント4)の死闘 ~超リアルな新型ホラーと、AIのコードをハックした『相棒』の帰還~

深い引っ掻き傷と酸化した血の染みが刻まれた灰色のモノリス――重厚な金属扉が彼の目の前にそびえ立っていた。エリアスが深く息を吸い込むと、バンカーの冷たく淀んだ空気が肺を満たした。ここからゲームが変わる。もはや練習でもなければ、オブラートに包まれたチュートリアルでもない。ここからの敵は「本物」だ。


視覚的なインパクトは衝撃的だった。単なるビデオゲームではなく、点滅するネオンの下で舞う埃の粒子まで見分けられるほど恐ろしく高精細なグラフィックを備えた、超リアルなサバイバルホラーだった。額に滲む冷や汗は本物に感じられ、手の中の銃の重みも完璧だった。


自分のステータスを素早く確認する。1ミリ秒だけ目を閉じ、神経HUDを呼び出した。

残り寿命(タイマー):10:21:11。

体力(HP):100%。左上に並んでいたレトロゲーム風の赤いハートもなければ、わかりやすいエネルギーバーもない。負傷すれば痛みを感じ、出血し、動きが重くなる仕様だ。


インベントリを確認する。鋼鉄の冷たい感触がわずかな安心感を与えてくれた――合計29発の銃弾が入った『サプレッサー付きベレッタ』、完璧な刃付けがされた『コンバットダガー(戦闘用短剣)』、そして『電池式懐中電灯』だ。

(サバイバルホラーを最初から消音武器持ちでスタートさせるだと?)冷笑的な笑みを浮かべ、エリアスは考えた。(ほとんどチートみたいなもんじゃないか。あのサディストのCEOは、ゲームデザインってものを本当に理解しているのか? この手のゲームにおいて、サプレッサーは敵視(アグロ)の経済バランスを完全に破壊する装備だぞ)


プロゲーマーの分析的な頭脳が計算を始めた。タイマーは10時間強を示している。前のゲーム――つまりすべてが崩壊する前にプレイしていた旧インスタンスでは、最初の6つのステージを探索してクリアした。だがデータマイニングや古いマップを覗き見た際、彼は真実を目にしていた――全エリア数は「10」だったのだ。つまり、ここから生きて脱出するために残されたステージは、きっかり「最後の4つ」ということになる。

(4つのマップに10時間か)彼は推論した。(1ステージあたり約2時間半使える計算だ。探索、謎解き、そしてボス戦を考慮すれば妥当な時間設定だな。完璧なペースを維持しさえすればいい。ステージクリア時にいつもの商人が出てくるのか、それともゲーム内の特定ポイントに配置されているのかを見極める必要があるが……このクラスのタイトルなら、間違いなく後者だろうな)


だが、ひとつだけ不気味な点があった。HUDに「ミニマップ」がなかったのだ。

(一体どこへ行ったんだ、ゴキブリ?)彼は自問した。外側から彼を助けてくれていた頼もしいハッカー、あの見えない相棒はシステムのチェックを逃れて生き延びたはずだ。なぜ彼が転送される直前にあの2枚の『スマイルカード』を持ち去ったのかはわからないが、何かを企んでいることは確かだった。


エリアスは扉のプッシュバーを押した。蝶番が金属的なうめき声を上げる。

敷居を跨いだすぐ先で、回廊が二手に分かれていた。右と左だ。照明は薄暗い。どちらの方向にも、足を引きずる不自然な歩調で動く人影があった。最初の感染者たちだが、どちらも彼の方を向いてはいなかった。

エリアスは左の道を選んだ。光が少なく、隠れるための影が多いからだ。


膝を曲げ、ステルスモードで移動する。ゲームの物理エンジンは驚異的だった――足の裏にかける体重の圧力をコントロールすれば、リノリウムの床の上でブーツが一切音を立てないのだ。最初の感染者の背後へと忍び寄る。有効範囲に入った瞬間、システムが完璧なポジショニングを認識した。滑らかで残忍な動きで、エリアスは左手で怪物の顎を掴んで頭を後ろへと引き、同時に右手でコンバットダガーを頭蓋骨の付け根へと直接突き立てて延髄を切断した。死肉の上に死肉が落ちる鈍い音を立てて、死体が崩れ落ちた。噴水のような大げさな出血はなく、おぞましいゴボゴボという音と黒い血の筋が流れただけだった。

一撃必殺。消費弾数ゼロ。


側面の部屋を体系的に調べ始める。多くは鍵がかかっており、唯一開いていた部屋は荒れ果てていた。デスクの上に、戦利品(ルート)の紛れもない輝きを見つける。ベレッタ用の9mm弾を2発回収した。

【ログ:ベレッタ弾+2。合計:31発】


回廊の突き当たりまで進むと、自動ドアが開いて広大な『生物実験室(バイオラボ)』へと出た。光景はオープニングのブリーフィング映像をそのまま再現していた。超リアルな血だまりの中で、研究員や軍人たちがバラバラになって横たわっている。死体の一部は変異しており、割れた試験管の間をあてもなく彷徨っていた。

研究員の死体の1つを漁り、磁気カードキーを見つけた。HUDがそれを識別する。【電子カードキー ― 地下4階(ベースメント4)】。

(予想通り、下へ降りていく構造か。残りの4つのマップは地下深くへと続いているんだな)


コンプリート主義者としての綿密な探索が実を結び、蛍光グリーンの液体が入った医療アンプルを1本見つけてインベントリに回収した(回復アンプル:1本)。

作業台の上には書類が散乱していた。素早くページをめくる――戦争時に不眠不休で戦う兵士を作るための軍事プロジェクトだったという内容だ。彼にとってはどうでもいい、典型的な世界観(ロア)の収集要素だった。

だが、電源の入った端末の1つが、施設内に存在する「2種類の感染者」のデータを表示していた。研究員たちが『スロンビ(Slombie)』と名付けた通常の鈍重なゾンビと、狂犬病に感染したかのような攻撃的な変異種『ロンビ(Rombie)』だ。

(スロンビとロンビ、ね)エリアスは心の中で評した。(片方はスロー(鈍重)な奴で、もう片方は狂犬病(レイビーズ)でブチギレてる奴ってわけか。もっとタチの悪い上位種も出てくるんだろうな……)


室内を調べていると、コンピュータのキーボードの一部のキーが赤く血で汚れているのに気づいた。数字の『1』『3』『9』『0』だ。4桁の暗証番号。役に立つかもしれない。

すぐにメインデスクを探しに行くと、案の定そこに金庫があった。順列(組み合わせ)を順番に試し始める。正しいコードが『9310』だと突き止めるまでに、かなりの回数を試す羽目になった。

内部タイマーを見る――あの暗証番号だけで「20分間」も失っていた。

(これはマズいな)苛立ちながら自分に言い聞かせた。(1マップあたり2時間半の余裕があるからといって、こんな乱数(RNG)じみた小謎解きで時間をドブに捨てていいわけじゃない。次はもっと早く解かないと)

良かったのはその報酬だった――シリンダーに4発の弾が装填された『マグナム(リボルバー)』を見つけたのだ。

(こんな序盤でマグナムが手に入るのか? 終盤には無限ロケットランチャーでもくれるのか、それともこのエリアのボスが今から重火器を必要とするほど悪夢じみた強さなのかのどっちかだな)


マップが見つからなかったため、先へ進むことに決めた。

独房ブロックを通り抜ける途中、最初の2体の『ロンビ』と遭遇した。血走った目をした奴らが、野獣のような猛スピードで彼に向かってダッシュしてくる。

エリアスはサプレッサー付きベレッタを構えた。頭部への正確な2発だけで、2体を排除するには十分だった。

【ログ:ベレッタ弾-2。合計:29発】

独房の中で1体の『スロンビ』も見つけ、ナイフで素早く処理して別の鍵――今度は電子式ではない真鍮の鍵を手に入れた。合う鍵穴が周囲になかったため、そのまま保管しておく。


独房を抜けると、自分の最初の部屋の反対側にあたる回廊へと出た。『軍司令官の部屋』を含むいくつかの扉があったが、たった今見つけた真鍮の鍵では開かなかった。唯一の選択肢は回廊に沿ってそのまま進むことだ(あの部屋はバックトラックで時間を浪費させるための撒き餌ではないかとエリアスは疑った)。


回廊を抜けると、軍人と科学者用の巨大な『社員食堂(カフェテリア)』に出た。ゾンビがうようよと溢れかえっていたが、ステルスモードで順番に処理するのに完璧な配置になっていることをエリアスは即座に見抜いた。

まずテーブルの後ろを這い進み、ホールの方を向いていた唯一の個体――バーカウンターにいたゾンビをナイフで排除した。カウンターの後ろで小さな金庫を見つけ、真鍮の鍵を使って開けるとベレッタの銃弾が「12発」入っていた。

【ログ:ベレッタ弾+12。合計:41発】


食堂の奥へと進み始め、スロンビを1体ずつステルスで処理していく。最後の1体に辿り着いた時、ロンビの1体に見つかってしまい、その物音でさらに2体の攻撃的な感染者が気づいた。エリアスは外科的な正確さで、突進してくる3体すべてをそれぞれ頭部への1発ずつで排除した。

【ログ:ベレッタ弾-3。合計:38発】

最後のロンビが倒れる際、『軍司令官の部屋の鍵』をドロップした。


部屋へ戻るために回廊を走って引き返したが、角を曲がった瞬間、サプライズと鉢合わせた。『軍司令官』本人だった。狭い通路の中で頭から突進してくる、超巨大で重装甲をまとった巨像だ。

エリアスは動じなかった。見つけたばかりの『マグナム』を抜き、胸板への壊滅的な単発射撃1発でそいつを排除した(マグナム残弾:3発)。

死体からのドロップ品はなかったが、部屋を開けると報酬が待っていた――8発のシェルが装填された『タクティカル・ショットガン』だ。

(よし、今持っているのは電子カードキーだけだ。先へ進んで、もう一度食堂を抜けよう)


食堂を抜けると、巨大な『食料庫(パントリー/倉庫)』に出た。壁には食料や武器がずらりと並んでいる。ガラスケースの向こう側に飾られたロケットランチャーをエリアスはうっとりと眺めた。

(残念ながらただの背景オブジェクト(プロップ)か)彼は思った。(美しいグラフィックになったとはいえ、雰囲気作りのための触れないオブジェクトがあるのはここも同じだな。まあ実際、あのロケットランチャーが使えたらチートになっちまうしな)


突然、電源が落ちた(ブラックアウト)。エリアスはすぐさま肩に装着した電池式懐中電灯のスイッチを入れた。だがバッテリー残量がほぼ瞬時に最低値まで落ち、そのまま消えてしまった。

(わざとやりやがったのか?)

彼は倉庫のほぼ中央に立っており、前方と背後の両方から感染者たちのうめき声が聞こえ始めた。大群だ。彼を包囲しつつある。

(罠だ……今度もまたイカサマをしてやがる、中央コマンドから俺の懐中電灯を強制的にオフにしやがったんだ……)


その圧迫するような暗闇の中で、鮮やかな緑色のテキスト文字列が彼のHUDを埋め尽くした。


『お待たせしてごめんなさい。AIに異常を察知されないよう、顔の表情は変えないで。そして何より、私には絶対に話しかけないでください……もうあなたのインベントリの中に入ることはできません……今からあなたの画面にミニマップを追加します。これが見えるのはあなただけです。スマイルカードのおかげで(AIのコード内部に潜り込むために使いました)、今はシステムの内側から操作できています……向こうが汚い手を使うなら、私たちも同じようにやりましょう。もうひとつ私にできるのは、照明を断続的に点滅させるバグを発生させることです』


エリアスは顔の表情をピクリとも変えず、何事もなかったかのようにプレイを続けたが、最初の思考はこれだった。(バグを修正するバグ、か。ありがとよ、ゴキブリ。命の恩人だぜ。何か企んでくれていると信じてたよ。お前と一緒なら、プログラマーどもがどんな罠を追加してこようと絶対に乗り切れる)


照明がチカチカと点滅し始めた瞬間、新しい円形のレーダーミニマップを通じて、エリアスは暗闇の中の敵の動きを完全に先読みすることができた。ストロボのような大混乱の中、14発の銃弾を撃ち込んで周囲に群がっていた「9体のスロンビ」すべてを排除した。

【ログ:ベレッタ弾-14。合計:24発】

プログラマーたちの罠は機能しなかった。すべてゴキブリのおかげだ。


倉庫の突き当たりで照明が安定した。棚の上に隠されていたベレッタの銃弾6発を見つける。

【ログ:ベレッタ弾+6。合計:30発】


探索可能な部屋が並ぶ2本の長い回廊があるエリアへと出た。エリアスはまず右へ進み、単体のスロンビをダガーで処理して各部屋を確認した。回復アンプルをもう1本(アンプル合計:2本)と弾薬を獲得する。

【ログ:ベレッタ弾+4。合計:34発】

反対側の回廊へと引き返す。3体のロンビが突然飛び出してきたが、ベレッタのヘッドショット3発で瞬殺した。

【ログ:ベレッタ弾-3。合計:31発】

そちら側の部屋からは、懐中電灯を再起動するための『予備バッテリー』、ショットガンのシェル2発(ショットガン合計:10発)、そして拳銃の弾を回収した。

【ログ:ベレッタ弾+4。合計:35発】


残るはエレベーターへと向かうだけだったが、アクセス通路の手前を守るように小さな実験室があった。

その中にいたのは『ペイシェント・ゼロ(第0号患者)』だった。超巨大で膿みただれたデブのスロンビだったが、スピードがまったく欠けていなかった。エリアスに向かって猛ダッシュしてくる。

だが、エリアスは完全な集中状態(ゾーン)に入っていた。怪物の重い攻撃をすべていとも簡単に回避し、かわすたびに確実に発砲した。

【ログ:ショットガン弾-6。合計:4発】

【ログ:ベレッタ弾-8。合計:27発】


その外科的なリズムを維持し続け、ステージボスを仕留めた。HUD上に通知が表示される。【ボーナスタイム+30分を獲得】。

エリアスは武器をリロードした。(ゼロよりはマシだな)彼は思った。(もしすべてのステージがこの程度の難易度なら、驚くほど簡単にクリアできるぞ。だが、そう単純にはいかないって予感がするな)


『地下4階』の電子カードキーを使ってエレベーターに乗り込んだ瞬間、天井のハッチから降りてきた重装甲の軍人がナイフで彼を突き刺そうと襲いかかってきた。首を掻き切られるのは紙一重の偶然で免れたものの、肩に刃が突き刺さる。

【エリアスの体力:75%】

だがエリアスはすでにショットガンを構えており、銃口を真上に向けて頭部へのたった1発でそいつを排除した。

【ログ:ショットガン弾-1。合計:3発】

死体が落下する。(敵からのドロップ品はなし……いや、敵じゃなくて『プログラマー』と呼ぶべきか)本来のゲームパターンから完全に外れたその奇襲に対し、エリアスは唸った。


操作パネルでは地下1階と2階がロックされていた(このカードキーでは作動しない)。『地下3階』のボタンを押すと、降下する間にステージクリアのハイライト映像が流れ始めた。

編集された映像は、エリアス自身のプレイ風景を映し出していた――武器を見つけた場所、ミリ単位の回避、完璧な射撃、超リアルな弾道物理、そしてボスの虐殺シーン。視覚的なインパクトと残忍なアクションは圧巻だった。

(マジで自分たちの限界を超えやがったな)2つ目の映像を見ながらエリアスは評した。(アニメーションもテクスチャも……連中のこれまでの過去作すべてよりはるかに出来がいいぞ)

皮肉な笑みを浮かべた。(もし連中がサディスティックなクソ野郎どもの集団じゃなくて、コードでイカサマをする開発チームに俺が殺されかけてさえいなければ、喜んでこのゲームの案件配信(スポンサー)を引き受けてやったのにな)


画面がクリアリザルトの上で静止した。


--- 4ステージ中・第1ステージ(地下4階)クリア ---

・探索所要時間:2時間4分

【現在のインベントリ・ステータス】

・サプレッサー付きベレッタ:27発

・ショットガン:3発

・マグナム・リボルバー:3発

・コンバットダガー:1本

・電池式懐中電灯(バッテリー:100%)

・回復アンプル:2本

・体力(HP):75%(肩に刺し傷あり)


エリアスは素早くデータを分析した。残り合計10時間以内に残りの4マップすべてをクリアするための理想的な時間予算は、1マップあたり約2時間半だ。このステージ全体を探索するのに2時間4分を費やし、さらに30分のボーナスを獲得したことを考えれば、完璧に予定通りのペース(オン・トラック)だった。

(今のところ、タイマーは問題じゃないな)彼は思った。(本当の不安要素は、最後の4ステージの最初のマップからこれだけコードの罠やプログラマーの直接奇襲をぶつけてきたってことは……残りの3ステージは文字通りの地獄になるってことだ)


空気圧のシューという音と共にエレベーターの扉が開いた。次のエリアの暗闇が彼を飲み込んだ。


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