第14章:裏切り者の森と地獄の入り口 ~バトルロイヤルに紛れ込んだ『管理者』と、共闘(Co-op)の悪魔~
『雪山』に冷気が一切存在しないことが、エリアスを苛立たせ続けていた。直前のボスの灼熱のアリーナと比べてわずかな温度差すら感じないまま、この偽物の白い雪原の真ん中を歩かされるのは、プログラマーたちの無能さを示すさらなる証拠だった。一言も言葉を交わすことなく、彼とゴキブリはデコードされたマップが示す正しい道――岩の尾根の下に隠された洞窟へと続く小道へと足を踏み入れた。エリアスは自らに厳格な戦術的沈黙を課した。クリーチャーに直接情報を尋ねることは避け、虫の方から自発的にデータを提供してくれるのを待つ方がはるかに賢明だと判断したのだ。もし彼自身からコードを強制して「カンニング」しようとすれば、盗聴しているAIが確実に致死的なペナルティを発動させるはずだからだ。
洞窟の敷居を跨ぐと、視界がまったく効かない絶対的な暗闇に包まれた。方向を確認しようとエリアスが電池式懐中電灯を点灯させた瞬間、その光が彼の現在地を暴いた――虚空を切り裂いて飛来した銃弾が胸のど真ん中に命中し、防弾チョッキの耐久度を瞬時に「80%」へと低下させた。歯を食いしばって悪態をつきながら、エリアスは即座にライトを消し、手近な遮蔽物の後ろへと盲目的に飛び込んだ。
その瞬間、彼の『ペット』の有用性がコード破壊の真価を発揮した。ゴキブリがエリアスのインターフェースをハッキングし、敵の正確な位置を示す『ミニマップ』をHUD上に出現させたのだ。とはいえ、照準を合わせるための周囲の視界がないという問題はまだ解決していなかった。インベントリを利用し、エリアスは木の松明を取り出して素早い動作で火をつけると、赤い点が密集しているエリアのど真ん中へと力任せに投げ込んだ。
パチパチと燃える光が脅威の正体を照らし出した――拳銃で武装したグロテスクな人型の人形(ダミー人形)たちで、明らかに古いビデオゲームから使い回された旧式のアセットだった。ついに目に見える射線を確保したエリアスは、サプレッサー付きベレッタを構えて遮蔽物から身を乗り出した。残弾はきっかり25発。容赦のない照準で頭部へ4発撃ち込み、次々と撃ち倒して残弾を21発へと減らす。
ゴキブリは完璧なアイテム回収役としての働きを見せ、デジタル化された死体を漁りに行くと、エリアスの元へ松明とアサルトライフル用の貴重な銃弾「15発」を持ち帰ってきた。マガジンに装填すると、自動小銃の総弾数は初期の45発からきっかり「60発」へと増加した。
洞窟の奥深くへと行軍を再開すると、虫はさらに彼を驚かせ続けた。ゴキブリが洞窟の岩の天井へとよじ登り、2つの岩の隙間に潜り込んで「隠されたハート」を叩き割ったのだ。生命エネルギーがエリアスへと流れ込み、彼の最大体力を「8/8」へと引き上げた。青年は認識の戦慄と共にその強化を受け止めた――あんな場所には物理的に絶対手が届かなかったし、岩の間に隠されたあのアイテムを目視することすら不可能だったと悟ったのだ。
暗闇が通路を塞ぐ2体の巨大な『イエティ(雪男)』の出現によって破られるまで、行軍は続いた。白い毛皮の最初の巨像が、ゴキブリを踏み潰そうと直接飛びかかった。エリアスは反射的に介入した。シェルが4発しか入っていない『ショットガン』を抜き、壊滅的な最初の1発で猛獣を空中で吹き飛ばして残弾を3発にする。だがその行動のせいで隙が生まれ、2体目のイエティが放った強烈な一撃をまともに食らってしまい、体力のハートを1つ失って「7/8」へと減らした。
エリアスは素早く体勢を立て直し、ショットガンでもう1発シェルを消費して2体目のイエティをダウンさせ、12ゲージの残弾をわずか2発にした。続けてアサルトライフルを構え、1体目のイエティの胸のど真ん中に12発のフルオート射撃を叩き込んで完全に仕留め、ライフルの残弾を48発にした。
2体目の怪物が立ち上がろうとしている間に木の松明を使って火をつけ、イエティの猛烈な反撃を横へと俊敏にかわすと、頭部にベレッタを3発撃ち込んでとどめを刺した。拳銃の残弾は18発だと頭の中で計算する。
戦闘から息を整える中、不気味な推論が脳裏に形作られた――開発者たちは、あのゴキブリを「積極的に排除」しようと狙ってきている。そうしている間にも虫はイエティの豊富なドロップ品――アサルトライフルの弾薬「30発」を彼のもとへ運んできて、自動小銃の合計弾数を「78発」へと跳ね上げさせた。このバグったゴキブリがいれば本当にこのゲームをクリアできるかもしれないとエリアスは思った。自分ひとりでは死体からほとんど何も見つけられなかったのに、このクリーチャーは大量の物資を掘り出しているのだ。
上へと登り続け、2人はついに洞窟から脱出したが、目の前には建築学的な矛盾――『鉄道の駅』がそびえ立っていた。「雪山の頂上で鉄道の駅に出くわすなんて、一番予想外だぜ」エリアスは呆れ果てて言った。隣接するヘリポートへと入るため、端末はシステムの通行料として「命の15分間」を支払うよう要求してきた。タイマーが『01:02:14』へと減る中、エリアスは「クソ野郎どもめ」と悪態をついた。
ゲートを越えると、短いムービーが始まった。シネマティック映像は山から離陸したヘリコプターが眼下の森に向かって全速力で飛んでいく様子を映し出し、彼はヘリから飛び降りてパラシュートを開き、木々の間に柔らかく着地した。
ムービーが終わった瞬間、赤い通知が彼の血を凍りつかせた。
【マッチメイキング確定】
【参加プレイヤー4名:プレイヤー1、プレイヤー7、プレイヤー12、プレイヤー14】
【モード:フリー・フォー・オール(全員敵のバトルロイヤル)】
【3…… 2…… 1…… START!】
このマッチにはAIが生成した雑魚敵はおらず、4人のプレイヤーだけだった。エリアスが最初に気づいたのは、プレイヤーの番号が「4」から順番に続いていないことだった――それはつまり、前のサーバーですでに何人ものプレイヤーが死んでいるという動かぬ事実を意味していた。
さっきゴキブリが作ってくれたミニマップを確認すると、自分の近くに1人のプレイヤーがいるのが見えた。今度のマップは広大で、一本道ではなく、光がほとんど届かない無数の木々が視界を遮る森だった。エリアスは標的へと向かった。ミニマップによれば、敵はわずか20メートル先という至近距離にいる。
背後を取るために迂回を試みた。ステルス機動は成功し、背後約10メートルの距離まで近づいたところでタクティカル骨の弓を引き絞り、頭部へのたった1本の矢で脅威を排除した。
【『プレイヤー1』が『プレイヤー12』を排除しました。獲得時間:+45分】
死体から矢を回収し(合計3本を無傷で維持し)、エリアスは探索を続けたが、その目には涙が浮かんでいた。彼はもはや完全な殺人者だった。ゴキブリがプレイヤー12の豊富な戦利品を運んできてくれた――閃光弾が2個、防弾チョッキの耐久度を100%に戻すリペアキット、ベレッタの弾が13発(合計31発に増加)、そしてショットガンのシェルが6発(合計8発の心強いストック)だ。さらにシュールな仕草で、虫は彼の肩をポンポンと軽く叩いて励ました。あまりにも人間くさすぎるその触れ合いに、エリアスは悪寒を覚えた。
警戒を続けていると、新たなアナウンスが森の静寂を破った。
【『プレイヤー7』が『プレイヤー14』を排除しました。獲得時間:+32分】
これで残りは2人になった。突然、消音された銃弾が彼に命中した。防弾チョッキの耐久度が再び80%へと低下する中、青年は必死に走り出し、木々の間に身を隠した。
(なぜハッキングされたミニマップに奴の位置が表示されないんだ?)その疑問は、今度は左腕に命中した2発目の銃弾によって中断された。
即座の反撃態勢を整えていたエリアスは左へとダッシュし、後続の銃弾を防ぐために『パルス・ディフェンス』の最後の1チャージを使い切って(残量ゼロになり)、同時に手に入れたばかりの2個の閃光弾のうち1個を襲撃者に向かって投げつけ、目くらまし爆弾の残りを1個にした。
『プレイヤー7』は頭からつま先まで超重装甲で固めた文字通りの『ジャガーノート(重装兵)』だった。エリアスは生き延びるために物資を惜しまなかった――3個ある破片手榴弾のうち1個のピンを抜き、敵の両脚のど真ん中へと正確に投げ込んだ。インベントリ内の残りは2個になる。
プレイヤー7は衝撃波で宙に吹き飛び、木に激突した。爆発によって重装甲は砕け散っただけだったが、相手が立ち上がるより先にエリアスはアサルトライフルを構え、フルオート射撃で「20発」もの銃弾を叩き込んで装甲プレートを完全に粉砕し、彼を殺害した。ライフルのマガジン残弾が58発へと減る。
【『プレイヤー7』から獲得した時間:+2時間12分】
エリアスはライフルを構えたまま待ったが、ドロップ品は出なかった。
そんなことがあり得るのか? なぜミニマップに一度も表示されず、物理的な戦利品も何ひとつ落とさなかったのか? 彼の仮説が決定的な形をとった――システムに投入されたプレイヤーの中に、管理者アカウント(アドミン権限)でログインしている「開発者自身」が紛れ込んでいるという確信がますます深まったのだ。
エリアスはインベントリのインターフェースを呼び出し、ゴキブリがデコードした10枚のマップファイルを開いた。雪の森の座標を探す。存在しなかった。この森はゲームの公式マップには載っていなかった。この『バトルロイヤル(全員敵)』は、本来のルートにはない急造マップだったのだ。
怒りを消化する暇すらなく、木々の幾何学構造が激しく明滅し始めた。森のテクスチャが破損していく。暴力的で瞬時のローディングが彼の呼吸を奪った。
視界がクリアになった時、偽物の雪の森の無菌で温度のない気候は、硫黄と溶けた岩の悪臭を放つ本物の圧倒的な熱波によって吹き飛ばされた。開発者たちは山の上の天候設定は忘れていたかもしれないが、ここの環境物理演算は最大出力で稼働していた。彼はゆっくりと流れるデジタルの溶岩の深淵を見下ろす断崖の岩棚の上に立っていた。『地獄の入り口』だ。
HUDが再起動し、視界全体を埋め尽くす通知を表示した。
【マッチメイキング確定:協力プレイ(Co-op)マッチ】
【チーム:プレイヤー1 & プレイヤー19】
【目標:ボスを排除する準備を整えよ】
【フレンドリーファイア(同士討ち):無効】
【マイク(ボイスチャット):無効】
エリアスは苦い笑みを浮かべてシステムの文字列を読んだ。(同士討ち無効……つまり俺からあいつを傷つけることはできない。そしてマイクも無効か)システムは悪魔的だった――2人の生存者にボスとの協力を強制しておきながら、意思疎通や連携をとるための手段をすべて奪い取ったのだ。
だがハッキングされたミニマップの上に、鮮やかな緑色の点が表示された。『プレイヤー19』だ。約40メートル離れた場所にいる。(あいつは本物のプレイヤーかもしれないな)一縷の希望にすがりながらエリアスは考えた。
地形マップを確認すると、ボスのアリーナへと続く4本の異なる道があることに気づいた。パッと見た限りでは、どの道にも罠は隠されていないように見える。
ルートを検討していると、ゴキブリのキチン質の脚がカサカサと鳴る音が聞こえた。影の中でアイテムを回収して回っていた虫が彼に歩み寄り、前脚の1本を差し出した。青い光を放つ金属製のアイテムを渡してくる。
新品のブレスレットだった。
【獲得:パルス・ディフェンス(5チャージ)】
不可欠な防御ツールを取り戻せたことに歓喜し、エリアスは目を見開いた。ペットの方へと視線を上げる。
ゴキブリは彼を見つめていた。そして、彼に向かって「微笑んで」いた。
キチン質の顎が、恐ろしいほど人間くさい表情へと湾曲していた。エリアスは生唾を飲み込みながらブレスレットを装着した。『パルス・ディフェンス』には感謝していたが、コードの汚染を物語るその悪夢のような笑顔には到底感謝できそうになかった。
その時、眼下の洞窟から銃声の反響が轟いた。プレイヤー19はすでにボスへと向かっており、道中の敵と交戦していた。アサルトライフルの銃声がはっきりと聞こえる。
「1秒たりとも無駄にはできない。動かないと」エリアスは決断し、一番近くて真っ直ぐな道の入り口へとダッシュした。
だがゴキブリが彼の進路を塞ぎ、一番遠い回り道のルートへついてくるよう頑固に身振りで示した。
エリアスは抗議しようとしたが、ミニマップに目をやった――彼が選んだばかりの短い回廊に、影の中で密集する20個近い赤い点がたった今点灯したところだった。処刑部隊の待ち伏せだ。
一方、ゴキブリが示した長い道には赤いインジケーターが1つしかなかったが、そいつは特大サイズだった。
「わかった、お前の道で行こう」エリアスは進路を変え、引き返して燃え盛る長い回廊を虫の後について走った。
角を曲がると、ルート上の唯一の障害物と正面から鉢合わせた――回転式銃身を備えた重厚な『ミニガン(ガトリング砲)』を両手に握りしめた、超巨大なデジタルの『ミノタウロス』だ。
姿を見た瞬間、ミニガンのモーターが唸りを上げ始めた。エリアスは発砲する時間を与えなかった。ベルトに手を伸ばし、インベントリに残っていた最後の『閃光弾』を抜いて(残量ゼロになり)地面へと投げつけた。
カッ!!
機能した。マグネシウムの閃光が猛獣の目を完全にくらませた。気絶している隙を突き、エリアスは背後に回り込んでショットガンを抜くと、うなじへのゼロ距離からの激しい3連射で怪物を排除し、崩れ落ちさせてショットガンの残弾を5発にした。
戦利品を探してミノタウロスの死体をじっと見つめたが、エリアスには何も見えなかった。彼が虚空を睨んでいる間に、ゴキブリが消えゆくピクセルの隙間に潜り込み、ソースコードから直接「隠しドロップ品」を回収した。
彼のもとへ戻ってくると、さらに3個の『破片手榴弾』を手渡した。残っていた2個と合わせて、エリアスの爆発物の合計は再び5個へと増えた。
「ありがとよ、相棒」疲れた笑みを浮かべ、エリアスは囁いた。「もしこの忌々しいゲームに勝てたら、絶対にゴキブリ恐怖症を克服して、お前のその笑顔そっくりのゴキブリ型キーホルダーをグッズ化してやるって誓うよ……」
タイタン級の轟音がステージ全体を揺るがした。
【『プレイヤー19』がボスとの戦闘を開始しました】
「急がないと!」エリアスは叫び、回廊の突き当たりへと走った。「ゴキブリ、ついてこい! ただしボスの射線からは離れていろよ!」
ためらうことなくエリアスは下へと飛び降り、アリーナの灼熱の金属格子の上に重く着地した。
プレイヤー19はすでに必死の戦いを繰り広げていた。そして視線を上げた瞬間、周囲が溶岩に囲まれているにもかかわらず、エリアスは凍りつくような悪寒を感じた。
目の前にいたのは、少し前に戦ったあの『骨の悪魔』だった。使い回された悪夢が再び戻ってきたのだ。
--- インベントリ確認(骨の悪魔とのCo-opボス戦開始時点) ---
・時間通貨:03:30:46
・体力ステータス:ハート 7/8
【武器・弾薬】
・フルオート・アサルトライフル:58発
・サプレッサー付きベレッタ:31発
・ショットガン(12ゲージ):5発
【ガジェット/ツール】
・タクティカル骨の弓:1張
・通常の矢:3本
・軍用タクティカルナイフ:1本
・大型パイプレンチ:1本
・木の松明:1本
・電池式懐中電灯:1個
【キーアイテム/コレクタブル】
・マップ:デコード済み10枚
・スマイルカード:1枚
【防具・防護】
・高性能宇宙服(使用可能)
・ケブラー製防弾チョッキ:耐久度80%
・パルス・ディフェンス:残り5チャージ
【消費アイテム】
・破片手榴弾:5個
・閃光弾:0個
【ペット】
・ゴキブリ(アクティブ ― ステータス:グリッチ/笑顔)




