第10章:悪魔の構文エラー ~直角に曲がる理不尽レーザーと、開発者へのブチギレ演説~
その移行には想像の余地すらなかった。貨物船の傾いた回廊は幾何学的な前触れもなく溶け去り、『プロジェクト0』内の物語的な一貫性の見せかけすら完全に放棄した超巨大な円形アリーナへと瞬時に置き換わった。エリアスが吸い込んだ空気はもはや軍用の煙や海で腐った木材の匂いではなく、硫黄と焼けた銅で飽和した濃密で灼熱の蒸気であり、骨折した肋骨ですでに痛めつけられていた肺を焼いた。
部屋の外周全体を囲む分厚い錬鉄製の格子の向こう側では、濃密で不自然なデジタルの溶岩が流れていた。赤熱する流体のシェーダー(描画プログラム)には明らかな欠陥があり、肉眼でもわかるほどテクスチャが幾何学的なループを繰り返していて、ヘアライン加工された鋼鉄の壁へのオレンジ色の反射が不快な色彩の点滅を引き起こし、エリアスに目を細めさせた。彼自身の知覚のフレームレート(FPS)すらわずかに低下し、この即席の地獄のポリゴン負荷の重さの下でカクついているように感じられた。エリアスは即座に乏しい手持ちの物資を計算した――インターフェースが消える前に素早く一瞥し、データを頭に叩き込む。ベレッタの残弾はわずか9発、ショットガンのシェルは6発だ。
直後、インターフェースが消えた。
シネマスコープサイズの分厚い2本の黒い帯が、ギロチンのように視界の上下に降りてきた。エリアスはサプレッサー付きのベレッタを持ち上げようとしたが、両腕は脇にしっかりと固定されたまま動かなかった。入力がロックされている。脳内のカメラが彼の制御から切り離され、アリーナの正確な中心へと向かって滑らかなプリレンダリング(事前描画)のカメラワークで移動していった。
暗い天井から、金属格子の床に物理的な揺れすら一切起こさない鈍い音と共に、ひとつの実体が落下してきた。
『骨の悪魔』だった。だがその美的描写は、サバイバルホラーというジャンルに対する侮辱そのものだった。身長2メートルを超えるその怪物は、黄ばんでギシギシと鳴る骨のフレームを持ち、風の物理演算が一切適用されていない引き裂かれた巨大な膜状の翼を背負っていた。胸郭の中央には、ハロゲンライトの無慈悲な光に晒されて腐った内臓の脈打つ塊が浮遊しており、シンコペーション(切分法)のリズムで鼓動する黒い心臓と、皮膚のない頭蓋骨の内部で輝く緑がかった脳みそが見えていた。
ステージボスに期待されるような原始的な獰猛さで咆哮したり突進したりする代わりに、怪物はピタリと動きを止めた。そして、「踊り」始めたのだ。
優美さもリズム感も一切ない、奇妙でグロテスクな振り付けだった。スケルトンはぎこちない動きでフレームからフレームへとカクカクと跳ね回り、溶岩に濡れた両足でステップを踏み、骨の骨盤を揺らし、部族のバレエのパロディのように細い両腕を振り回した。両膝の関節は明らかなクリッピング(めり込み)エラーを起こしており、床のテクスチャの内部へと何度も突き抜けていた。
(このゲーム、サバイバルホラーの要素がマジでこれっぽっちもねえな……)そのポリゴンの寸劇を強制的に見せられながら、エリアスは深い知的な吐き気を覚えて考えた。ベテランの冷笑的な視点は、このシーンをまたしてもプログラミングの失敗――どこかのコメディゲームか未完成の学生プロジェクトから雑に使い回されたアセットだと片付けようとした。
(いや、これはわざとだ)こめかみを伝う汗が煤と混じり合う中、彼は即座に考えを改めた。(俺の警戒を解こうとしているんだ。システムは俺の苛立ちを追跡している。この戦いを冗談だと思わせ、俺をリラックスさせておいてから、一瞬の油断を突いて骨の髄まで引き裂くつもりだ。集中を切らすな)
空気圧のシューという音と共に黒い帯が消えた。アバターの操作権が瞬時に戻り、ケブラー製防弾チョッキの重みと右脇腹の締め付けるような激痛がエリアスへと返ってきた。
骨の悪魔は馬鹿げたダンスを中断し、発光する空っぽの眼窩をエリアスの目へと真っ直ぐに向けた。エリアスは即座に横へと滑り、アリーナをテストするために静かな一歩を踏み出した。敵の移動AIの決定的な特徴にすぐ気づく――怪物は円形プラットフォームの中央に「固定」されていたのだ。骨の両脚は揺れていたが、コード内の見えない制約によってその強固な軸から移動することができないようになっている。反対に、エリアスには外周に沿って完全に自由に動ける権利があった。周囲を歩き回り、横方向のカイティング(引き撃ち)を利用し、距離を見極めることができる。
悪魔がゆっくりと右腕を持ち上げた。骨の指が握られ、人差し指と親指だけが伸ばされたまま残る。紛れもないポーズ――指で作った「ピストルの形」だ。
乾いた血がこびりついた怪物の顎から、低音質のビットクラッシュ効果で歪められた合成音声が響いた。
『Boom』
人差し指の先端から飛び出したのは銃弾ではなく、純粋な光の光線――耳をつんざく風切り音と共に空気を貫く真紅のエネルギーの矢だった。
何年もの競技シューティングで研ぎ澄まされた反射神経に導かれ、エリアスは最後の1マイクロ秒のタイミングで完璧な横移動を行った。光線はわずか数ミリの差で彼を外れ、タクティカルベストの肩の横を掠めて通り過ぎる。だが、その攻撃の物理法則は直線的な弾道学のルールに従っていなかった。エリアスが回避を完了した瞬間、エネルギーの矢は空中で唐突にピタリと停止し、見えない壁にぶつかったかのように幾何学空間の中で凍りついたのだ。
直後、アルゴリズムが軌道を再計算した。慣性を一切無視した「90度の直角ターン」で光線が左へと鋭く折れ曲がり、交戦ルールの違反に対して彼の頭脳が抗議するよりも早く、エリアスの胸のど真ん中へと突き刺さった。
衝撃は壊滅的だった。爆発の風圧はなく、呼吸を完全に奪う酸のように鋭い電撃の激痛が走った。HUDの左上隅で、2つの真紅のハートが灰色のピクセルの雨となって砕け散る。
【体力:3/6】
エリアスは片膝をつき、熱い金属格子の床の上に苦い唾液を吐き出した。システムが大脳皮質へと直接シミュレートするリアルな激痛に、ベレッタのグリップを握る指が震える。
「クソッタレなインチキ開発者どもめ」溶岩の熱気が顔の肌を焼く中、歯を食いしばって唸った。怒りが恐怖を凌駕し、あからさまに「イカサマ」をするコードへの苛立ちが彼の背筋を伸ばさせた。(次の一撃はどう対処すべきだ? 避けるか? シールドを使うか? それとも完全に立ち止まったままでいるべきか? あと2発食らえば俺は死ぬ。こんなクソ溶岩の部屋で俺の挑戦が終わってたまるか)
反撃の準備を整える。物資をケチっている場合ではないことを彼は理解していた。ベレッタをホルスターに戻し、タクティカルスリングからぶら下がっているショットガンを掴む。外周から中央までの距離は12ゲージの散弾にとっては最適とは言えず、拡散によって威力は落ちるはずだったが、今の時点で手元にある最強の武器はショットガンだった。チューブマガジンには6発のシェルが装填されている。
武器を構え、怪物の胸郭に金属の照準を合わせると、素早く2連射した。
ドォン! ドォン!
12ゲージの轟音が鋼鉄の壁に反響し、溶岩の唸り声をかき消した。散弾がスケルトンを捉え、露出した柔らかい内臓組織を引き裂き、膜状の翼から黄ばんだ骨の破片を吹き飛ばした。悪魔は目に見えて負傷し、甲高い金切り声を上げたが、中心軸からは1ミリたりとも動かなかった。ノックバック効果もなければ、重いスタン(ひるみ)のアニメーションもない。完璧なバランスを保っていた。
【ショットガン残弾:4/6】
怪物が再び片手を上げ、またしても骨の指だけでピストルの形を作った。今回、怪物の眼窩は冷たい青白い光で輝いていた。
大きく開いた顎から、さっきとは違う音が響く。
『Pfew』
エリアスは弾道の仮説に命を賭けることを避け、シールドを使うことに決めた。左手首を上げ、商人から購入したばかりの『パルス・ディフェンス』を起動する。青いエネルギー弾が障壁に激突するわずか1ミリ秒前に、運動エネルギーの半透明なドームが目の前に展開された。
着弾は鈍い唸り声を生んだ。シールドが攻撃のエネルギーを吸収し、光の周波数を安定させて消滅させる。ホログラムのスクリーンの向こう側を見つめたまま、エリアスはたった今消えたばかりの弾丸の挙動を分析し、深い戦術的思考に入った。
(今の攻撃は避けられたな)青い光線の直線的な軌道を計算しながら考えた。さっきの攻撃とは違う。『Pfew』という音声コマンドに紐付けられた光線には軌道修正のコードが組み込まれておらず、回避された後に停止したり当たり判定を再サーチしたりしなかった。『Boom』のように最後の瞬間で直角に曲がったりしない、ただの標準的な直線弾だ。単純なサイドステップでかわしてエネルギーを温存できたはずだった。
さらに、エリアスはもうひとつ懸念すべき技術的なディテールに気づいた。このシールド『パルス・ディフェンス』は、前のステージで失った最初のデバイス『フェーズ運動エネルギー・ディフレクター』とは根本的に仕様が異なっていたのだ。前のシールドは攻撃を「反射」し、完璧なカウンターの法則に従ってダメージを撃ち手に跳ね返した。だが今回のものは単に攻撃を「ブロック」するだけで、ダメージを吸収する静的なスポンジとしてしか機能しない。ボスへの反射ダメージはゼロだ。
【パルス・ディフェンス残量:4/5】
(よし、精密射撃で行こう)エリアスは自分に言い聞かせた。背中から『骨の弓』を抜き、『Zウイルス付きの矢』の1本をつがえる。泥と乾いた血にまみれた指で、インターフェースの物理法則が許す限界まで弦を引き絞った。照準を絞り込み、悪魔の胸骨の内部で剥き出しのまま脈打っている内臓へと焦点を合わせる。
弦を放った。シュパッ。
最初の1射はわずかに高く飛び、石灰化した骨格のど真ん中に命中した。乾いた、苛立たしい音が響く――矢尻の骨が肋骨の上を滑り、文字通り何のダメージも与えられなかった。ボスの不可視の体力ゲージには何の変化もない。
エリアスは気落ちしなかった。即座に2本目の矢をつがえ、照準を修正して、黒い心臓が不気味なリズムを刻んでいる標的のど真ん中を真っ直ぐに狙った。
シュパッ。
今度こそ矢は内臓のど真ん中を捉え、感染した肉塊の奥深くへと沈み込んだ。
骨の悪魔が人間離れした絶叫を上げて口を大きく開き、『Zウイルス付きの矢』が極めて有効な弱点であるかのように引き裂くような悲鳴を響かせた。怪物は骨の両手で胸郭を押さえながらわずかに前のめりに折れ曲がり、すぐさま両手にエネルギーをチャージして次の準備を始めた。
彼の有効打に対するアルゴリズムの反応は瞬時だった。AIは通常のクールダウン(再使用待機時間)を無視し、戦闘フェーズを加速させることに決めたのだ。
スケルトンが両腕を同時に持ち上げた。その顎から、2つの音声コマンドが重なり合い、不協和音の和音となって響き渡った。
『Boom-Pfew!(ドカン・ピュウ!)』
2つの攻撃が同時に飛来し、アリーナの過熱した空気の中で光の軌跡を交差させた。真紅の光線と青いラインが2倍の速度で迫ってくる。エリアスは物理的な回避を試みなかった――スペースが狭すぎる。左手首のブレスレットのボタンを再び押し、運動エネルギーシールドを起動した。ホログラムのドームが間一髪で実体化し、エリアスは両方のエネルギー弾を完全に無効化して防御に成功した。
【パルス・ディフェンス残量:3/5】
光が消えた瞬間、エリアスはその隙(硬直時間)を突いた。素早い動きでベレッタを抜き、格子の床に両足を踏ん張ると、サプレッサーのわずかな反動を相殺するよう引き金の圧力を調整しながら「7連射」を叩き込んだ。手持ちの弾は合計9発。引き金を引く規則正しい圧力が、ボスを屈服させるリズムを刻む。
パスッ、パスッ、パスッ、パスッ、パスッ、パスッ、パスッ。
正確な7発の銃弾が悪魔の胸郭内部の柔らかいコアのど真ん中を撃ち抜き、露出した肺の組織を引き裂いた。黒い血が中央の金属プラットフォームの上に川のように流れ落ちる。
【ベレッタ残弾:2/9】
それでも悪魔は動かず、即座に次の攻撃の準備を始めた。骨の指を再び揃え、骨のピストルのように青年へと突きつける。
エリアスはアニメーションが始まるのを見たが、スピーカーからは何の音も出なかった。スケルトンは全く同じ攻撃を「音声の予告なし(無音)」で放ってきたのだ。ゲームオーバーのリスクを冒さないため、エリアスはもう一度運動エネルギーシールドを起動し、防御障壁を展開した。
だが、『プロジェクト0』のAIは防御コマンドの連続使用を記録していた。それは彼がシールドを乱用していることに対してAIが特別にプログラムしたカウンター攻撃――同じアビリティの連続使用を処罰するための自動メカニクスだった。悪魔が放った弾丸は通常のエネルギー光線のようには振る舞わず、不安定な球体となって運動エネルギーシールドに激突した瞬間に物理挙動を変えた。球体はそのまま彼のすぐ目の前の地面へとポトリと落下し、ホログラム障壁の防護範囲の外側にある金属床の上を転がったのだ。
【パルス・ディフェンス残量:2/5】
エリアスは警戒を解き、脇からショットガンを抜こうと腕を伸ばした。それが致命的なミスとなった。地面に落ちていた球体が、鈍い轟音と共に大爆発を起こしたのだ。
衝撃波が真下から彼をまともに飲み込み、地面から吹き飛ばしてアリーナの鋼鉄の壁へと暴力的に叩きつけた。ケブラー製防弾チョッキが破片の衝撃を吸収したものの、懲罰的な爆発は彼から純粋な苦悶の絶叫を絞り出した。脇腹のひび割れていた肋骨が完全に折れる感触がした。視界が暗い赤色に染まる。
HUDの隅で、さらに2つのハートが消滅した。
【体力:1/6】
【ステータス:瀕死】
エリアスは本当に限界だった。脳死の一歩手前、残りライフたった1の状態で灼熱の床の上に横たわっていた。だが、怒りとアドレナリンが彼の論理回路をクリアにした。両肘をついて身を起こし、左手でショットガンを掴むと、薬室に残された最後の2発を怪物の顔面へとゼロ距離から撃ち込んだ。
ドォン! ドォン!
12ゲージのマズルフラッシュが悪魔の頭蓋骨の上部を粉砕し、灼熱の部屋の空気へと緑がかった脳みそを完全に露出させた。怪物は重傷を負い、それと同時にピタリと動きを止め、すべての攻撃スクリプトを中断した。
【ショットガン残弾:0/6】
突然、カットシーンが始まった。
再び視界にシネマスコープの黒い帯が降りてくる。頭の半分を失った骨の悪魔が、金属的で歪んだ音声トラックで笑い始め、金属の部屋の中央で狂ったようにダンスを再開した。骨の両足でステップを踏み、馬鹿げたループで両腕を振り回す。奇妙なダンスの最後に、悪魔は画面の方へと向き直り、エリアスに向かって片手を振って挨拶すると、砕けた顎でニヤリと微笑んだ。
シーンがフェードアウトしていく中、ディスプレイの上に鮮やかな緑色の文字が浮かび上がり始めた。【LEVEL 3 COMPLETE(レベル3クリア)】。
魂のストップウォッチに残されたライフがたった1つという、死の一歩手前まで追い詰められていたことをエリアスは実感した。それでも、コードが環境を消去する前に床の上を這い進み、デジタル分解されつつある悪魔の死体へと飛びついた。ローディングが始まる前にピクセルの間を指で探り、戦利品を回収する。
【Zウイルス付きの矢×2 を獲得】
【赤いアンプル×1 を獲得】
肉体的な苦痛があまりにも凄まじく全身を支配していたため、一瞬だけエリアスは論理的に考えるのをやめた。消費アイテムのステータスも確認しなければ、世界観の詳細も開かない。ただ肺の中のこの業火を消す必要があった。こうして苦しみ続けるくらいなら安らぎか死をと願い、歯で栓を抜いてアンプルを一気に飲み干した。
粘り気のある液体が電撃のように喉を滑り落ちた。『赤いアンプル』は即座にハート2個分の体力を回復させ、引き裂かれた組織を再生して脇腹の内出血を止めた。
【体力:3/6】
気分が良くなり始め、呼吸が整って心拍数が安定した。溶けていく床の上に横たわりながら、なぜ戦闘があんな唐突な形で中断されたのか疑問に思った。膨大なゲームの知識を駆使し、エンジンの論理をマッピングしようと試みる。
(おそらく、ボスを殺す必要がないタイプのゲームなんだろう)唇から血を拭いながら考えた。(ボスの体力を一定のパーセンテージまで削れば撤退し、ステージクリアのムービーが流れる仕様だ。あるいは、この部屋自体が隠しサバイバルイベントとしてプログラムされていて、スクリプトがクリア判定を出すまで奴の攻撃の下で一定時間耐え抜くだけでよかったのかもしれない)
システムの声が、抑揚のない冷たい響きで時間通りに届いた。
『レベル3クリア。ボーナスタイム追加:+180分』
【大脳皮質崩壊まで:04:19:12】
白い光が彼を完全に包み込んだ。
◇ ◆ ◇
リンボ(辺獄)の静寂が再び彼を出迎えた。エリアスが目を開けると、磨かれた長いオーク材のテーブルを前にして、パッド入りの革の椅子に座っていた。室内にはタバコと古い紙の香りが漂っており、死の罠と死の罠の間にある無菌のオアシスだった。
テーブルの反対側では、商人が両手を組み、いつもの人工的な笑みを浮かべて彼を観察していた。乾いた金属音を立てて黄金の懐中時計を木の天板の上に置き、休憩セッションの厳格なカウントダウンを即座に起動させる。
「ようこそ、またしても生き延びたね、旅人よ」黄金の文字盤の中で輝く針がすでに猛烈な速度で逆回転し始める中、老NPCが温かい声で切り出した。「本日は君のために素晴らしい品揃えを――」
「このゲームの裏にいる奴が誰だろうと、こう伝えておけ。俺がこれまでの人生でプレイした中で『史上最低のクソゲー』だとな!」エリアスはホログラムのサンプルが揺れるほどの怪力でテーブルの木材を両拳で叩きつけ、商人の言葉を遮った。「このコードの出来損ないのどこにサバイバルホラーの要素があるってんだ! ビデオゲームの恥晒しだぞ! インベントリは無限で、何キロもの物資を拾っても重量の概念もスペース管理も一切なしでポケットに収まる。ルートは直線的すぎて、背景を変えただけのただの真っ直ぐな廊下じゃねえか! ストーリーも馬鹿げていて、エイリアンとゾンビと貨物船を何の脈絡もなく繋ぎ合わせただけのアセット・フリップ(素材使い回しゲー)だ!」
目の前で残り時間が削られ続ける中、エリアスはテーブルの上に血の塊を吐き捨て、老人のガラスのような目を睨みつけた。
「このゲームのすべてがクソなんだよ! それを俺のせいにするんじゃねえ! お前らの開発資金が打ち切られたのは、俺の生配信のせいじゃない! 何百万人もの視聴者が見ている生放送の前で、あんな馬鹿げたコードを晒して自分たちで勝手に恥をかいただけだろうが! お前らが失敗したのは、単にビデオゲーム作りに向いていなかったからだ、現実を受け入れろ! プログラミングもできなければ、シナリオも書けない。転職しろ、クソ野郎ども!」
商人は笑みを崩さず、青年の罵倒を完全に無視した。彼の会話ツリー(ダイアログ・ツリー)にとって、それらの言葉は空の文字列に過ぎなかった。陳列された商品の上に指を滑らせ、命の分数で書かれた値札を起動させる。
・ベレッタの銃弾(×10発):命の10分間
・ショットガンのシェル(×2発):命の15分間
・ハートの欠片(1HP回復):命の30分間
エリアスは額の汗を拭い、冷静さを取り戻した。『プロジェクト0』の終盤戦に向けて物資を買う必要があることはわかっていた。視覚タイマーに表示された「4時間19分」を見る。
「ゲージを最大まで満たすために、ハートを3個もらう」エリアスは安定した声で言った。「それからベレッタの弾を30発と、ショットガンの弾を4発くれ」
商人が手を伸ばし、商品を滑らせた。3つのハートがエリアスの胸へと飛び込み、残っていた痛みの痕跡をすべて癒やす。弾薬がスーツのマガジンポーチに実体化した。システムが支払いを計算する――回復に90分、9mm弾に30分、12ゲージ弾に30分。合計から「150分間」が差し引かれた。
【大脳皮質崩壊まで:01:49:12】
エリアスはテーブルの上に他のデバイスやシールド類が一切売られていないことに気づきながら、次のステージを映し出す3つの浮遊するホログラム球体へと視線を上げた。手元に残されているのは、あと2回分の『パルス・ディフェンス』と武器だけだ。回転する3つの世界を観察する。
・30分のステージ:『火星への旅』。黒い空の下、太陽嵐が吹き荒れる赤い砂漠。
・45分のステージ:『香港の地下研究所』。第1章と同じコンクリートの部屋群。明らかなグラフィック構造の使い回しだ。
・60分のステージ:『遊園地での一日』。ストロボライトの下に浮かぶ、錆びた観覧車とサーカスのテント。
テーブルの上に置かれた黄金の懐中時計の針は休むことなく逆回転を続けており、買い物と選択を完了するために最初に与えられた時間を刻一刻と消費していた。
戦略を練って考える時間はまだ少し残っていたが、エリアスはトロール(荒らし)アルゴリズムと会話してこれ以上貴重な秒数を無駄にするつもりはなかった。腕を伸ばし、時間台帳の上で最も安い最初の球体を直接指差した。
「『火星への旅』だ」冷たい笑みを浮かべてエリアスは言った。「その粗いテクスチャの惑星へ送ってくれ。今度は何をリサイクルしたのか見せてもらおうじゃないか」
『聖域』の部屋が16進数の垂直なコードの線へと分解され始める中、商人は純粋なデジタルの歓喜のしかめ面へと口を大きく広げた。
「素晴らしい買い物だよ、エリアス」白いピクセルが椅子から彼の姿を消去していく中、老人が囁いた。「君の時間が更新された。宇宙での幸運を祈るよ」
タイマーから入場料の30分間が差し引かれた。
【大脳皮質崩壊まで:01:19:12】
ローディングの暗闇が彼の意識を飲み込んだ。
--- インベントリ確認(レベル4突入時点) ---
【銃火器】
・サプレッサー付き9mmベレッタ:合計32発(マガジン内残り2発+購入した30発)
・ショットガン(12ゲージ):合計6発(戦術サブメニュー内の未使用2発+購入した4発 ※銃本体は現在未装填)
【遠距離/近接武器/ツール】
・タクティカル骨の弓:背中に装備中
・Zウイルス付きの矢(特殊矢):3本(残り1本+悪魔の死体から回収した2本)
・軍用タクティカルナイフ:1本(無傷)
・大型パイプレンチ:1本(頭部への攻撃でスタン/スタッガー効果発動)
・耐水性の木の松明:1本(脳内トリガーで手動点火/消火可能)
・電池式懐中電灯:1個(ケブラーの左肩ストラップにガムテープで固定中)
【防具/衣装】
・ケブラー製防弾チョッキ:装備中(爆発により耐久度が20%低下)
・高性能宇宙服:【衣装】サブメニュー内に格納(コマンドで即座に装備可能)
・パルス・ディフェンス:残り2チャージ(左手首のブレスレット、静的ダメージ軽減)
【キーアイテム/収集品】
・煽りメモ(トロール・ノート):デジタル化された紙10枚(プログラマーの侮辱イラスト入り)
【体力・ステータス・通貨】
・体力:ハート6/6(ショップでの購入により完全回復)
・精神状態:冷笑的な明晰さ、研ぎ澄まされた怒り、ゲームのルールに対する信頼ゼロ
・所持時間通貨(現実の残り寿命):01:19:12(脳死まで残り1時間19分12秒)
・選択した目的地:【レベル4:火星への旅】




