初料理
「おおーいい匂い」
屋台が並んでいるそこは、鼻を刺激する匂いが充満しているようだった。
串焼き、スープ、パン、果汁などいろんな屋台があるみたいだ。一通り食べることにしよう。
串焼きは一角ウサギの肉のようだ。焼きたては美味しいね。味つけはやっぱり塩とハーブみたいだけど。
果汁はオレンジみたいな味がした。甘くて美味しい。
食べ歩いていると、あるものを見つけた。
「これなんですか?」
「これかい? これはお米を使ったリゾットだよ。食べるかい?」
お米!
なんとこの世界にはお米があるらしい。もしかしたらしょう油とかも売っているのかもしれない。あとで食材が売っているところに行こう。
「食べます」
リゾットを受け取り一口。確かに米だ。どうやらチーズも入っているみたいで意外と美味しい。チーズもどこかに売ってるってことかな。
だいぶお腹が膨れたので、食材が売っている場所を屋台の人に聞いてそっちに向かう。
別にスーパーとかがあるわけではないので、野菜や果物が屋台に陳列されているだけだね。
屋台がずらりと並んでいる場所に到着した。買い物に来ているらしい方々が結構いらっしゃる。
そんな中私は屋台の商品を見ながら歩き回る。食材庫があるからわざわざ買う必要はない。この街にどんな食べ物があるかの確認をするだけだ。要は冷やかしである。
野菜類は前の世界とほとんど同じみたい。乳製品も一応あるけど、ちょっと値段が高いかな。卵は目に見えて高いな。
肉はそれなりにあるね。一角ウサギとウルフの肉。ちょっと高いけどオークの肉もある。牛とか豚とか見ないけどいないのかな。
魚はないなあ。いや、あるにはあるけど冷凍されてて肉より高価だ。この辺では魚は取れないのかも。
小麦粉は…小麦粉としか書かれてないな。強力粉とか薄力粉とか区別されてないのか。小麦の種類は一種類しかないのかもしれないね。
あ、お米あった。玄米みたいだね。探せば白米もありそうだけど。ちなみに食材庫から出る米は白米。
あとは調味料か。塩とか砂糖とか普通にあるね。しょう油は見つからないなー。
パンは丸いパンが多いけど、それ以外にもあるにはあるね。
見た感じ結構なんでもある気がするけど。なんで食文化が進んでないのかな。お偉い貴族様の食事とかだと進んでたりするのかな。
食材売り場を後にした私は、宿に帰ってきた。早速買った調理器具で料理をしようと思ったのだ。
厨房は無理でも外の空いてるスペースなんかを借りられないか聞いてみよう。
夕食前で暇そうにしているネリンさんに声をかける。
「ネリンさーん」
「ナナちゃんお帰りなさい」
「ただいま。お願いがあるんだけど」
「なあに?」
「料理をしたいんだけど、火を使っていい場所ってどこかにないかな」
「ナナちゃん料理するの? ちょっと待っててね」
厨房の方に消えてくネリンさん。しばらくすると戻ってきた。
「厨房はこれから使うから無理だけど、裏庭なら使っていいって」
「ありがとう。使わせてもらうね」
早速裏庭に向かう。
ネリンさんもついてきたそうにしていたけど、これからが忙しい時間らしいので見送られた。まあ、もうすぐ夕食だもんね。今は暇そうだったけど。
私も暗くなる前にやってしまおう。
何を作ろうか考えながら、今日買った調理器具を水で洗う。
水魔法は使えないけど、水自体は出せるから助かる。
早くて簡単で美味しいもの。私そんなにレパートリー多いわけじゃないのよね。レシピ本でもあればいいのに。
ホットケーキとか作れないかな…ホットケーキミックス! やっぱり出ないよねー。
作れなくないけど、時間かかるからまた今度だな。
あ、フレンチトーストならできるか。よし、フレンチトースト作ろう。
ボウルに卵、牛乳、砂糖、そして食パン。
コンロに火を付ける。ちゃんと火力調節できるのがすごい。ガスコンロみたいだ。
フライパンでちゃちゃっと焼いて、蜂蜜かけて出来上がり。フレンチトーストは蜂蜜かけた方が美味しいと思うの。
は!!!
調理器具買ってお皿買うのを忘れてた。フォークもないじゃないの。どうするの私。
手で食べちゃう? いいよね別に。いただきましょう。
なんて考えていたら後ろからネリンさんが様子を見に来た。
「ナナちゃん、何作ったの? 美味しそうな甘い匂いがするよ」
「…ネリンさん。食べたいですか?」
「食べていいなら食べたいよ。これ蜂蜜だよね、あんまり食べたことないし」
「2人分のお皿とフォークを持ってきてくれればあげますよ」
「え!? いいの!?」
「あ、でもこのことは内緒ですよ。騒がれると困るので」
「わかった! すぐ持ってくる!」
そう言って大急ぎで宿の中に戻っていった。
ネリンさんのおかげで、手で食べずにすみそうだ。それまでにこのフレンチトーストが焦げないように気を付けねば。
まだボウルの中に液は残っているから、もう一人分くらい作れるだろう。足りなきゃまた作ればいい。
ネリンさんがすぐに戻ってきた。ちゃんと2人分のお皿を持ってきたみたい。
受け取ったお皿にフレンチトーストをのせ、ネリンさんに渡す。
「先にいいの?」
「味見してないけど、それでもいいなら」
「いただきます」
どうやら我慢できなかったらしく、かぶりついたネリンさん。
食べた瞬間、目を見開いてびっくりした様子。何も言わずにまたかぶりついたので、味に問題はないようだ。
私も自分の分を作って食べる。こっちに来てから甘いものって果物くらいしかなかったから、すごく美味しく感じる。いくらでも食べられそう。
「ナナちゃん、これなんなの! すごく美味しかった!」
「フレンチトーストです。内緒にしといてください」
使っている材料的に、高価な料理になるからね。知られると騒ぎになりそうだ。
「これ売ったら商売になるんじゃない?」
「難しいと思いますよ。主に材料的な意味で」
商売するならもう少し原価が安くなるものがいい。難しいかな。
「また食べたいな~」
「また今度ね」
夕食が食べられなくなるからね。
え? フレンチトースト食べたのにまだ食べるのかって?
当然食べるよ。お金払ってるんだから。
お皿を持って宿に戻っていったネリンさんを見送って、私は後片付けをした。
最後に鍋に水を入れて沸騰させ、そのままアイテムボックスにしまっておいた。
夕食は豆のスープ、温野菜サラダ、大量の薄切り肉とパンだ。この世界ではあまり生で野菜を食べる習慣はないらしい。マヨネーズとかが無いからかな。
夕食後、部屋で休みながら、これからのことを考える。
まず明日は食器類を買いに行こう。まさか買い忘れるとは思わなかった。
あともう少し街の探索をしたい。まだ行ってないところはたくさんある。
そう思って気づく。なんだかんだ、自分はこの世界を楽しんでいるみたいだ。
最初は不安だったけど、せっかくファンタジーの世界に来たんだから楽しまないとね。
お風呂に入ったらもう寝よう。疲れたし、ネットやゲームなどの娯楽品がないから夜更かしする理由もない。




