お買い物
「いやーすごいな。まさか本当に動くなんて」
なんだろう。声が聞こえる。
「今のところ不具合はないなあ。あったら面白くなりそうなんだけど」
聞き捨てならない言葉が聞こえた気がしたんだけど…
「まあまあ、変に手は出さないし、困ったことが起きたら助けてあげるよ。その方が面白そうだ」
この男の子は誰だろう。会ったことがある気がする。
「いい暇つぶしになりそうだ」
そう言って笑った少年の顔は何だか不気味で―――
「んん…」
朝か…何か夢をみた気がしたけど…忘れた。まあ、夢なんて覚えてないことの方が多いし、仕方ないね。
下の食堂でネリンさんに挨拶をして朝食をもらう。メニューは昨日と同じ硬めのパンと少し具が変わったスープとソーセージっぽいものだ。ソーセージあるんだなあ。
朝食後、いったん部屋に戻ってきた私は今後のことを考える。
やらないといけないことはたくさんあるんだけど、とりあえず確認したいことがあるので、それを試そうかな。
「まずは、ステータスオープン」
名前 ナナ
年齢 14
体力 100/100
魔力 1000000/1000000
装備 魔法のローブ
汚れない服
スキル 食材庫
アイテムボックス
驍ェ逾槭?蜉?隴キ?医◎縺ョ陦?縺ョ荳?貊エ縺セ縺ァ逾槭?迚ゥ縲よュサ
!!!???!?
「なにこれ…! 前はこんなのなかったのに!」
文字化けしてる……
ここ、前は確か『神の加護』だったはずなのに。何が起きたんだろう。怖いこと起きたりしないよね。
誰だよ、悪いものじゃないって言ったの。私か。
「やめよう。見なかったことにしよう」
こんなのどうしようもない。もうステータスは見ないことにしよう。
ローブについて何かわからないかと思ってステータス開いたのに、とんだダメージをくらってしまった。
あの魔物の突進を受けても何ともなかったのは、やっぱりローブのおかげなのかな。武器もないから確かめようがないけど。
「ふぅ…次はアイテムボックスの確認をしとこう」
中身は時間経過するのかな。創作でよく聞くじゃん? 時間経過しないアイテムボックス。
昨日入れた食パンには変化はないのよね。一日で結果のわかるもの…何かないかな。手あたり次第入れとこうかしら。
食材庫から果物やら調味料やら何が出るのか試しながら、それを全部アイテムボックスに入れていった。
「そろそろ出かけるか」
情報収集を兼ねて買い物に行こう。私はまだこの世界のことを知らなさすぎるからね。
下で仕事をしていたネリンさんに連泊する旨と、大まかなお店の場所などを聞いて外に出る。
昨日は日も暮れていたので人通りは少なかったけど、今はたくさんの人が歩いている。
やはりそれなりに大きな街らしく、人も建物も多い。
フードで顔を隠した私を見る人もいるが、それも一瞬のことでそんなに気にされていないようだ。
田舎者のように周りをキョロキョロしながら歩いていると、冒険者ギルドが見えてきた。
冒険者ギルドは大きな建物で、冒険者なのだろう人たちが少し出入りしていた。時間的に大半の冒険者は依頼に行ったんだろうな。
みんな剣とか杖とか持っていて、まさにファンタジーの世界って気がする。
やっぱり冒険者って憧れるなあ。私も魔法が使えたら冒険者になれたかな。私みたいな平々凡々な生活を送ってきた小心者には戦いなんて無理だろうけど。
薬草集めとかの依頼もあるだろうけど、そういう知識もない。
それに全く戦わない冒険者なんて、いざ緊急事態ってなったとき邪魔だろうな。
でも街に出入りするためのカードって冒険者ギルドか商業ギルドで登録しないと作れないのよね。
このカードっていうのは、大きくわけて2種類ある。この街で生まれた、もしくは近隣の村なんかで生まれた人がもらう住民カードが一つ。
もう一つがギルドカード。私が作れるのはこのギルドカードになる。さっき言ったように冒険者ギルドか商業ギルドで登録すれば作ることができる。
ギルド自体は他にもいくつかあるらしいが、冒険者ギルドや商業ギルドに比べれば小規模なものばかりで、身分証として使うには難しいんだとか。というより大体のギルドが冒険者ギルドか商業ギルドと兼任しているそうだ。だから作るならこのどちらかなのだけど。
「戦えない時点で選択肢は一つよね」
今度商業ギルドに行ってみよう。
しばらく歩いていると、お店が並んでいる通りに来たようだ。
私はここで料理をするための道具一式を購入したいと思っている。買ってもアイテムボックスがあるから大丈夫。お金もまだ残ってるし。無駄遣いはできないけど。
そう思いながらお目当ての店を探していると、鍋などが置かれているらしい鍛冶屋を見つけた。
らしいというのは、看板にそう書いてあるだけだからだ。
この世界にはショーウインドウというものはなく、看板に何を売っているか書かれている店がほとんどだ。それ以外はほぼ全て屋台という形になっている。
他に鍋が置いてありそうな店が見当たらないので、その鍛冶屋に入る。入る前に深呼吸をしたのは内緒だ。
「いらっしゃい」
笑顔で出迎えてくれたのは小柄な女の子だ。といっても、私より少し小さいくらいだけど。こんな小さい子も働かなくちゃいけないんだなあ…。
店の奥でカンカンと大きな音がする。ここで手作りしているんだろうか。
「料理をするための道具がほしいんですけど」
頑張って声を出す。私はこの世界で変わらなければいけないのだ。いつまでもコミュ障のままでは生きていけない。
「それなら、こっちに鍋やフライパン、包丁もあるよ」
案内されたところには調理器具がたくさん並んでいた。ここでほとんど揃いそうだ。
ただ、材質が鉄でできているからか、どれも重たかった。日本の製品が恋しい。
鍋やフライパンなど最低限必要なものだけ購入したが、それでもそれなりの数だったため、少しまけてくれた。
そして購入したものをアイテムボックスにしまったところ、ものすごいびっくりされた。
「き、消えた…」
どうやらアイテム袋はあってもアイテムボックスはないらしい。
「あー、特殊なアイテム袋ですよ。内緒にしといてください」
「そ、そうだよね。わかったよ」
説明が面倒なのでそういうことにしといた。
この後もこのやり取りがあったら面倒なので、誤魔化し用に普通の袋があったら売ってほしいと伝えたら、無料でくれた。
「お嬢ちゃん美人だからサービス。危ない目に合わないよう気を付けなね」
どうやら私より背が低いから私の顔が見えていたらしい。でも心配されるほど私はひ弱そうに見えるのだろうか。まあ、危ない目にあっても自己解決力は無いに等しいけど。
「ありがとうございます。気を付けます」
鍛冶屋を出てからもお店を見て回った。そしたら気になるお店があったので入ってみた。
「いらっしゃい。コンロをお探しで?」
そう、ここはコンロ専門店のようだ。そんなものがあることにびっくりだ。
しかしコンロがあるなら是非買いたい。
「これってどうやって火がつくんですか?」
「火の魔石を使って点火するんですよ」
魔石って便利だよね。魔力があれば。
「魔力がないと使えませんか?」
「魔力なしでも使える起動式コンロもありますよ。少し値段が上がりますが」
起動スイッチありの方が高くなり、コンロの数が多いとさらに高いらしい。
買えなくないがお金はまだ必要だ。無駄遣いはできない。
でもほしいので起動式のコンロで一番安いのを一つ買った。
「ありがとうございました」
店員に見送られながら店を出る。
そろそろお腹がすいてきたので、屋台が並んでいるという広場に向かった。




