異世界生活初日終了。
少し短いかも
その宿は食堂も兼ねているようで、イグニさん達はそこで食事をとっていくそうだ。
泊まらないのはミトロジアに家を借りて住んでいるからだという。宿に泊まり続けるより家を借りる方が安いのだとか。そろそろ購入する予定らしい。
冒険者って他の町に旅に出たりしないのかな。
宿に入ると食事時なのかそれなりに混んでいる。中に入ってきた私たちに従業員らしい女の子が近寄ってくる。
私より年上かな、10代半ばから後半くらいの女の子のようだ。
「いらっしゃいませー。お食事ですかお泊りですか」
「私は泊まりです」
「俺たちは食事だ」
「お食事の方は空いている席へどうぞ。泊りはお一人ですか?」
「私だけです」
「わかりました。朝と夜の食事付きで銀貨一枚になります。先に食事にしますか?」
「はい」
「では空いてるお席へどうぞ。食事が終わりましたら部屋へ案内しますね」
どこか空いてるかな? っと思ったらシンシアさんが手招きしてる。どうやら席を取っておいてくれたらしい。
注文とかあるのかと思ったら、出される食事は全て同じなんだとか。その代わり毎日別のメニューのようだ。
そんなに待たずに食事が出てきた。出てきたのは何かの肉のステーキ、野菜スープ、それとパンだった。
まあこんなもんかなーと思いながら食事をした。結果的に言えば食べられなくはなかった。
肉の味付けは塩とハーブみたいなものだけのシンプルなものだったが、柔らかく臭みもなかったので美味しかった。
ただスープは野菜の甘味と塩だけのようで物足りなかったので、少し硬かったパンをスープに浸しながら流し込んだ。
やっぱり現代食に食べなれている身としては物足りないかも。
ちなみに肉はウルフの肉だそうだ。
狼食ってんの? って思ってイグニさん達に詳しく聞いてみたところ、一般的に食べられている肉は一角ウサギとウルフの肉らしい。
この辺りでは一角ウサギ、ウルフがよくいるらしく、冒険者は一角ウサギが狩れて半人前。ウルフが狩れて一人前扱いになるんだとか。
だからこの街では肉自体はそれなりに出回っているらしい。更にいうと森で私を襲ってきた魔物はおそらくウルフだろうとのこと。
食事が終わり、イグニさん達は冒険者ギルドに寄ってから家に帰るそうだ。
「今日はいろいろとありがとうございました」
「どういたしまして」
「もう一人で森に行くなよ」
「裏通りや夜には出歩かないようにするんだぞ」
「また会えた時は気軽に声をかけてくださいね」
何故かすごく心配されている気がする。そんなに危なっかしい子に見えるのだろうか。
イグニさん達が出て行った後、二階にある部屋に案内してもらった。一人部屋だから小さな部屋だけどベッドがあれば問題ない。お風呂に入るときに一声かけてくれれば使い方を教えてくれるそうだ。少し休んだら入らせてもらおう。
私は一人で部屋に入りベッドに腰掛ける。この部屋には、そう。鏡があるのだ。今こそ新しい自分の姿を確認するとき! いざ!
「うわあ…」
そこには美少女が立っていた。白銀の髪、青い目、白くきめ細かな肌。そして思わず凝視するほどの整った顔。
「すごい…すごい…違和感ある」
鏡に別人がうつってる…って気分なのよね。困った。確かにこれは揉め事の火種になってしまうかもしれない。この顔、この体が自分だという認識がちゃんとできていないと、この先面倒なことになりそう。
「危なそうなところにはいかない。うん。そうしよう」
とりあえず、今日はもう疲れた。お風呂に入って休もう。
一階に降りてさっきの女の子にお風呂を使いたいと伝えると案内してくれた。
その時に名前を教えてくれたのでこちらも自己紹介をした。ネリンさんというらしい。年齢は16歳だそうだ。
さすがにコミュ障でも自己紹介くらいできる。自分からはしないけど。
お風呂の使い方の説明をしてもらったら、ちょっと困ったことになった。なんでも、お風呂のお湯は魔石から出てくるのだそうだ。その魔石は火属性の魔石と水属性の魔石を使っているのだが、その魔石を起動させる、所謂スイッチがなんと魔力なのだという。
そう何が困ったって私は魔力が使えない。つまりお湯を出せないのだ。どうしよう! と困っていた私を見てネリンさんが尋ねてきた。
「何かわからないことでも?」
「えっと、実は私魔力が使えなくて」
「え! てっきり魔法使いなんだと思ってました」
ここでもローブ姿だからか魔法使いと思われたみたいだ。
「あー…魔力自体はあるみたいなんですけどね。使い方がわからなくて」
「そんなことあるんだ…でもここのお風呂は大丈夫ですよ」
なんでも魔力じゃなくても起動させることのできるスイッチが取り付けてあるとのこと。
嘘かホントか、疲れた冒険者がいちいち魔力を入れてられるか! ってなったことが原因だとか。
イグニさん達がこの宿屋を勧めた理由はこれかな。本当に助かった。
その後無事にお風呂に入りさっぱりして、部屋に戻ってベッドにダイブした。
ベッドでゴロゴロしながら今日を振り返る。
「本当に知らない世界なんだなあ」
日本とは全然違う。
今までのような甘えた生活は送れないし、送ってはいけないんだろう。
この世界では甘えてる人間を助けてくれるような物好きなんていないだろうから。
「変わらないと」
頑張って生きていこう。きっと大丈夫だ。
前向きに考えよう、変わるためのきっかけになったと。
この胸の不安はどうしようもないけど、いつか慣れる日がくるはず。
明日から忙しくなる。早く寝ないと。
そう思って目を閉じたら、いつの間にか眠ってしまった。




