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冒険者って格好いいよね

 結構歩いたんだけど。未だ何も見つかっていない。

 そろそろ日が傾いてきている。まずい。


 ガサッ

 ん? 何か音が。

 ガサガサ


 向こうに何かいるみたい。人…だったら見えてるよね、この草の高さならさすがに。

 野犬とかだったらどうしよう。


 ガサッ!


「グルル…」


 本当に犬!? デカイ!

 デカイっていうか、犬のサイズじゃなくない?

 いや、犬飼ったことないから大きさなんてそんなに知らないけど。

 とりあえず大ピンチではないでしょうかこれ。

 来るなよ、来るなよ、フリじゃないぞ。

 そんな思い空しく大きな野犬が突進してきた。

 そんな野犬と対峙したことのない私は動くことができないまま…


 ドン!!


 うわー。今私、空飛んでる。これが走馬灯…。

 なんか偉そうな態度の少年が口角上げながらこっちを見てる…なんだこの記憶?

 身に覚えがない!


「ぶべぇっ」


 女らしからぬ声が出たけど仕方ないね。突進された挙句に地面に叩きつけられたんだから。

 うーん痛い。あれ? 痛い?


「痛くないな」


 痛くないし怪我もないぞ。何が起きたのかしら。


「もしかしてこのローブ? それとも加護?」


 よくわかんないけど、考えるのは後にしよう。今はあの犬をどうにかしないと。

 あ! そうだ!


「これでどうだ!」


 肉の塊を食材庫から取り出してみる。ほれほれ、こっち見ろ。

 食いついてくれないかな。


 クンクン


 お、見てる? 

 これを向こうに投げて…よし、興味示しているね。

 犬が向こう見てるうちに逃げよう。走ると追いかけられそうだからこっそりこっそり。離れられたら走ろう。

 あともうなんかドリアンでも出して後ろに置いておこう。鼻がおかしくなれ。


「別にドリアンじゃなくて胡椒とかの方がよかったんじゃ?」


 人って慌てると何するかわかんないよね。




 どうにか逃げきった…。まさかあんな大きな犬がいるとは。

 もう嫌この森。早く出たい。


「いくら食べ物があってもこんな森でサバイバルは無理」


 もう夕方だ。

 このまま抜けられないと、この森で野宿になってしまう。



 さすがに疲れてきた。そろそろ休みたいけど、休んでたら夜になっちゃう。


 …そろそろ…

 …じゃない…

 あれ…


「! もしかして…人?」

 話し声がする方へ向かう。いきなり近づいたら驚かれるかな。念のためフードをしてこっそり近づこう。怪しい人かもしれないし。

 この時は気が付かなかったけど、向こうからしたら私の方が怪しい人物だっただろう。


「そろそろ街に戻りましょうか」

「そうだな」

「依頼は達成したしな」

「結局3匹だけだけどね」


 おお、あれはもしや異世界の定番、冒険者ってやつでは?

 すごい、格好いい。

 男2、女2のパーティみたいだ。

 男の人達は剣を持っている。剣なんて初めて見た。

 髪の長い女の人は杖を持ってるみたいだけど、もう一人はマントを着ているから何を使うのかわからない。

 杖があると魔法使い! って感じがするね。

 悪い人じゃなさそうだし、声をかけて助けを求めるべきですね。

 でも、そう。私は! コミュ障なんです! 

 知らない人に声をかけるとかハードルが高すぎる。

 今はそんなことを言っていられないことはわかっているんだけど、あと一歩、たった一声が出ない。

 木の陰でもたもたしてたら草に触ったらしく、音をたててしまった。


「! 何かいるぞ」


 その音ですぐに冒険者たちは武器を構えた。攻撃されたらヤバイ。

 勇気を出せ私!


「う、あ、あの」


 どもってるけどしかたないんです。ごめんなさい。

 汗と心音がすごいことに。


「…人か?」

「そうみたい」


 そう言っているが警戒を緩めてくれてない。

 でもすぐには攻撃されなさそう。よかった。


「すまないがフードを取って出てきてくれるか」


 言われて慌ててフードを取って木の陰から出る。そして4人を見ると、何故か私を見て固まっていた。


「あ、あの、すいません。森で迷ってしまって。道を教えてほしいんですが…」


 向こうは未だ固まっていたので、こちらから話しかける。

 私はだいぶん落ち着いてきたのか、話せるようになってきた。

 …私の顔何か変なのかしら。ごく普通のしょうゆ顔…ってそういえば体が変わったんだった。

 私、今の自分の顔まだ知らないわ。

 どうしよう、化け物みたいな顔じゃないよね。いやでも、ちゃんと人間の体って言ってたし、見られる顔ではあるはず。

 そうだよね、信じてるよ神様。


「あ、ああ。道か。向こうの方に歩いていけば森からは出られるぞ」


 パーティリーダーなのか、先ほどから話かけてきていた男の人が我に返り教えてくれた。


「ありがとうございます」


 お礼を言って教えてもらった方へ向かおうとしたら、女の人に声をかけられた。


「ねえ、一人で森にいたの?」

「え、あ、はい」

「ミトロジアの子かな」

「みとろじあ?」

「ここから一番近い街のことだよ」

「街があるんですか?」

「あるけど、あなたどこから来たの?」


 やっぱり怪しまれているよね。当たり前か。

 近くの街の存在も知らずに森でうろついてるなんておかしいよね。

 でも下手に嘘つくと後で困りそう。


「えと、わかんないです。気が付いたら森にいたので」


 まあ、嘘じゃない。

 日本から転生して森で生まれましたとか言っても意味がわからないだろうし。


 そういうと女の人は他の仲間に目配せして、その仲間も頷いたりしてる。

 ああいう目だけで会話するって憧れる。通じ合ってるって感じがして。

 決して私が友達のいない寂しい子ってわけではない。


「私たち今からミトロジアに帰るけど、一緒に行く?」


区切りが悪くて短くなってしまいました

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