開店しました!
寝坊することもなく目が覚め、二人で店内の掃除。
開店前の最終チェックも終えたので、お客さんが来た時のシチュエーションをしてみることに。
「はい、お客さんが来たら?」
「いらっしゃいませー。空いてるお席へどうぞ。壁に貼ってあるメニューから料理を選んでください」
「ではハンバーグ定食にします」
「前払いになります。こちらの木板を持ってお待ちください」
サリーアンがハンバーグ定食と番号が書かれた木板を渡し、それと同じものを私の方にも持ってくる。
「ハンバーグ定食一つ」
「はい。ハンバーグ定食上がりました」
それを持って先ほどの木板を持っている人のところに行く。
一連の流れはこんな感じだ。
ちなみにテーブル席は撤去した。カウンター席の6つしか座らせない。
「うーん。まあいいんじゃないかな」
「なんとかなるでしょ。今日開店するって宣伝してないし、もしかしたらお客さん来ないかもしれないし」
「来なくてもアイテム袋のおかげで食べ物がダメになることはないから平気。細かいところはもう実際に人が来ないとわかんないし、もういっか。看板出してこよう」
宣伝は面倒くさいのでしませんでした。
外に『本日開店』と、メニューと前払いなどが書かれた看板を出しておく。
誰か来るかな?
「お昼時だけど、まだ誰も来ないね」
「やっぱり宣伝してこないとダメか」
開店してから一時間くらい経ったが未だに誰も来ていない。
暇だったので自分たちのお昼ご飯を食べていたくらいだ。
なんて喋っているとドアが開く。
「やってるか?」
「ここが噂の店か?」
噂ってなんだ。
来店したのはガタイのいい男二人組だ。
「やってますよ。いらっしゃいませ。空いてる席にどうぞ」
サリーアンが案内をして座らせる。
「ハンバーグが食えるって聞いたんだが」
「ありますよ。パンではなくご飯…お米になりますが」
「米? 腹にたまるのか?」
「たまりますよ」
「じゃあ俺はそれにする」
「俺はウルフカツが食いたい」
「はい。ではハンバーグ定食とウルフカツ定食ですね。前払いになります。よろしいですか?」
男たちは素直にお金を出す。
それと引き換えに木板を渡し、私の方へ。
「ハンバーグ定食とウルフカツ定食一つ」
「はいよ」
ほとんど作り置きをしているので、ハンバーグを焼くのと、ウルフカツを揚げるだけ。
ものの数分で出来上がったその二つを、サリーアンに持って行ってもらう。
「お待たせしましたー」
「おお! やっぱりこの匂いだ!」
「いやー、屋台が無くなったって聞いてショックだったけど、ようやくありつける!」
どうやらあの二人は屋台時代の常連さんだったようだ。
肉とトマトソースはレシピ公開してるし、そこそこ売れたらしいんだけど、デミグラスソースととんかつソースに関しては売ってないからね。
あれを味わうためには私のところに来ないといけないんだよね。
でも、ご飯でも大丈夫かな?
「うまい!」
「米って肉と合うんだな!」
二人ともガツガツ食べてる。口に合ったようで良かった。
他にもスープうめえだの、サラダってうまいんだなとか言いながら綺麗に完食してくれた。
「ごちそうさん」
「うまかった。また来るよ」
その言葉って作っている側からすると、一番嬉しい言葉なんだよね。
「ありがとうございました」
その後もチラホラと客が増えてきて、それなりに忙しくなったけど、列を作るほどではなかった。
でも久々の商売は疲れたので、夕方前には閉めた。
サリーアンも忙しそうにしていたので、閉めるのに反対はされなかった。
「やっぱり売れるんだね、ここの料理」
「そうだね」
二人でテーブルにぐったりしている。
なんだかすごく疲れた。やっぱり屋台の頃より作る種類が多いのが原因だろうか。
明日もやるのかと思うと今から面倒。
「明日の準備もしないといけない…」
「明日もやるんだね…大変だぁ」
「サリーアンもやるんだよ」
下ごしらえは明日の朝からでもいいけど、片付けは今じゃないとね。
今日やってみてわかったことは、皿洗いまで手が回らないってこと。
お皿はたくさん用意してあるけど、洗う余裕はない。結局、出せる数にも限りが出てくる。
店仕舞いの口実になるから全然いいんだけどね。
「私正直、明日の方が混むんじゃないかと思ってる」
「私も思ってるよ」
ですよね。今日来たお客さんから口コミで広まるなんて、屋台時代から経験してるからね。
あ~不安。
やっぱり下ごしらえ、今からやっとこうかなあ。
夕食時に、店の外で開店してないことにガッカリして帰るっていう人達が何人かいて、やっぱり夕食時もお客さん来るんだなって思った。
それでも今日はもう開く余裕はない。
今日は早めに就寝した。
次の日。
昨日より多めに…っていうほどではないけど、それなりにたくさん提供できるように作っておいた。
「気合入れて頑張ろうね」
「うん」
さあ、開店だ。
想像以上なんですけど!
もう何人前作ったかわかんないよ!
サリーアンの声はするけど姿を見る余裕はない。それは向こうも同じみたいだけど。
私はただひたすらに料理を作り続けている。
あ、やばい。
「サリーアン! ハンバーグあと三つ!」
売り切れるときのことはシミュレーションしなかったな。
「今三人分入ってるけど! それで終わりってこと!?」
新たに三人注文いれていいのか、すでに入っている注文で終わりなのか、判断に迷うよね。
ちゃんと話し合っとけばよかったなあ。
ハンバーグから始まり、ウルフカツ、うどん…っといった感じにどんどん売切れていきそうだったので、早い段階で店を閉めるようにサリーアンに指示を出した。
次から次へと入ってくるお客さんを追い返すのに苦労していたようだったので、申し訳なかった。
みんな渋々帰って行ったけど、サリーアンも私も見た目が大人とは言えないから、揉め事が起きたら困るね。
対策を考えるべきだろうか。
とりあえず、無事に最後のお客さんを返して、今日の営業は終わりだ。
「つっっっっっかれたあああああ」
今日も二人でテーブルにぐったり。
でも、疲れは昨日の比じゃない。
「まさかあんなに混むとは…」
「一人であれだけの人数捌くの無理ぃ…」
「席は6つだけじゃないの」
「そうだけどぉ」
まあ、わからなくもない。私も延々と料理作り続けるのはしんどかったし。
「これ、しばらく続くんだよねえ」
屋台時代もそうだった。落ち着くのはもう少し先だ。
「帰りたい…」
「ここが家だよ」
サリーアンにいなくなられたら、それこそお店が回らない。
これを一人でやろうとしてた私は馬鹿だと思う。
サリーアンを雇っておいて良かった。
三日目にもなれば多少は慣れるようで、昨日よりは手際が良い。
それでも忙しいのには変わりはないけど。
今日もちゃんと混んでます。
「ウルフカツ定食一つ!」
「ウルフカツあと5!」
昨日の反省点を活かしてシミュレーションもしたので、尚更スムーズだ。
今日も夕食前には閉店になるだろう。
「そういえば」
「ん?」
今は閉店して片付けも終わり、二人で夕食を食べているところだ。
「ネリンさんだっけ? あの人今日来てたよ。それからナーリさんとリーゲルさんも」
「早速だねえ」
あの人達仕事はどうしたのだろうか。
「あとナナに伝言しといてほしいって冒険者の人達がいたよ」
ずっと厨房で料理を作っている私は誰がお店に来てくれたのか見ていない。
冒険者ってことは、イグニさん達かな。前に冒険者ギルドで伝言残しておいたけど、音沙汰なかったのよね。
「確かイグニって言ってたよ。伝言聞いて食べに来たって」
「そっか。やっぱり遠出してたのかな」
挨拶できなかったのは残念だったな。




