一人じゃないって、楽しくて大変
三人とも見事に完食してくれました。嬉しいね。
「どうでしたか?」
「美味しかった。開店したら全メニュー制覇しに来るね!」
「私も通いにきます」
ネリンさんとナーリさんが笑顔で嬉しいことを言ってくれる。
「ナナさん、お願いがあります」
「なんでしょう」
リーゲルさんが真剣な表情で話しかけてきた。
なんか予想できそうだけど。
「レシピを教えていただけませんか」
「ギルマス、さすがにそれは気が早すぎます」
私が答えるよりも先にナーリさんが制する。
さすがにまだ開店もしてないのに教えるのはね。
「そうですね。さすがにまだ無理ですね」
「それはいつか教えていただけると思っていいのでしょうか」
「さあ? それは私の気分次第ですね」
そしてあなたの態度次第だよ。
「…わかりました。失礼なことを言って申し訳ありませんでした」
ちゃんと引き下がってくれた。
商売人って怖いね。
ネリンさんはお礼を行って帰っていったけど、ナーリさんとリーゲルさんはまだ残っている。
これからは営業に関するアドバイスをもらうのだ。あとサリーアンのことも。
「この家賃貸なんですけど、サリーアンが一緒に住んでも大丈夫なんですか?」
「金額に変更はありません。それに賃貸料をナナさんが代表として支払うなら問題ありません。折半する場合は契約内容を少し変更して再契約することになります」
「じゃあこのままでいいか。給料から引こう」
「むしろ給料出してくれるの? 住む部屋あって、食事も出るのに」
さっき朝夕食くらい出すって言ったので、衣食住の衣服以外は用意するのが決定している。一緒に暮らすのに食事別って寂しいからね。
「お小遣い程度にしかならないだろうけど、何もないんじゃ何も買えないでしょ」
「うん、ありがとう」
「それでナーリさん。従業員に渡す給料に目安とかありますか?」
「特に明確な基準といったものはありませんね」
この世界に最低賃金という概念はないようだ。
うーん。まだどれくらい稼げるかわかんないしなあ。稼ぎ次第かね。
「注文した料理を間違えずに渡す方法だけど、何かある? サリーアンの記憶力がすごくいいっていうなら考えないけど」
「無茶言わないで。ここの料理美味しいから絶対混むでしょ」
「エルフにそういう可能性があるかもしれないじゃない」
「少なくともわたしにはないから」
「じゃあどうしようか。ナーリさん、リーゲルさん、この店って人来ますかね?」
「間違いなく来ますね」
「屋台をやっていたナナさんがお店を開くって、すでに噂になっているそうですよ」
どこからそんな情報が漏れたのか。
忙しくなったら嫌だなあ。
だからって避けようがないけど。スムーズに受け渡しする方法を考えないといけないね。
やっぱり食券スタイルかな。
「紙か何かに料理名を書いて、お金と引き換えに渡すとか、わかりやすいかな」
「紙だとすぐ消耗するので木板などでどうでしょう」
「じゃあそれでいいかな。たくさん用意しないと」
お店やるのって面倒くさいなあ。考えが雑になってきちゃう。
サリーアンに料理教えようかね。私が楽をするために。
こうして営業に向けて着々と準備が進められていった。
すっかり夜になり、ナーリさんとリーゲルさんが帰って行ったので、サリーアンと二人でピザを食べている。
二人で暮らす上で決めないといけないことがたくさんあるけど。
「さっきの魔力について聞きたいんだけど」
それよりも食材庫を使ったときに魔力が消費されている件について聞きたい。
もしかしたら魔法を使えるようになるきっかけになるかもしれない。
「聞きたいって言われても。魔力使ってたよとしか」
「私魔力扱えないのよ」
「ええ!? 使ってたじゃん」
「あれは魔法とは少し違うんだよ…」
どう説明すればいいのやら。
「えーっと、ナナは魔法も魔力も使えないと。でも気が付かないうちに魔力消費してたけど、それを感じ取れないと。意味わかんないね」
一言余計だよ。
「だからこの家の魔石は起動式の魔石なのね」
「魔力使ってるって感じがしないんだけど、どうやったら魔力を感じ取れるの?」
「さっきのアレは魔力消費量はそんなに多くなかったけど、感じ取れないっていうのはどうなんだろう」
「私が聞きたい」
「うーん…?」
サリーアンは唸りながら私をまじまじと見つめてくる。全身をくまなく見てくる。何なの。
「ナナってもしかして魔力量がものすごく多いのかも」
「あー…」
確かに多かった気がする。
最近ステータス見てないからなあ。最初のころ見たっきりだ。
「多すぎて魔力消費してるのに気が付かなかったんじゃない? 普通ありえないけど」
「否定できないのがなんとも…」
神様が作ったこの体が普通ではないことくらい気が付いてる。
「魔力使えるようになりたいなら教えてもいいけど」
「本当!?」
おおおおお! ついに魔法が使えるフラグが!?
「でも今日はもう遅いからまた今度ね」
「むぅ…まあしょうがないか」
その後、今後生活していく上でのルールを細かく決めるのにいろいろ揉めたけど、なんだかんだイイ感じに落ち着いたので就寝。
客用にベッドを一つ買っておいて良かった。
お風呂上りにフード取った姿をサリーアンに見られたけど、そんなに大きな反応はなかった。
へー美人だねーって。エルフは美形が多いから見慣れてるんだってさ。
なんとなく残念なのはなんでかね。
ベッドに入って明日の予定を考える。
明日ついに魔法が使えるかもしれないと思うとわくわくする。
いろいろやらないといけないことは多いけど、明日が楽しみだ。
新しい朝がきた!
そうだ、今日は鍋を取りに行く日だった。掃除が終わったら取りに行こう。
「おはよう」
洗面所に向かったらサリーアンが既に起きていた。
「おはよう。早いね」
「エルフは早起きだからね。今日の予定は?」
「んー…買い物。それとお店についてまだまだ決めたいことあるよ」
「そうね」
「朝ご飯何にしようか」
「何食べても美味しいから何でもいいよ」
せっかくなのでフレンチトーストを作りました。この世界に来てから初めて作った料理だ。サリーアンにも好評だった。
今後について話し合った結果、料理は私、配膳はサリーアン。開店前の下ごしらえは一緒にやるってことになった。
その後は買い物に出かけた。サリーアンが使う日用品も買わないとね。
「そういえばさ」
「なに?」
「エルフとドワーフって仲悪いの?」
これから行く鍛冶屋はドワーフが経営している。仲が悪いなら外で待っててもらわないと。
「長生きしているエルフの中には嫌ってる人もいるけど、若い世代じゃそんなことはないよ。わたしも別に嫌ってないし。ドワーフ側はわかんないけど、今は何とも思ってないんじゃないかな」
「昔は仲悪かったの?」
「数千年ぐらい前に小規模だけど争いがあったんだって。森林の伐採がどうので」
「鍛冶のために森林伐採したドワーフと、それに怒ったエルフって構図かな」
「そんな感じ。エルフの国には長生きしてるエルフが多いからドワーフはあんまり住んでないんだよ」
「その時代を生きたエルフにとっては歴史上の出来事じゃないもんね…」
ドワーフはそこまで寿命長くないから、嫌われている理由を伝え聞いた話でしか知らないんだろうな。長生きエルフと若いドワーフ間での温度差凄そう。
買い物したものをアイテム袋に入れるように見せかけながらアイテムボックスに入れる。サリーアンが不可解そうに見てて、そういえば説明してなかったなあって思いだす。
まあ、後でいいや。




