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試食会

 

「早速なんだけど」

「うん」

「夕食時に試食に来てもらうことになってるから、今から作ります」

「もうお昼も過ぎたけど間に合うの?」

「作り置きしてあるので大丈夫」

「ふーん…なにすればいいの?」

「飲み物の用意とか。果物出すから絞ってって」


 飲み物のことをすっかり忘れていたので今から絞るのだ。

 アイテム袋…から出したように見せかけながら食材庫から果物を出す。

 すると


「え、何今の。どこから出したの?」

「え? アイテム袋だけど」

「嘘でしょ。魔力の流れがすごいことになってたもん今」

「ええ?」


 確かにスキルを使ったけど。

 魔力? どういうこと?


「エルフは魔力を感じ取るのがうまいのよ。何か魔力を消費するような魔法とか使ったでしょ」

「すごいんだねエルフって」


 隠し通せないとは思っていたけど、まさか一発で見破られるとは思ってなかった。

 というか、もしかして食材庫って魔力消費してるの?

 全然そんな感じしないんだけど。

 なんて思っていたら、気に障ったと思われたらしく、サリーアンが慌てて謝ってきた。


「ごめん、隠していたいなら言わなくていいよ。気が付いちゃったからつい」

「いいよ。でも、説明はまた今度ね。今はこっちよろしく」


 そういって大量の果物をサリーアンに渡す。

 それを見て顔が引きつっていたけど、これも仕事である。

 そういえば、給金とか決めないといけないのか。この世界のお給料ってどれくらいなんだろう。

 ナーリさんにアドバイスしてもらおうかな。





「困った時のナーリさんです」

「ナナさんに頼られるのは嬉しいですね。いろいろと状況に変化が起きているようですが、そちらは?」

「サリーアンです」

「ナーリと申します」


 サリーアンがぺこりと挨拶をする。

 それに対してまるで条件反射のように挨拶を返したナーリさん。さすが商業ギルドの受付さん。


「従業員として雇いました。さっき」

「さっき…ナナさんが信用できるというならそれに越したことはありません。それで、困ったこととは?」

「お給金のこととか」

「ああ、なるほど」

「まあ、とりあえず、食べてからにしましょう。それで、そちらの方はどちら様でしょうか」


 夕食の時間になり、早速ナーリさんが来てくれたのはいいんだけど、その後ろに見たことない男の人がいる。ひょろっとした感じの力仕事は無理そうなおじさんだ。


「本当に申し訳ないのですが、私がここに試食に来ると知ったらついてきてしまって」

「旦那さんですか」

「違います。私は独身です」


 美人なのに独身なのか。まあ、仕事一筋って感じがするからとっつきにくいのかも。

 そんなやり取りをしていたら、男の人が話しかけてきた。


「はじめましてナナさん、サリーアンさん。僕は商業ギルドのギルドマスターで、リーゲルと申します」

「「はじめまして」」

「ナナさんの料理が一足早く食べられると聞いて、居ても立っても居られずついてきてしまいました。お金も支払いますので、どうか僕にも食べさせていただけないでしょうか」

「まあ、いっぱいあるからいいですよ。お金も結構です」


 むしろ借りにしておけば後々助かりそうだからお金なんて対価は支払わせない。


「そういえば屋台の方にも来ていただいたとか」

「はい。あの料理は素晴らしいものでした。レシピをお売りいただいてありがとうございます。でもあの黒いタレは再現できないですね」

「あれに関しては売りませんよ」

「わかっています。他の物を公表していただいただけでもありがたいことです」


 売れないというか、作れないんだけどね。


「とりあえず、座ってください。食事にしましょう」


 ナーリさんとリーゲルさんをカウンター席に座らせる。

 そして昼間サリーアンが絞った果汁を出す。


「これがメニューです。どれがいいですか?」


 メニュー一覧が書かれた紙を見せながら聞く。この世界に写真なんてものはないから品名が書かれているだけだ。


「いろいろありますね。全部食べたいくらいです」

「名前を見ただけではわからないものもありますね。頼んでみてからのお楽しみというやつでしょうか」


 2人でメニューを見ながらあれこれ言い合っていたときに、店のドアが開く。


「ナナちゃーん! 来たよ!」

「いらっしゃい。適当に座って」

「何食べさせてくれるの?」

「ここから選んで」


 そういってネリンさんにもメニューを見せる。

 お店で出す料理は、ハンバーグ定食、ウルフカツ定食、かけうどん、トマトソースパスタ、それとピザだ。

 ピザは作って食べてみたところ、結構おいしくできたのと、トマトソースとチーズがあれば作れるからレシピ教えなくても広まるんじゃないかなと思って。石窯なんて使ったことないから焼くのに苦労したけど。

 定食にはご飯とサラダとオニオンスープが付いてくる。

 かけうどんには青ネギと大根おろしと、かき揚げの中から選んでもらう。かき揚げはさっき作った。

 とりあえず、定食はご飯であることと、うどんとパスタは麺類であること、ピザはパンだと伝えておいた。



 結局、ナーリさんがかき揚げうどん。ネリンさんがピザ。リーゼルさんはウルフカツ定食になった。他のも気になってたみたいだけど、それは開店してからのお楽しみってことで。


 まずはピザを焼く。アイテムボックスに焼いてあるのが入ってるけど、いろいろバレそうだし、別に混んでいるわけでもないし。

 次にカツを揚げる。すでに下ごしらえ済みなので揚げるだけだ。オニオンスープも温めるだけだし。

 うどんはもう茹でてあるし、つゆも温まってるし、かき揚げも揚がってるし、すぐできちゃうな。


「私何すればいい?」


 そういえばサリーアンのこと忘れてた。

 うーん。


「見て覚えて。出来上がったら運んで」


 今手伝えることは特にないね。できたら運んでもらおう。



 順調に出来上がり、サリーアンに運んでもらう。

 注文と注文した人を間違えないような工夫が必要だなあ。ここだと紙は安いものじゃないから使い捨てるのは勿体ない。先払いしてもらおうかな。食券みたいなのを用意するとか。あとで考えておこう。


「これが麺料理ですか。食べるのは初めてです。この上に乗っているかき揚げというものは見たことないですね」


 麺料理ってこの街にもあるのかな。

 天ぷらはなさそうだけど。


「このスープ、かなり食欲をそそる匂いがしますね。サラダにも何かかかっているみたいです」


 商業ギルドの二人は料理を分析しているけど


「うわー美味しそう。いただきます!」


 ネリンさんは運ばれてきてすぐに食べ始めた。

 その様子を見て二人も食べ始める。


「美味しい! チーズがトロトロだし、トマトソースが合うし、具材もいろいろ乗ってるし豪華だねこれ」

「うどんは食べるのが難しいですね…この深めのスプーンにはこういう役割が…。このスープは何がベースなんでしょう。かき揚げというのはサクサクしていてうどんと合いますね。美味しいです」

「ウルフカツがこんなに米と合うなんて…しかも米がリゾットとは違う、しっかりとした食べ応えがある。どうやったらこんな風に…水の量? それよりも味のない米がおかずと合わせるとこんなにお腹を満たす料理になるとは…。しかもなんだこのスープは。タマネギが入っているだけなのになんでこんなに美味しいんだ。サラダにかかっているこのタレのおかげで生野菜がこんなに美味しくなるとは…」


 リーゲルさん怖いな。

 全員美味しいと言ってくれたので、料理としてはお店に出しても大丈夫ってことだね。

 その様子を見ていたサリーアンが小声で


「見てるとお腹すくね」

「そうだね。なんか食べたいね」

「わたしあのピザ食べてみたい」

「あとでね」


 この子自由人だなあ。


駆け足気味ですが、完結まで書き溜めてあります。

あともう数話で終わると思います。

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