エルフとお近づきに!
受付のお姉さんにお礼を言って冒険者ギルドから出ると、すぐに先ほどのエルフが後から出てきた。
なんだか暗い表情をしている。確か人を探しているんだよね。大事な人の行方がわからないから探してほしいとかかな。隣にいたけど話は聞いてなかったからわからない。途中大きな声出してたみたいだけど。
「これからどうしよう…」
あれ? 何か困ってる?
どうしよう、声かけてみようかな。是非エルフとお近づきになりたい。
え? コミュ障じゃないのかって?
一か月も屋台やってたのよ? 克服したさ!
「どうかしましたか」
想像以上に小さい声が出ました。
コミュ障治ったとか嘘つきました。ごめんなさい。
「え?」
聞き返されるのって心にくるよね。
「あ、すいません。困ってそうだったのでどうしたのかなと」
「ああ。いえ、ありがとうございます。実は人を探しにこの街まで来たんですが、どうやらもうこの街にいないみたいで…」
気を遣わせた気がする。おかしいな。ここは私の格好いいシーンじゃなかったのかな。
人探しね。てっきり冒険者ギルドで依頼するのかと。
「それで、その、その人を頼る予定だったので、お金に余裕がなくて…」
あー…そういう系ね。
「ああ、なるほど。その人ってこの街で働いてたんですか?」
「その人…姉なんですが、冒険者なんです。それでこの街を拠点にしているって手紙が前に届いたから来たんですけど…」
それで冒険者ギルドで聞いてたのか。
というか、冒険者の姉を頼るって生活を共にするってことかね。冒険者になりたいのかしら。
と、思ったが違うらしく。普通に職を得て働く予定だったそうだ。
「家を飛び出してきたので、姉を頼りながらここで生活基盤を整えられればなと」
「行き当たりばったりすぎない?」
お姉さんがここにいないってことは、連絡もしてなかったってことだよね。大丈夫かこの子。
どこから来たのか知らないけど、よくここまで来れたなあ。
「そうですよね…でも家を出ないといけなくて…」
うーん。さすがに家庭事情まで聞くのはな…それより今後よね。
ウチで働いてもらう?
正直、渡りに船ってやつよね。ちょっと抜けてる子みたいだけど、一緒に仕事するならそれくらいの方が気が楽でしょう。
でもスキルについて説明するのがなあ。信頼できる人じゃないと教えられないよね。
「今日どこかの宿に泊まれる分くらいのお金はあるの?」
「えっと…」
ぐぎゅるるるるるる
目の前の女の子から腹の虫が盛大に鳴いた。女の子の顔がみるみる赤くなっていく。
「食事してないの?」
女の子は何も言わずに頷いた。まあ、食事くらいならいいか。
「ウチ食堂だから食べてく? お代は皿洗いでいいよ」
「いいんですか!? ありがとうございます!」
女の子はすごく嬉しそうにしている。そんなにお腹すいてたのか。
困ってる人がいたらなるべく助けてあげたいよね。
私だっていろんな人に助けてもらったんだから。
「そういえば名前は? 私はナナ」
「サリーアンです」
「サリーアンね。じゃあついてきて」
二人で私の家に向かう。
向かう途中でサリーアンのことをいろいろ聞いた。
どうやら彼女はエルフの国から来たそうだ。そんな国があるとか心が躍る。
エルフの国といっても、国外とも交流があるし、エルフ以外の種族も住んでいるそうだ。
といっても、エルフは他種族に比べたら長命なため、住んでいるのはほとんどがエルフらしい。若いエルフが国外に出て行き、大分長生きしたら国に戻って余生…というには長すぎる時間を過ごすんだとか。
昔からそういう風に言われてきた、いわば慣習にようになってきたせいで、サリーアンは国外で一時的に暮らす羽目になったんだとか。
一度は世界を見てこい! ってことかね。大変だなあ。
可愛い子には旅をさせよというけど、もう少し手助けしてあげても良かったのではないだろうか。主に計画性とかそういう面で。
「大変だね」
「本当に…。別に全員が全員国外に出て行ったわけじゃないんだよ? でもウチの両親は二人とも旅に出ていたことがあったから、尚更そう思うみたいで」
良かれと思ってなんだろうなあ。エルフって大変だ。
そんなこんなで帰宅。
サリーアンを連れて中に入る。
「へえー。綺麗なお店だね。ここ一人でやってるの?」
「まだ開店してないけど、その予定」
「まだ開店してないの?」
「今日メニューの試食をお願いしてるから、それで問題なかったら開店する…と思う。それじゃ作ってくるからその辺に座ってて」
そういうとサリーアンは大人しくカウンター席に座った。
さーて、何作ろうかな。
作ったのはトマトソースパスタ。二人分。私も食べるからね。
さすがにアイテムボックスからいきなり出したら怪しすぎるので、麺を茹でるくらいはした。トマトソースは作り置きだけど。
「どーぞ。混ぜて食べてね」
「ありがとう。これって麺料理だよね」
「知ってるの?」
「エルフの国は他国よりは食文化が進んでるからね。これよりもっと太い麺だったけど」
それは良いことを聞いた。またレシピ云々で面倒なことになるかと思ったけど、麺料理があるなら気にしなくていいかも。
いつかエルフの国に行ってみたいな。
「こっちの方が美味しい」
「そうなの?」
「うん。このトマトソースっていうの? これが美味しい」
トマトソースって意外と好評なのよね。
「そっちの麺料理ってどんなの?」
「わたしが食べたのはもっと太くて白っぽかったかな」
それ、もしかしてうどんでは?
「味付けは特になくて、麺の上に野菜がたくさん乗ってるの」
サラダうどんみたいなやつかね。
うーん。そういうメニューもあるのか。
かけうどんを出す予定だったけど、それだけじゃちょっと寂しいかな。天ぷらも作るか。あと冷たいやつもいいよね。
こうやってメニューが増えるんだなあ。
「ごちそうさまでした」
「はい。それじゃあお皿洗いよろしくね」
「うん。ありがとう」
「それで、これからどうするの?」
お腹は満たされたけど、別に状況は変わってない。
「うーん…商業ギルドに行って職探しするのが順当だよね…」
「お姉さんはいいの?」
一応お姉さんに会いに来たんだよね。
「この街にはいないみたいだし、頼れたらなって思って来ただけだし、先立つものもないし、別にいいかな」
「そう…。そういえば、お姉さんからの手紙っていつ頃届いたものなの? 次の行き先とか書かれてなかったんだ?」
「五年前に来た手紙が最後かな…この街にいるとしか」
「ごっ…」
ええー。どういうことなの。この世界の人は年単位でしか手紙出さないの?
「古すぎない?」
「え? でもエルフはみんなそんなものだよ」
長命だからか? 人間で五年だと相当だけど。
「とりあえず、姉に頼れないから、自分でここで生計立てるよ」
「今日の宿代は?」
「や、安い宿ならなんとか…」
大丈夫かこの子。心配。
「見つからなかったら野宿? あはは」
「笑い事じゃないんですけど?」
「冗談だよ」
うーーーん。まあ、サリーアンなら信用してもいいかな。
「ここで働く? まだ開店してないけど」
「え。いいの? 助かるし嬉しいけど」
「いろいろ手伝ってもらうけど。いいよ。二階に一部屋余ってるし」
「住んでもいいの?」
「たぶん平気じゃない? 私に楽をさせてね」
「構わないけど」
「じゃ、よろしくね」
そんなわけで、一人暮らしから二人暮らしになりました。
さすがに知り合った子を放り出すのもね。
良い子そうだし、なんとかなるでしょ。
なにより、全く知らない人を雇うよりはサリーアンの方がいい。
スキルについては、様子を見ながら話すか決めようかな。




