交友関係が…
次の日。この家に来た日を含めて、三日目である。
「うああぁぁぁぁぁ…掃除面倒くさい」
早くも一人での生活に飽き始めていた。
宿屋での生活が懐かしい。
「ちょっと…夢見すぎてたな…」
『一人暮らしは楽しい』から『一人暮らしは大変』に認識が変化してきた。
飲食店だから掃除しないわけにはいかないし、かといって小さい家とはいえ二階建て、掃除範囲が広いから大変だ。しかも話し相手いないから寂しい。昨日は一日料理を作っていたけど、それも飽きてきた。
それに、心配なのが
「一人で営業できるかな…カウンター席だけでも6つあるんだよね」
屋台は一人ずつしか来なかった。それが単純計算で六倍になる。
しかもあの頃より作る種類は多いんだし。
注文受けて料理作って配膳して…無理じゃね?
まず注文受ける役と料理を作る役を一人でこなすのが無理っぽい。
「雇う…雇うかぁ」
いざ開店したらてんてこ舞いで客足が途絶える…なんてなったら目も当てられない。
でも人を雇うとスキルがなー、隠し通せるとは思えないのよね。
んー…ナーリさんに相談しようかな。この前話した試食をしてもらって、その上でどれくらい忙しくなるか聞いてみよう。雇用に関しても相談に乗ってくれるらしいし。
なので、今日は試食をしてもらうために暇そうな知り合いを探しに行く。
せっかくだからナーリさん以外の人にもお願いしよう。
時間は夕食がいいかな。それならみんなお仕事終わってるでしょう。たぶん。
仕事終わりの人を暇な人というのもおかしいか。
まずは商業ギルド。ナーリさんには前に試食の話をしたから大丈夫だと思う。
相変わらず人の多い商業ギルドに入り、ナーリさんがいる受付に行く。
「あら、ナナさんどうされました?」
「前に話した試食の件なんですけど、今日の夕食にお願いしてもいいですか?」
「もちろん構いませんよ。では夕食時にお邪魔させていただきますね」
よし、ひとまずこれで一安心だ。
他にも誘いたいけど、知り合いってそんなにいないのよね。
ネリンさんは忙しいかなあ。一応行ってみよう。
「行く!」
ネリンさんがいる宿屋に来て、試食のお願いをしたら即答された。
「仕事大丈夫?」
「むー…聞いてくる!」
宿屋ってお休みないよね。朝から晩まで忙しいんじゃないかな。
そういって奥の部屋に入って行ってしばらく、ネリンさんが笑顔で出てきた。
「行っても良いって!」
その後ろからネリンさんのご両親が出てきたので話しかける。
「えーと、こっちから言い出しておいてあれですけど、本当にいいんですか?」
「ええまあ、大丈夫だと思います。今ちょうど弟夫婦が来ているので、手は足りてますから」
そういやちょうど私が宿を出るくらいに知らない人達が働いてたな。
あれは弟夫婦だったのか。
「それに、ナナさんには恩もありますから」
「それはこちらも同じですから気にしないでください」
ネリンさんにハンバーグサンドをあげた時に、その話をご両親にしたそうだ。
その結果、できたのがホットドッグモドキである。
しかもご両親は律儀に、こういうものを作ったので宿のものとして売っていいかと聞いてきたのだ。
まだまだこの宿で世話になるのだから、これくらいで恩が売れるならこちらとしてもありがたいと思ったので、気にせずに売っていいと伝えておいた。
そのおかげか、一か月間連泊しても何も言われなかった。
「それじゃあネリンさん、夕食時に来てね」
「うん! 楽しみにしてる!」
これで二人目だ。
あとはイグニさん達かな。でも、どこにいるのかわからないんだよね…。
街をうろついたけど、イグニさん達は見つからなかった。実は家の場所とか知らないのよね。
なので、最後の手段。
冒険者ギルドで聞いてみる!
ということで、来ました冒険者ギルド!
今はそんなに冒険者がいない時間帯だろうから、入っても大丈夫だと思う。たぶん。
ドアを静かに開けて中を見る。思った通り、人は少ないみたいだ。
ちょっとドキドキしてるけど、フードを深く被って中へ。
数人しかいない冒険者達が、私に視線を向けているのをひしひしと感じる。
でも見ているだけのようで、特に絡まれることもなく受付に行けた。まあ、私が依頼人である可能性もあるんだから、何か危害を加えるなんてことしないだろう。
受付の人はナーリさんとはまた違った感じの美人さんだ。受付の美人率高くない?
「こんにちは。何か御用ですか?」
「えっと、イグニさんという方がいる冒険者パーティは今日ここに来ましたか?」
「イグニさんですか、それ以外の方のお名前はわかりますか?」
他三人の名前を告げると「少々お待ちください」といって何か操作している。
待っていたら、扉が開いた音がした。
扉の方へ視線を向けたら、緑色の髪色をした女の子が一人で入ってきていた。見た目年齢は私と大して変わらない。
この世界の人は大体が茶髪、金髪などであり、黒髪や赤毛なんかもいる。ちなみにまだ私のような銀髪は見かけていない。
そして、緑髪はほとんどがエルフである!
実はこの街にもエルフは何人かいるようで、度々見かけていたのだ。
ドワーフもいてエルフもいる。さすがファンタジー。
その子もエルフのようで、今まで見てきたエルフと同じ身体的特徴をしている。
そのエルフの女の子は、周りを見回しながら隣の受付まで来た。
「人を探しているんです」
依頼に来たってことかな?
チラチラ見てたけど、こっちの受付の方の作業が終わったようで話しかけられる。
「その方々でしたら今日は依頼にいっております」
「あー、そうですか」
「何かお困りですか?」
「いえ、大した用ではないので大丈夫です」
戻ってくる時間もわからないし、気を使わせてしまうだろうから伝言を残すのも気が引ける。
そもそも今のお店の場所を教えてないからなあ。
…というか、いきなり屋台が無くなったから心配かけた可能性があるのでは?
最近会えてないし。
やっぱり伝言くらいは残しとこうかしら。
「すいません、やっぱり伝言をお願いしてもいいですか?」
「はい。ただ、今日中に戻ってこない可能性もありますがよろしいですか?」
そっか。遠出の依頼かもしれないもんね。さすがに依頼内容は教えてくれないし。
じゃあ試食役はやめておこう。新しくお店を開くからその場所でも伝えておいてもらおうかな。
私の名前とお店の場所を教えて、もうすぐ開店なので来てくださいと伝えておいてもらう。
受付のお姉さんは快く引き受けてくれた。




