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派遣社員、宇宙へ行く!  作者: 相内みなぎ
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大学無償化

「小学校の担任の先生がね、お弁当の日にクラスの子がコンビニ弁当を持ってきているのを見てお母さんは何をやっているんだって皆の前で言った事があってね」


「皆の前で?」


それはひどすぎるのではないか。


それは親へ言うことであって子どもに言う事ではない。


「その子のお母さんはたくさん働いていたの。

私のお母さんがいつも『お金がない』って言っていたけれど、お父さんとお祖父ちゃんが仕事から帰った時にご飯、しかも出来立てでできていないと怒鳴る人だったからパートしか出来なかったのね」


その子は続けた。


「その子は中学生になっても、コンビニ弁当とかパンを買っていたの。でも高校受験の時に東京の大学付属の私立高校を受験して、東京の寮に入ったの。

ああ、あの子のお母さんは必死に働いて学費を貯めていたのね、と思った。あの子のお母さんは、あの子のためにお金を貯めて、この場所から出してあげたんだって。

羨ましかった。

あなたのお弁当はいつも美味しそうねって先生に言われていた。

けど、それがなんなんだって思った。お弁当なんか作らなくていいから私の学費のために働いて欲しかったと思ったの」


専業主婦と働く母親。


どちらがいいのか。


楓に判断はつかない。


そもそも、答えがある事ではない。


楓には両親がいなかったが、祖母がいた。


祖母は家にいつもいて、食事の支度も掃除洗濯もしてくれた。


お金がないとも、育ててやってるとも言われたことなどない。


お小遣いも友だちと遊べる程度には貰っていた。


食事も特別手作りにこだわる訳ではなく、レトルトもインスタントも使う。

外食も多かった。


ロボット掃除機も乾燥機付き洗濯機も食洗器も使っていた。


祖母は楓の両親が亡くなってから楓を育てるために自宅で仕事をしていたのだ。


両親の生命保険などがあったから、特別生活に困る事はなかったと思う。


いや、知らなかっただけなのかもしれない。


お金がなかったとしても、祖母は楓にはそうは言わなかったと思う。


楓自身、特別やりたいことがあった訳でもない。


二十年前と違い学歴に重きを置かれなくなってから、大学への進学率も五十パーセントに届かなくなっている。


二十年前に政府の政策で全ての大学、高校、専門学校の学費が無料になった。


それだけでなく、かなり甘い基準の成績で留学費用も国持ちになった。


すると、大学や専門学校にアイドル科、声優科、ゲーマー科などが乱立した。


それらの学科に進学しそこから道が開けなかった者は、改めて理系や文系に進学し直す者が増えた。


どうせ無料ならば一度夢を追いかけてから、と考える若者がこぞって進学した。


楓のバイト先のロボット販売店にも、高校のアイドル科に卒業し、大学のアニメーター科に進学した大学生がいた。


大学ではアメリカ研修やヨーロッパ美術館めぐりなど盛り沢山だったらしい。


その後アニメ制作会社に就職するも一年もたたずに退職し、専門学校の声優科に進学していた。


しかし声優の道は厳しかったようで夢破れ、その後受験勉強を必死にし、大学の工学科に改めて進学したようだ。


これらの学費が全て国費で無料である。


予算がかさみ過ぎたせいで十年前には学費の無料化は一人につき大学や専門学校一校までになった。


しかし無償化のままなので、何年も通う学生が増えた。


専門学校などはどんどん年数を増やして大学なみになっていった。


大学もどんどん授業が豪華になっていく。


半年ごとに海外研修をしたりするような学校が増える。


四年制大学で二年間だけ声優科、残り二年は文系というカリキュラムの大学が増える。


その頃はとにかく中退する者が増えた。


一校までと言っても本当に曖昧で、中退や編入の場合はカウントされず、うまいこといくつも学校を渡り歩き色々なスキルを無料で身につける者がいた。


予算は増えたままだった。


結局国は、高校の無償化のみを残し大学や専門学校の無償化をなくした。

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