男女
沖縄の離島で産まれたこと。
家族は余りイラストを描く事にいい顔をしなかったこと。
どうしても行きたかったイラストの学校を諦めたこと。
それでも家族に黙ってこっそりイラストの通信教育を高校の休み時間に受けていたこと。
SNSでイラストを発表し始めた時のこと。
SNSの事が家族にバレて揉めたこと。
彼女の育った家庭は典型的な男尊女卑家庭だったようだ。
「お婆ちゃん、若い時は未来は男女平等になると思ってたのに。
何でこんな事になったのかしらね・・・」
祖母は、そう呟いた。
ここ十年あまり。
男は外で働く、女は家で家事育児。
やはりそれが一番効率がいいのだ、という考えが広まった。
女性にとって、収入の多い男性に尽くす事が確実に幸せになる方法である。
日本中にそういった教えの女子校が増えた。
男に尽くせよ。
男に家事育児はやらせるな。
旦那さまには上膳据膳。
旦那さまに生意気を言ってはいけない。
旦那さまに敬語を使わなくてはいけない。
大和撫子こそ日本の宝である。
良妻賢母こそ日本の国力である。
余りにも時代錯誤な内容も多かった。
しかし、卒業生にその方針で成功した女性も多かった。
全国に更にそういった女子校が増えた。
「でもそういうのって、旦那さまの経済力あっての事でしょ?」
楓は祖母に尋ねる。
「何で女の人の料理がマズイと文句を言われるのに、男の人の収入が低いのは文句を言われないの?」
「あー」
祖母は思い出したかのように話し出す。
「お婆ちゃんの若い時は、SNSで旦那の悪口がいっぱいあがってて。
こんな事奥さんに言う男の人がいるんだってビックリした記憶があるわ」
「こんな事って?」
「あのねお婆ちゃん、お父さん、貴方のひいおじいちゃんね、ひいおじいちゃんにも旦那にも買ってやったとか食わせてやってるって一回も言われたことないの」
「でもそんな事言う人そうそういないでしょ?」
楓は尋ねる。
そんなの新聞の人生相談でしか見たことがない。
「いやぁ~」
祖母は答える。
「世の中にはそういうことを言う男性は少なくないみたいよ」
祖母は続ける。
「昔と違って男は収入だ、お金さえあれば後はいくらでも我慢できるはずだっていう風潮になってしまっているようだから、特に最近は増えてるんじゃないかしら?
昔はそういうのモラハラっていって嫌厭されていたものなのにね」
お金があるのが一番いい。
確かにそんな風潮だ。
楓が通った高校はそういった校風ではなかったが、中学で一緒だった友人の中にはそんな花嫁学校のような高校に行った連中も多い。
そのほとんどが本人の意志ではなかったようだ。
母親に決められたり、祖母に強く進められたりしたそうだ。
比較的成績が悪くても入学・進学が簡単にできるので、あえて行く生徒も多い。
しかしそういった校風の高校が増えたせいで、モラハラの男性が増えた、という意見も多い。
確かにそこまでする?という内容も多いらしく、中学時代の同級生の中には高校を中退した者も数人いるという。
これでは男性の奴隷ではないか、と。
楓はどちらかというと料理や家事は苦手だし、それ以前に人の世話を焼くというタイプではない。
良妻賢母とはほど遠い。




