グランドフィナーレ
「うわっ、レオ。生きてるのは知ってたけど、ここにいたの?」
「おっ、何だ、お前」
「ちょうどいいわ、ちょっと待ってて」
全てが終わったと思った直後、喫茶店の表から大声が聞こえる。レオと、どこかで聞いたことのあるような声。
いや、というより。
「いたいた、ヴァン」
入り口から、キリオが顔だけ出している。
「ちょっと来て」
「お前、どうして……」
こいつ、実家に帰っているはずじゃあなかったのか。
困惑しながらも、お茶代をテーブルに置いて外に出る。
キリオが、レオの胸倉を掴んだまま、あたふたしている。
さすがのレオも、眉を寄せて俺とキリオの顔を見比べている。
「ヴァン、大変なの。私の実家のすぐ近くで、訳が分からない事件が起きて、うちの両親も巻き込まれちゃってるの、早く来て!」
「え、それは、地元の探偵が何とかするんじゃないのか?」
「それだけじゃ頼りにならないもの。本当に訳が分からない事件なの。お願い、一緒に来て。ついでにレオも」
「俺、ついでかよ」
ぐらんぐらんとキリオに揺さぶられる度に頭を揺らしながらレオがぼやく。
「ほら、馬車を待たせてるんだから、早く」
「どうする?」
腕を引っ張られながら、俺はレオに問いかける。
「いいんじゃないか? 言っただろう、これから世界は変わっていく。もう、名探偵が必要とされる機会もなくなっていく。せっかくの機会だ、楽しめばいい。お前は、名探偵が好きなんだろう?」
「まあ、そうだな」
正確にはミステリーが好きだ。俺の中にある、見ず知らずのミステリマニアの影響だけど、好きなのは確かだ。
「それに、これが最後だ。お前達と三人で何かするのは。悪くない」
呟くレオに、
「え、何、最後って?」
俺とレオの二人をずるずると引っ張りながら、キリオが振り向く。
「いや、俺もヴァンも忙しくなる。こうやって三人で何かするのは最後になるだろうと思ったんだ」
「いやいや、困るわよ。いずれ結婚式の司会、レオにやってもらうつもりだし」
「え、何それ」
何の話だ。
結婚式? 突然、話が飛びすぎだろ。
「お前達を祝福してやりたいのはやまやまだが、そもそも俺は公式には死んでいる。そんなことはできない」
「死んでるなら何とかして生き返ってよ」
あまりにも無茶を言いながら引っ張っていくキリオに、とうとうレオは黙って苦笑する。
俺も、黙って引っ張られることにする。
まあ、確かに、悪くない。
事件を三人で捜査するのも、名探偵をまだ続けるのも。それをしている途中に、レオの気が変わってキリオの言うように生き返るつもりになるかもしれない。
ふと、自分の記憶の元の持ち主について考える。
生き延びた後、彼はどうしたのだろう。探偵に復帰したのだろうか。それとも、別の仕事を探したのだろうか。
少しだけ申し訳なく思う。彼が憧れた名探偵役を、俺がやっている。
だが、その役をやって分かったことがある。名探偵も楽じゃあない。必要とされるからその役をする、ただそれだけだ。
そして、この世界でも名探偵の役割は終わりつつあるようだ。夢物語が生きていた時代が終わるんだろう。神の死と共に。それは、俺の学生時代からの望みでもあった。
ファンタジーが終わる。
「レオ」
「ん?」
「今度、ヴィクティー姫に会わせてくれよ。俺は、本物の姫に会ったことがないんだ」
「あ、私もよ、レオ」
「お前達、しばらく会わないうちに図々しくなったな」
レオが呆れ顔をする。
「俺は、歳相応になったんだよ」
今までずっと、前世の記憶があると思っていた。精神年齢がこちらの世界の実年齢に前世の分がプラスされると思い込んでいたんだ。
そこから解放された。
歳相応の、まだまだ俺は子どもみたいなものだ。少しわがままに、図々しくなったってバチはあたらない。
「そうだ」
小さく呟く。
両親に、甘えてみるのもいい。もう、俺には何の負い目もないんだ。
「どうしたの?」
キリオにその呟きを聞き取られ、
「ああ、いや、訊くのを忘れていた。どんな事件なんだ?」
もう、俺もレオも、キリオに引っ張られてはいるものの、自ら歩いている。
「そうそう、大変なのよ。七重の密室の中、大勢が見ている中で、博物館に収められていた銅像が消えるって事件で」
馬車が見えてくる。
「面白そうだ」
名探偵らしく、俺は余裕たっぷりに頷いてみせる。
これまではつらかった、名探偵役を演じるというのも、そろそろ慣れてきた。それに、これで最後かもしれないと思えば愛着も湧いてくる。
「頼むぞ、名探偵」
にやりと笑ったレオが軽く拳を胸に当ててくる。
衝撃で俺はよろけて、キリオと足が絡まってそのまま二人、転びそうになる。
できるだけ長くかかればいいのにな、と思う。
ここから目的地まで、あるいは、事件が終わるまで、そしてあるいは、名探偵が必要とされない時が来るまで。
いつか終わるのは分かっているけど、それでもそれまでの時間が楽しくて楽しくて仕方ない。
そんなことを思いながら、キリオと一緒に俺は転ぶ。転びながら思わず笑ってしまうが、すぐに慌てて名探偵らしく表情を整える。
了
いつもの後書きです。
くぅ~疲れましたw これにて完結です!
実は、ノブリスで推理小説っぽいとの感想をいただいたのが始まりでした
本当は話のネタなかったのですが←
ご厚意を無駄にするわけには行かないので転生のネタで挑んでみた所存ですw
以下、ヴァン達のみんなへのメッセジをどぞ
ヴァン「みんな、見てくれてありがとう
ちょっと推理に無理があるところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」
ボブ「いやーありがと!
僕のうざさは二十分に伝わったかな?」
キリオ「見てくれたのは嬉しいけどちょっとキャラの薄さが恥ずかしいわね・・・」
レオ「見てくれありがとな!
正直、作中で言った俺の説明は後付けだよ!」
怨公「・・・ありがと」グサッ
では、
ヴァン、ボブ、キリオ、レオ、怨公、カタザト「皆さんありがとうございました!」
終
ヴァン、ボブ、キリオ、レオ、怨公「って、なんでカタザトが!?
改めまして、ありがとうございました!」
本当の本当に終わり
ちゃんとしたのは、活動報告に載せます。




