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みんなを幸せにする武士になりたいだけなのに!(権力闘争がひどい)  作者: ワタツミ


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第44話「鎌倉入り」

引き続き拙作ではございますが、何卒お付き合いいただけますと幸いです。

 


 ――治承4年(1180年)十月 武蔵国 畠山重忠――



 馬上でただ前を見据えていた。

 背後に控える郎党たちの気配はいつになく重い。


 これから赴くのは源頼朝の元である。

 当初、挙兵に父は呼応せずむしろ敵方として参陣した。

 結果いち早く呼応した三浦家の当主を攻め、城を落とすと共に討ち死にさせてしまっている。


 母は三浦の出であったが、血の繋がりすら戦を止める理由にならない。

 当初は平家方についた当家であるが、坂東の潮目は明らかに変わっている。


 石橋山で敗れたはずの頼朝は

 北条、三浦、土肥を従え、一時は敗れた相模の大庭を破り武蔵まで迫っている。


「殿……。いかがなさいます」


 さらに東には頼朝の実弟が勢力を築いているという。

 平家に義理立てし続ければ、待つのは孤立だけだ。


(是非もない)


 付き従う郎党たちにに向き直る。


「頼朝殿のもとへ、参ろう」



 ――同日 武蔵国 頼朝方軍勢 源頼朝――



「畠山重忠が、帰参を願い出ておりまする」


 比企能員から届いた報せに静かに目を細める。


 畠山の武勇は、坂東でも指折りだと聞く。

 加われば、儂の軍勢は一段と厚みを増す。


 だが、儂の脳裏には別の懸念があった。


「三浦は、これをいかに思うかの」


「……義澄殿は何も仰せになっておりませぬ。

 ただ、酒も口にせず床几に座したままだと」


 父を殺された男と同輩となる。

 戦の世の習いだとしても、容易く呑み込める話ではない。


 だが今、坂東の武士たちを一つに束ねねば平家との戦いに勝ち目はない。

 私情を排し、大局を見よ。己に言い聞かせる。


「三浦義澄を呼べ」


 -----


 陣幕の中、義澄と対座した。


「畠山重忠が参陣を願い出ておる。……其方に否やはないか。」


 拳を握る手が微かに震えている。


「……頼朝殿。先立って、父は畠山の手勢によって討たれ申した。」


「知っておる」


「その上で、同じ陣で肩を並べよと」


「左様」


 義澄は血走った目を儂に向ける。



「義澄。

 ……儂の父・義朝もまた乱世の中で命を落とした。

 その死に様を、儂は幼き折に都で又聞きするしかなかった」


「……」


「憎しみだけで動けば、坂東はいつまでも寄せ集めのままぞ。武士が武士として

 都の駒でなく己が力でこの世を切り開くためには、私怨を越えねばならぬ場面が必ず来る」


「私怨、と仰せか」


「その一言で片付けよとは言うておらぬ。

 ……ただ、今この時、其方が畠山を討てば坂東はまた分かたれる。」


 しばしの沈黙が陣幕を満たす。


 やがて、義澄は絞り出すように呟く。


「……父ならば何と申されましょうな」


「儂には分からぬ。だが、其方が今なすべきことは見えておる」


 義澄は深く息を吐き、拳を解いた。


「……畠山の帰参、否やはございませぬ。」


「その方の心遣い嬉しく思う」




 ――同日夕刻 畠山重忠――



 三浦義澄との対面は、思いのほか静かなものだった。


 義澄は、儂の顔を一瞥し、ただ一言だけ告げた。


「……畠山殿。戦場でのことは武家の習い。それだけのことだと心得られよ」


「ありがたく存ずる」


 俺は思わず深く頭を垂れた。

 それ以上に交わす言葉はない。


 遅参であることに変わりはないのだ。

 頼朝の、他の武士の身を得るためにも励まねばと思った。



 ――同月 相模国 鎌倉 源頼朝――



 由比ガ浜から、鎌倉の地に足を踏み入れた。

 三方を山に囲まれ、南に海を望むこの土地は、守るに易く攻めるに難い。


 祖・頼義公がこの地に八幡宮を勧請して以来、源氏にとっては所縁深い場所でもある。


「殿……。まことに、この地に館を構えられるので」


 声の主は比企である。

 母が儂の乳母であったこの男は武蔵に所領を持っているが、相模での戦勝を機に馳せ参じていた。

 頷き、問いに答える。


「都から離れ、武士だけの府をこの地に築く。……それが儂の掲げる道である。」


 物同然の武士の扱いを変える。貴族に都合よく利用される理不尽を終わらせるためには

 武士自らが、武士のための府を打ち立てねばならない。


 源氏を頂き、統一された決まりのもと武士を束ねる。

 恩賞と忠節とを、確かな仕組みとして根付かせる。

 それこそが目指す第一歩である。


「殿。……下総からの使者にございます。」


 盛長の声に、儂は視線を上げた。


「義円からか」


「はい。……祝いの言葉と共に、常陸大掾討伐の仔細を報せに参られました。」


 弟は、着実に版図を広げている。

 常陸討伐も鮮やかな手並みであったという。


「使者を通せ」


 静かにそう命じた。

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― 新着の感想 ―
頼朝の元に参陣した連中は頼朝が嫡男故なのと地盤がいまだ弱いから義円よりは高く自分達を売りつけることが可能という判断はありそう。
元から頼朝陣営にいる者たちは分かるけど義円ではなく頼朝につく者たちの理由の違いはなんだろか。 畠山重忠は三浦義澄の父親をやってるのによく頼朝陣営選んだな? やっぱり嫡男だとか甘くはないから選んだのか?
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