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みんなを幸せにする武士になりたいだけなのに!(権力闘争がひどい)  作者: ワタツミ


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第28話「軍事整備」

引き続き拙作ではございますが、何卒お付き合いいただけますと幸いです。

 


 ――治承2年(1178年)春 上総国 義円――



 諸々の内政整備を進めていく上で、領内の実収は着実に増え始めている。

 目にみえる形で出始めた成果は、広常に付き従う豪族たちの態度を軟化させている。


 この半年の成果は、改めて覚書にまとめていた。

 湿地帯の排水が完了し、既に5町歩あまりの新田が開かれ始めている。

 検地の結果、これまで隠されていた田が正直に申告されるようになり、実収は三割近く増えていた。


(この調子でいけば、三年を待たずして、上総国全体の実収は大きく伸びるはずだ)


 その手応えと、増収の一部を元手に

 いよいよこの上総家の軍制そのものに、手を入れる時が来たと判断した。


「広常様……。次なる改革として、この上総家の軍勢そのものを作り変えたく存じます」


「作り変える、と申したか」


「これまで、当家いや多くの豪族たちは郎党それぞれが、自前の武具を持ち寄り

 統一された指揮系統がないまま、戦に臨んで参りました。

 ……それでは、統率の取れた、大きな力を発揮することができませぬ」


 続けて、この乱世の戦の在り方について

 これまで見聞きしてきたに現代知識を交えて丁寧に語る。


「一人一人の武勇に頼る戦い方には、限りがございます。

 統一された装備を持ち、統一された動きで戦う集団があれば

 その力は、個々の武勇の総和を、遥かに超えるものになりましょう」


 事実、鎌倉幕府成立後の承久の乱でも

 幕府側は十九騎での挙兵であったと言われる。

 統治システムの中に、直属軍という発想が存在しなかったため

 武家の棟梁たる征夷大将軍であっても御家人や豪族が味方をしなければ

 権力を保てないという極めて不安定な状態であったのである。


 俺がいるからには、そんな曖昧なものの上に統治は行わない。

 まずは上総介、ひいては自分の一声で手足のように動く常備軍を組織する。

 足並みを揃えて進軍する一個軍である。


 その構想の中核として、兵装の提案も重ねて行う。

 当時には存在しない長柄の槍を用いた、統一部隊の編成である。


「これより直に武具を支給し、統一の訓練を施す槍の部隊を、試験的に編成いたしたく存じます」


 その提案には、さすがに古参の武将たちの間から、戸惑いの声が上がった。


「義円様……。槍働きは、あくまで、太刀働きの補助にございましょう。

 それを、主力として据えるとは」


 この声は最もで、この時代の主な武器は第一に弓(または投石)、そして太刀である。


「太刀による一騎打ちは、確かに、武士の誉れにございます。

 ですが、いずれ、より大きな軍勢同士の戦いへと移っていけば

 敵の間合いの外から攻撃が出来る槍の集団こそが、戦の帰趨を決める確かな力になるはずです」


 そなおも懐疑的な様子の武将たちを前に、俺は一つの実演を提案した。


「百聞は一見に如かず、と申します。まずは、五○名ほどの兵で、試しにこの槍隊を編成してみましょう。

 一月の後、私の指揮のもと模擬での戦を行います。

 その働きを、実際にご覧いただければ、きっと、納得していただけるはずです」


 この試験的な部隊の編成は、将家に任せる。

 並みいる郎党たちの中では若年ではあるが、武勇だけは俺に負けじと鍛えた体躯と

 腹心として意図を汲み取るという意味では、他の誰よりも適任であった。



 将家は、その日から選び抜かれた五十名の兵と共に

 長柄槍を用いた新しい戦法の訓練に、日々明け暮れることになった。


「各々が好き勝手に槍を振るうんじゃねえ。

 ……皆で、同じ間合いで、同じ動きをするんだ!」


 将家の指導のもと、兵たちは最初こそ、ぎこちない動きしかできなかったが

 幾日も訓練を重ねるうちに、次第に統一された動きを身につけていった。


 一月あまりの訓練を経て、模擬戦を行う。


「かかれ!」


 将家の号令のもと、槍隊の兵たちは隊列を保ったまま

 一斉に、長柄槍を突き出しながら前進した。

 指揮は俺がとっているが難しいことは行わず、ただ隙間なく整列した一隊を前進させていく。


 若造に目にものを見せようといきり立った武者たちは

 隙なく統一された動きに、思うように間合いを詰めることができず

 次々と、槍の穂先に押し返されていった。


「な……!これは……!」


 その光景に、見物していた古参の武将たちが、驚きの声を上げた。


「一人一人の武勇では、確かに其方たちに分があろう。

 ……だが、この統一された槍の壁には、誇りたかき武勇をもってしても、容易には踏み込めぬ」


 その様子を見届けた広常は、深く頷いた。


「見事だ。……義円、そなたの言う通りよ」


 その称賛に、深く頭を下げた。


 模擬戦を見物していた時田為常もまた、この光景に深く感じ入った様子だった。


「私は若輩ゆえ、皆さまにお耳をお貸しいただけるか分かりませぬ

 為常殿には新しい戦い方を、他のお歴々にも広めていただきたく存じます」


「承知いたしました。……この目で見た以上、もはや疑う余地はございませぬ」


 この模擬戦の成功を受け、この槍隊の編成を上総家全体へと広げていく計画を、広常に提案した。


「まずは五〇〇の兵を、この槍隊として正式に編成いたしましょう。

 ……その装備は上総家が、一括して支給いたします。」


「五百もの兵の武具を一括で揃えるとなれば、相応の費えがかかろう」


「その費えは、先の試みより得られた蓄えから賄うことができまする。」


 その説明に、広常は深く納得した様子で頷いた。


「なるほど……。土地を豊かにすることと、軍を強くすることとはこうして繋がっているのだな」





 将家が、訓練を終えた兵たちを労いながら、俺のもとへかけてくる。


「義円様、俺の手並みはどうでしたかな」


「見事だったよ。……お前がいなければ、豪族連中は納得してくれなかっただろう」


 言葉を交わしながら乱世を変えていくには、俺一人の知恵だけでなく

 こうして、共に実現していく仲間の存在が、何よりも大切なのだと改めて実感していた。

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反乱とか争乱大丈夫かな。正しかろうと嫉妬し足引っ張ろうとしたりするのが人間社会。
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