第8話:お局と呼ばれた女の逆襲
第8話です。
隠されていた功績が白日の下にさらされ、凛さんが正当な尊敬を集める回です。
一之瀬くんの「外堀を埋める」技術は、もはや芸術の域に達しています。
加藤課長が人事部に連行されてから一週間。
営業事務二課の空気は、驚くほど一変していた。
「佐藤さん、いえ、凛課長代理! これ、以前教えていただいたマニュアルのおかげで、一時間で終わりました。……今まで、無茶振りばかり押し付けてすみませんでした!」
かつて私を『お局』と呼び、陰で避けていた若手社員たちが、次々と私のデスクにやってくる。
(ええええええ!? 何この「光の軍勢」みたいなキラキラした目は! 謝罪!? 私に謝罪してるの!? 怖い、逆に怖いわ! 昨日の夜、加藤課長の生霊がみんなに乗り移ったんじゃないでしょうね!?)
私の脳内は大パニックだが、表向きは「ええ、役に立ったなら良かったわ」とクールに応じるのが精一杯だ。
ふと視線を感じると、一之瀬くんが満足げに頷いていた。
「凛さん。……実は、課長が隠蔽していた『凛さんの功績リスト』を、全部署の共有掲示板に貼っておいたんです。読むのに『三秒』以上はかかりますけど、みんな納得したみたいですね」
「……一之瀬くん、またあなたなの!?」
彼は私が知らないうちに、私が過去十年間にフォローしてきた案件や、作成したテンプレートの数々をすべてデータ化し、数字として可視化していたのだ。
『佐藤凛がいたから、この部署は崩壊しなかった』。その事実が、全社に知れ渡った瞬間だった。
「これで、誰もあなたを『お局』なんて呼ばせません」
一之瀬くんは私の横に並び、周囲に聞こえるように言った。
「これからは、効率化で生まれた時間を『佐藤課長代理』に感謝する時間にあててください。……あ、それと。彼女への個人的な相談は僕を通してくださいね。彼女は、僕の専属アドバイザー(仮)でもあるので」
(専属!? いつから!? っていうかみんなの目が「ああ、お熱いですね」って生温かい目に変わってるじゃない! 仕事の評価が上がったのに、別の意味で居心地が悪いわよ!)
顔を真っ赤にして資料で顔を隠す私。
でも、心の中の重荷が、嘘のように軽くなっているのが分かった。
「凛さん。……ようやく、舞台は整いましたね」
一之瀬くんの瞳が、いたずらっぽく、そして熱く揺れた。
それは社内改革の終わりではなく、私個人への「攻勢」の始まりを告げていた。
お読みいただきありがとうございます!
「お局」という蔑称が「憧れのリーダー」に変わる瞬間、書いている私もスッキリしました。
一之瀬くんの独占欲もいよいよ隠さなくなってきましたね(笑)。
次回、第9話。ついに……残業のない夜、二人の関係に答えが出る……!?




