第7話:包囲網は3秒で完成する
第7話です。
無能上司の悪あがきを、一之瀬くんがデジタルの力で完膚なきまでに叩き潰します。
「3秒」が今度は、証拠の拡散速度として牙を剥きます。
「残念だよ、佐藤くん。まさか君が、一之瀬くんと共謀して経費を水増ししていたなんて」
月曜日の朝、会議室。加藤課長がこれ見よがしに「証拠」と称する書類をテーブルに叩きつけた。
周囲の役員たちの視線が、痛いほど私に突き刺さる。
(……きた、きたわよ! 昭和の刑事ドラマみたいな濡れ衣! 経費水増し!? 私の昼食、一之瀬くんに会う前までずっとコンビニの『値引きシール付きパン』だったのよ!? どこに水増しする要素があるっていうのよ!)
私が脳内で激しいツッコミを繰り広げていると、一之瀬くんが私の隣で、あくびを噛み殺しながら口を開いた。
「課長。その書類、僕たちが昨日の日曜日に会社へ忍び込んで作った……という設定ですか?」
「設定じゃない! ログが残っているんだよ、佐藤くんのIDでな!」
課長が勝ち誇ったように鼻を鳴らす。
しかし、一之瀬くんは冷ややかな微笑みを浮かべたまま、手元のタブレットを役員たちに向けた。
「そうですね。確かに佐藤さんのIDは動いていました。……課長の席にある、予備のPCから」
「な、何を……」
「僕、不審なアクセスを検知したら僕のスマホに通知が来るように『3秒』で設定しておいたんです。……ほら、これ。昨日の午後三時、防犯カメラに映る課長の姿と、佐藤さんのIDでログインした時間が完全に一致しています」
タブレットに映し出されたのは、誰もいないオフィスで、コソコソと私の席を物色し、自分のデスクに戻って何かを打ち込む課長の姿だった。
(……一之瀬くん、恐ろしい子! 防犯カメラまで連動させてたの!? 3秒設定って何!? 魔法使いを通り越して、もはや守護神じゃない!)
顔を真っ青にする課長を無視して、一之瀬くんはさらに追い打ちをかける。
「ちなみに、課長が過去三年間で行ってきた本当の経費不正利用のリストも、今の『3秒』で役員全員のメールアドレスに送信しておきました。……あ、もう届いたみたいですね」
役員たちのスマホが一斉に鳴り響く。
加藤課長の、終わりの始まりを告げる音だった。
「凛さん。……ゴミ掃除は終わりましたよ」
彼は私の耳元でそう囁くと、驚きで固まっている私の指を、机の下でそっと絡めてきた。
お読みいただきありがとうございます!
スカッと回でした! 悪いことはできないものですね(笑)。
一之瀬くんの「守護神」っぷりが止まりませんが、凛さんの脳内は相変わらずのパニック状態。
次回、第8話。会社から毒が消え、凛さんの立場が激変します!




