第4話:最後の「ざまぁ」は、披露宴で
結婚編、第4話です。
物語の元凶である加藤元課長との、本当の決着。
一之瀬くんの「事前の備え」が、最悪の空気を最高にスカッとする瞬間に変えてくれます。
披露宴会場は、祝福の光に包まれていた。
かつての部下たちや、今の同僚たちに囲まれ、私は夢のような時間を過ごしていた。
……けれど、そんな空気をぶち壊すように、会場の入り口が騒がしくなった。
「佐藤くん! 一之瀬くん! おめでとう……なんて、言いに来たわけじゃないぞ!」
そこに立っていたのは、ヨレヨレのスーツを着た加藤元課長だった。
再就職先でもトラブルを起こしたのか、以前の威圧感はなく、ただの惨めな酔っ払いに見える。
「君たちが僕を追い出したせいで、今の僕は……! この幸せそうな顔が気に入らないんだ!」
(……出たわね、妖怪・逆恨み! せっかくの最高級ステーキが、あなたの顔を見ただけで合成肉に見えてくるわよ! っていうか、よくセキュリティを突破できたわね!?)
私が脳内で毒づき、会場が凍りついた、その時。
隣に座っていた一之瀬くんが、優雅にナプキンを置いて立ち上がった。
「加藤さん。……三秒だけ、耳を貸してください」
彼は怯える加藤元課長に歩み寄り、冷徹なまでに美しい微笑みを浮かべて囁いた。
「あなたが今日ここに来ることは、三秒……いや、三ヶ月前から予測済みでした。……今、あなたの再就職先での不正の証拠と、ここへの不法侵入のログを警察に送信しました」
「な……っ!?」
「それと、あなたの奥様に『旦那様が披露宴をぶち壊しに来ている』と連絡を入れたのも僕です。……あ、ほら。三、二、一」
会場の外から、「あんた何やってるのよ!」という怒声が響く。加藤元課長の奥様が、恐ろしい形相で乱入し、彼の耳を引っ掴んだ。
(……一之瀬くん、恐ろしい子! 奥様まで味方……じゃなくて手駒にしてたの!? 三秒で「家庭崩壊」と「警察沙汰」を同時に進めるなんて、鬼よ! 愛すべき鬼だわ!)
「加藤さん。……僕たちの幸せに、あなたの居場所は一秒もありません。……永遠に、さようなら」
一之瀬くんの冷たい一言で、元課長は奥様に引きずられるようにして消えていった。
再び訪れる静寂。……そして、会場は割れんばかりの拍手に包まれた。
「凛さん。……お待たせしました。デザート、三秒以内に食べないと溶けちゃいますよ?」
彼は何事もなかったかのように私の隣に戻り、甘いソースのかかったケーキを私の口元に運んでくれた。
不快な過去は、すべて彼の「魔法」で消し去られた。
私の世界には今、彼と、甘い未来の味しか残っていなかった。
お読みいただきありがとうございます!
「ざまぁ」の最終形態は、相手を相手にしないこと。
一之瀬くんの徹底した管理能力(と少しの性格の悪さ)が光る回でした。
次回、新婚生活の朝、そして未来へと続く「三秒」の物語!




