相談3話:一之瀬くんの「鉄壁」と「隙」
相談編、第3話です。
後輩による特攻、そして一之瀬くんの「手のかかる人」発言。
自分がその「手のかかる人」だと自覚している凛さんの、恥ずかしさMAXな脳内をお楽しみください。
「……凛さん、聞いてください。一之瀬さん、やっぱり鉄壁すぎます!」
午後三時の休憩中。給湯室に逃げ込んだ私を追うように、マイちゃんがガックリと肩を落として入ってきた。
「どうしたの? 何かあった?」
「さっき、給湯室に彼がいたから、思い切って『今度、美味しいイタリアン見つけたので一緒に行きませんか?』って誘ったんです! そしたら……」
「そしたら?」
(脳内:ちょ、ちょっと待って! 一之瀬くん、なんて答えたの!? 『先約があります』? それとも『興味ありません』? 三秒でぶった斬ったの!?)
「『すみません。僕は、自分でお菓子をまともに開けられないような、手のかかる人の世話で忙しいので』って、爽やかに断られました……! 手のかかる人って誰ですか!? まさか、病気のご家族とか……!?」
(…………私だあああああああああ! それ、絶対、初日の私ことじゃない! あのお菓子の袋事件、そんな風に断り文句のネタに使ってるの!? っていうか『世話』って何よ、世話って!)
顔が熱くなるのを通り越して、耳の奥がカァッと熱い。
マイちゃんは「一之瀬さん、家族想いなんですね……ますます素敵です」と勝手に感動しているけれど、実態は「四十歳の彼女」の世話である。
「そ、そう……。一之瀬くん、責任感強いものね……」
「でも、凛さん。彼、断った後にちょっとだけ笑ったんです。すごく幸せそうな、見たこともないような柔らかい顔で……。あんな隙、私には一生見せてくれなさそうです」
(脳内:やめてえええ! その隙、昨日の夜に私の膝枕で寝落ちしてた時の顔じゃないでしょうね!? あの無防備な寝顔を思い出させないで! 給湯室で鼻血出して倒れるわよ!)
私が必死に壁と同化しようとしていると、噂の主がふらりと給湯室に現れた。
マイちゃんが慌てて「失礼します!」と飛び出していく。
二人きり。
彼はコーヒーメーカーのスイッチを入れると、私の隣に並んで、三秒だけ私の腰を指先でなぞった。
「……凛さん。さっき、面白い勧誘を受けましたよ」
「聞いてたわよ! 『手のかかる人』って何よ! ひどいじゃない!」
「ひどいですか? 僕にとっては、世界一甘くて、三秒も目が離せない最高のご褒美なんですけど」
彼は囁きながら、私の耳元に唇を寄せる。
「……今夜も、僕にたっぷりお世話されてくださいね。……ねえ、凛」
(ぎゃああああ! 名前呼び! 会社で呼び捨てに近い『凛』は反則よ! 私の理性、三秒で粉砕!)
お読みいただきありがとうございます!
一之瀬くん、断り方が確信犯すぎます。
後輩には「家族想いの美談」に聞こえ、凛さんには「最高の愛の言葉」に聞こえる……。
次回、第4話。女子会中に一之瀬くんが登場!? 絶体絶命のピンチです!




