相談2話:理想のタイプは「隣の席の彼」
相談編、第2話です。
後輩からの一之瀬くんへの称賛に、心の中で「知ってる!」と叫び続ける凛さん。
「鉄壁の男」を攻略したい後輩と、すでに攻略済みの凛さんの、奇妙な三角関係(?)の始まりです。
「凛さん、聞いてくださいよ。一之瀬さんって、実はすごく優しいんです!」
ランチのパスタを巻き取りながら、後輩のマイちゃんが熱っぽく語りだす。
私は「へぇ、そうなの?」と、さも初耳のような顔でサラダを口に運んだ。
(知ってるわよ! 私が残業でフラフラの時に、三秒で栄養ドリンクの蓋を開けて差し出してくれるくらいには優しいわよ! っていうか、その優しさに落ちたの私なんだから!)
「この前、私がコピー機で詰まってたら、『これ、三秒で直りますよ』って横からスッと助けてくれて。あの長い指と、ちょっと低い声……もう、耳が幸せでした!」
(……出た、三秒! 私の専売特許だと思ってたのに、誰にでも言ってるの!? いや、でも指は……指は確かに綺麗。昨日の夜、私の髪を掬い上げたのもその指……って、ああああ! ランチ中に思い出す内容じゃない!)
脳内パニックでフォークを落としそうになる私。
さらに後輩の攻撃は続く。
「しかも、一之瀬さんって全然隙がないじゃないですか。飲み会でも定時でも、誰にも私生活を見せない。……あんな鉄壁な男のプライベートを暴くのが、今の私の目標なんです!」
(暴くも何も、私の部屋のソファで、私の眼鏡をかけて『凛さん、これ度数強すぎですよ』って笑いながら寛いでるわよ! 鉄壁どころか、私の前ではただの甘えん坊な年下騎士よ!)
喉まで出かかったマウントを、私はお冷と一緒に飲み込んだ。
凛、落ち着け。私は四十歳の、落ち着いた上司。
ここで「彼は私のものよ」なんて言ったら、三秒で『パワハラお局、イケメンを独占』という怪文書が全社に回るわ。
「……一之瀬くんは、その、仕事に厳しい人だから。プライベートもきっと、ストイックなんじゃないかしら」
「そこがいいんですよ! あ、凛さん。一之瀬さんって、好きなタイプとか言ってませんでした? 同じ部署なら、何か聞いてるかなって」
キラキラした期待の眼差し。
……さあ、どうする佐藤凛。
ここで「仕事ができて、実は隙だらけで、自分を鼓舞しながら頑張ってる40代女性」なんて言えるわけないじゃない!
「……さあ、聞いたことないわね。でも、きっと……自分をしっかり持っている人が好きなんじゃないかしら」
精一杯の抽象論。
でもその時、食堂の入り口に一之瀬くんの姿が見えた。
彼は私と目が合うと、後輩たちには見えない角度で、三秒だけ――私に向かってウィンクをした。
(……ぎゃああああ! 心臓に悪い! 確信犯! あの男、絶対にこの状況を分かっててやってるわ!)
お読みいただきありがとうございます!
後輩女子の「一之瀬愛」が止まりません。
でも、彼女たちが「鉄壁」だと思っている壁の向こうにいるのは、凛さんだけの特権なんですよね。
次回、第3話。ついに後輩が一之瀬くんに突撃!? 凛さんの心臓はもつのか!




