相談1話:ランチタイムの抜き打ちテスト
新シリーズ「社内恋愛相談編」です!
社内改革が進み、平和になったオフィスに新たな嵐が。
後輩女子から「一之瀬くんの落とし方」を聞かれるという、凛さん最大のピンチです。
「……凛さん。ちょっと、ご相談があるんです」
お昼休み。給湯室でコーヒーを淹れていた私の背後から、若手女子社員の二人組が神妙な面持ちで声をかけてきた。
最近、部署の雰囲気が良くなったせいか、こうして後輩から頼られることも増えた。
「ええ、いいわよ。仕事のこと? それともキャリアプラン?」
「いえ……実は、社内恋愛についてなんです」
(……しゃ、社内恋愛!? 待って、その単語、今の私には劇薬すぎるわよ! ターゲットは誰!? 私の隣で涼しい顔してマクロ組んでるあの王子様じゃないわよね!?)
脳内で警報が鳴り響く。私は鉄の表情を維持しつつ、マグカップを握る手に力を込めた。
「社内恋愛ね。……節度を守れば、いいんじゃないかしら。仕事に支障が出ないならね」
「やっぱり凛さんは大人ですね! 実は、気になる人がいて……。すごく仕事ができて、スマートで、ちょっとミステリアスな年下の男性なんです」
(スマート、ミステリアス、年下……。ビンゴ! 役満よ! 逃げ場なし! 確実に一之瀬くんじゃない! 誰!? どこの部署の誰が私の彼を狙ってるの!?)
平静を装いつつ、私の脳内は「どうやって彼の魅力を否定せずに諦めさせるか」という超難問に3秒でフリーズした。
「そ、そう。……一之瀬くんのことかしら?」
「えっ、分かっちゃいました!? やっぱり凛さんも、彼のこと見てるんですね!」
(見てるどころか、昨日の夜、彼の家で一緒にパスタ食べたわよ! 私の眼鏡姿を『可愛い』って言わせたわよ! でも言えない、今の私のポストで『実は付き合ってます』なんて、3秒で社内ニュースのトップを飾っちゃうわ!)
「……一之瀬くんは、ほら、仕事熱心だから。恋愛には興味なさそうに見えるけど……」
「そこがいいんです! あの鉄壁な感じ、どうにかして崩したいんですよね。凛さん、上司として、彼を食事に誘う口実とかありませんか?」
無邪気な後輩の瞳。
私は、生まれて初めて「自分の有能さ」を恨んだ。
一之瀬くんの「鉄壁」を崩したのが自分だなんて、死んでも言えない――。
お読みいただきありがとうございます!
仕事は教えられても、恋人の落とし方は教えられない……凛さんの苦悩が始まります。
一方の一之瀬くんは、この状況を面白がっていそうですが(笑)。
次回、第2話。後輩が語る「一之瀬くんの魅力」に、凛さんが心の中でマウントを取る!?




