休日4話:銀ぶら(?)大作戦
休日編、第4話です。
一之瀬くんの私服パワー、恐るべし!
「お局」という呪縛から解き放たれ、一人の女性として街を楽しむ凛さんを描きます。
結局、一之瀬くんに押し切られる形で、私は数年ぶりに引っ張り出したワンピースを着て外出することになった。
待ち合わせた駅の改札前。私は自分の目を疑った。
(……誰、あのモデル!? 爽やかなネイビーのコートに、緩めのニット。雑誌から飛び出してきたようなイケメンが、待ち合わせ場所をランウェイに変えてるんだけど!?)
それは、まぎれもなく私服姿の一之瀬くんだった。
スーツの時の「デキる男」感も凄かったけれど、オフの彼は破壊力が倍増している。
「凛さん、お待たせしました。……その格好、すごく似合ってます」
「……ありがとう。でも、私なんかと並んで歩いたら、あなたまで『お局の買い物に付き合わされてる若手』に見えちゃうんじゃ……」
(脳内:実際そうよね! 私のこの、四十年物のヴィンテージ感が、彼の瑞々しい三十二歳感を損なってる気がしてならないわ!)
不安で視線を泳がせる私。すると、彼は迷わず私の手を、指を絡める『恋人繋ぎ』で握った。
「誰がそんなこと言いますか。……凛さんは今、世界で一番幸せそうな僕の恋人ですよ」
(ぎゃあああ! 恋人! 公衆の面前でパワーワードを放り投げないで! 私の心臓の効率化はどうなってるの!? 三秒でオーバーヒートよ!)
辿り着いたのは、華やかな銀座の街。
一之瀬くんは、慣れた手つきで私をエスコートし、一軒のセレクトショップへ入った。
そこで彼が手に取ったのは、控えめながらも気品のある、小さなヘアクリップ。
「これ、三秒で決めました。今の凛さんにぴったりです」
「えっ、高そうよ……ダメよ、こんなの」
「ダメじゃありません。僕と一緒にいる時、髪が揺れるのがもっと見たくなったので……強制的に、プレゼントさせてください」
(強制!? プレゼントを強制!? そんなの、全社畜の夢じゃない! もう、この子には一生勝てる気がしないわ……!)
彼が私の髪に、そのクリップをそっと留めてくれる。
鏡の中に映る私は、仕事に追われていた時とは別人のように、少しだけ誇らしげに笑っていた。
お読みいただきありがとうございます!
「銀ぶら」なんて言葉、令和の32歳は使わないかもしれませんが(笑)、凛さんの世代にはしっくりくる響きですよね。
一之瀬くんの「強制プレゼント」、愛の重さが伝わります。
次回、休日編最終話。日曜日の夜、二人はどんな時間を過ごすのでしょうか。




