最上の道
「ちょっオーナー、流石にあなたが出張る必要は」
「だって久しぶりの資格者なんだよ〜。たまには私が出張っても良いじゃん」
厨房から慌てて出てきたエルメスを尻目に、ココのオーナーであるアルメリアはどこからか取り出したジョッキにビールを入れて一気飲みする。
「サササ、積もる話もあるけどまずは料理を食べちゃいなよ。美味しいぞぉ!てかエルメスは早く飲み物用意してやりなよ!」
「申し訳ありません。コチラはセンジュ様のサラトガクーラー、コチラはハバキリ様の清酒、そしてA2様のビールとなります」
上手い。オーナーの動きに慌て蓋向きながらも、盛りこぼしの動作に迷いがなかった。
「すごいな、この時点で割と満足感高いぞ」
「お褒めに頂き光栄です」
うん、料理の方もどれも腕が良い。むしろ値段に対して少し量が多めではないかと思えてしまうくらいに量があった。あとチゲがホントに激辛で、最強と付くのが納得いった。
「じゃあそろそろ資格者たる君たち2人に話をしようか」
エルメスに怒られながらも、俺たちの料理をちょいちょい摘んでいたアルメリアが話を切り出す。
「ソレもそうだな。さっき至闘の道とか言っていたけど、ソレが俺たちに持ち掛けるものか?」
「まあソウダネ〜。厳密には至闘士って言う最強の職へ就ける機会だよ」
ソレを聞いてガタッとA2が反応する。
「至闘士ってウィズダムサイトが探してイル隠し最上位職業ではアリマセンか!まさかドラゴンスレイヤーでナケレば入れないモノだとは」
オーウアイツらから追われるネタが増えちったぞ。
「では私の方から至闘士について説明いたしましょう」
至闘士とは隠し最上位職業兼称号とのことだ。この世の最強種たる龍種の一体でも、倒すことのできるもの達に与えられる称号であり、更なる道を行く職業へと昇華されるものである。
「この職でしか受けられない依頼とかもあるしお得だよー」
実際のところ、俺は戦うだけならば職業に就く必要がないと思っている。リアルの技術で十全に戦えるが故に、スキルを使用するつもりがない。だが、このゲームで職業に就くと言うことは、ある種の社会的地位を持つことになる。至闘士でしか受けられない依頼というのは、そういう類なのだ。
「ウーンまあなるのは良いんだけど」
「実際どうしたらなれるでゴザルか?」
職業システムって基本的にソレ用のギルドがあり、そこでなるための試練を受けて初めてなれるようになる。
俺たちがキャラメイクをしている時に選べる職業は無所属扱いの職業であり、厳密には職業に就いていない扱いになる。
「フッフーン簡単なことさ!龍を討った証を見せてくれればいい」
ナルホド証ねー。
そう言われてすぐさま武器を振るった。
「おっと!ハハッ血気盛んだがよくわかっているじゃあないか」
龍を討った証?んなもん実力以外に何があるってんだ。
「まあ一応得物はコレでいいでしょ」
「ホウ、ソレって」
「見たところホライドラスターの鱗などを使った武器ですか。確かにそれだけでも証足り得ましょうね。しかし戦うのであれば一度カウンターから離れてはもらえないでしょうか」
………………
「「確かに」」
「何やってんのあんたら」
イヤアルメリアとかいうやつ割と強そうなのよ。
「お酒割ったら流石に私がキレてたねー。あと2対1なのはイヤなので、エルメス君も戦ってくれい」
「かしこまりました」
「とイウことで始まりマシタハバキリ&ミストハイドVSアルメリア&エルメス。実況の司会を務めマスはワタクシA2。解説にはレア・レーベン君にキリ君のファミリアのセンジュ君が担当とナリマス」
「なんでいきなり実況しちゃってるのよ」
「え、ええっと不束者ですがよろしく?お願いします」
「イウところ間違えてマスよセンジュ君。さあ両者向かい合いました」
「向こうは盛り上がってるなー」
「じゃあこっちも盛り上げるでゴザル」
刀と手裏剣。自身の得物を構えた2人の先に立つのは
「ウーン若いって良いねえ。お姉さん張り切っちゃうぞー」
「いや貴女私よりも、いえこれ以上はよしておきましょう」
二丁拳銃を携えたバニーガールとトンファーを構えたバーテンダー。
両者とも構え、あたりが静寂に包まれる。
カウントダウンも無ければ、号令が鳴ったわけでもない。
しかし互いが互いに何を感じてか、ほぼ同時に飛び出した。




