表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第24章 豊編
748/768

兄離れ

~族長執務室~

12月になり、今夜は本家で一族の宴会がある。

龍空の新妻のお披露目を兼ねているが、龍希の関心は宴会の翌日の妻たちのお茶会にあった。


そこで芙蓉は他の妻たちにお揃いの香水をプレゼントするとの噂は本家の使用人だけでなく妻たちにも広がっているらしい。


芙蓉たちの私物を盗み、裏庭の温室に捨てた犯人が動くなら今夜しかないが・・・



コンコン



「失礼します。」


やって来たのは龍算だ。

こいつは妻が居ないので、今日も午前中から本家に来ている。



「族長、ご相談が」


「なんだ?香水瓶に動きがあったか?」


「いえ、全く別の件です。竜礼とワシの縁談はどうなりましたか?」



「え?ああ、竜礼はその気がないと言うから断ったよ。」



あれは3日くらい前だったか?

竜礼自ら縁談を断りたいと龍希に頼んできたのだ。

てっきり龍算は知っているものだと思っていた。



「理由はお聞きになりました?」


「その気がないと聞いたけど、どうした?」


「いえ、俺には何も相談してくれなかったので・・・」


龍算は落ち込んでいるので龍希は驚いていた。



「そうなのか!?兄妹喧嘩でもしてんのか?」


「してませんよ。なのに、竜礼が急に、もう縁談も誕生プレゼントも要らないと言い出して・・・」


龍算はショックを受けているが、龍希は呆れた。



「お前らいくつよ!?プレゼントなんてもう要らんだろ!?」



「何言ってるんですか!?俺が祝わなきゃ誰が竜礼の誕生を祝うんですか!?」


「いや、どうし・・・ああ。」


龍希は言いかけて思い出した。

そういえば、龍算たちの父親は娘の竜礼を産まれて早々に育児放棄したんだった。

 子の養育を守番に任せるのは普通だが、龍算の父は露骨に竜礼を毛嫌いしていたそうで、龍算たちが成長しても自分の巣に呼び戻すことはなかったらしい。



「親離れならぬ兄離れしたってことだろ、いいことじゃねえか。妹の心配より、自分の縁談を気にしろよ。」



「縁談は探してもらってますけど、俺のことはいいんです。それよりも竜礼の新しい縁談を・・・」


「あいつはもう要らないとさ。お前の縁談はセンスがねえって文句言ってたぞ。」


「は!?え!?いや、まだ40すぎたばかりですよ!縁談ならいくらでも用意できます!!」


龍算は大袈裟なほど驚いているので、これも知らなかったらしい。



「竜礼本人が希望してないんだ。無理に嫁がせる必要もないだろ!?相談役として忙しいしな。」


「いや、そんな・・・独身じゃ年寄連中がうるさいですし・・・」


「気にしないだろ?あいつは。」


「族長はいいんですか?」


「構わん。あいつは嫁がせたところでどうせすぐ離婚するしな。」


「竜礼のせいではないですよ!夫が暗殺されたり、離婚を申し出てきたりが続いただけです!」


龍算はなぜか怒るけど、


「でも竜礼自身も毎回離婚を喜んでるだろ?

あいつが離婚するよう仕向けてるって聞いたぞ。」


「仕向けてませんよ!竜礼は去る者を追うことはしないだけです!」


「あ~あいつはそういうタイプだな。てか、竜礼から聞いてないのか?」



「う・・・『もう私にはお節介焼かなくていい』としか言われなくて・・・なんか急に冷たくなったんですよ。

なにかしたかなぁ?したんだろうなぁ・・・俺が。」



龍算は見たこともないほど落ち込んでいる。



「別にいつもどおりだったぞ?」


竜礼は朝一番に宴会の打合せに来ていたが、変わったところはなかった。



「今年の誕生プレゼントがダメだったのかなあ!?似合うと思ったのに。でも、竜礼はいつもなら好みじゃないと笑ってくれるのに、今年は何も言ってくれない。嫌われたのかなあ。」


「いや、妻じゃねえんだから・・・」



なぜ龍算はこんなにも妹を気にかけてるんだ?




コンコン



「失礼します」


今度は龍緑がやって来た。


「ん?ずいぶん早いな!?」


「急用で届けに参りました。妻子はまだ睡蓮亭ですので、迎えに戻ります。」


龍緑は早口で報告して手紙を龍希に渡すと、すぐに執務室を出て行った。



「何事ですか?」


落ち込んでいた龍算も、龍緑の急用の手紙が気になるようだ。


龍希は手紙を開いたが、


「こんなタイミングでかよ!?」


思わずため息が出た。




~リュウカの部屋~

芙蓉が宴会の身支度をしているところに、夫と竜礼がやって来たけど、芙蓉は思わず竜礼を二度見した。


今日の竜礼はワインレッドのレースドレスを着ている。似合ってはいるけど、これまでの宴会の格好とは全く違うので、ものすごく違和感がある。



「奥様~お支度中に申し訳ございません~」


竜礼の話し方はいつもどおりだ。


「いえ、何事ですか?」


支度中に夫たちが来るなんてよほどのことだ。

まさか香水瓶の罠にかかったのだろうか?



「トモエから芙蓉に会って相談したいことがあると手紙が来てな。解放軍が芙蓉の父親と、ユリの息子の警固をしてることをカラス族が嗅ぎ付けて、接触してきたらしい。」



「え!?」


夫が予想外の話をしてきた。


「それにジュウゴが水連町にいる解放軍の襲撃を始めたらしい。」


「そんな!?父は?結太君は!?」


芙蓉はショックのあまり手の力が抜け、化粧パフを落とした。



「二人は無事だそうだ。昼過ぎに龍算にトモエを迎えに行かせた。今は別荘にいるけど、面会は明日のお茶会後にしてくれないか?

トモエはジュウゴの間者を捕まえたそうで、そいつから先に事情を聞いておきたい。」



「わ、分かりました。来ているのは巴衛だけですか?」


芙蓉はすぐにでも巴衛と話したいけど、族長妻としての務めを放棄する訳にはいかないし、三輪たちと計画した香水瓶の罠もあるのだ。



「ああ。他に呼びたいやつがいるなら、連れてこさせるぞ。」


「いえ、大丈夫です。ごめんなさい、宴会の前なのに私のせいで・・・」


「策士の残党はうちの一族も追ってるんだ。芙蓉が気にすることじゃない。明日のトモエとの面会には俺と竜礼、龍緑も同席させてくれ。」


夫は優しく微笑んで芙蓉を慰めてくれる。



「ユリにも同席するかきいてもらえますか?

結太君の安全にかかわるなら私一人では決められないかも・・・」


「分かった。竜礼、宴会の後に龍景とユリに伝えに行け。」


「畏まりました、族長。龍景は反対できないはずですわ~妻の家族の警固に関わることですので。」



~宴会場~


それから一時間後、芙蓉は夫と子どもたちと宴会場に入った。


今日も一族は勢揃い・・・かと思いきや、龍海と龍栄は居ない。


龍栄は妻のカモミールを失ったばかりだから仕方ない。

竜縁と龍応は2人で席に座っているけど、龍応は二足形の姿で大人しく異母姉の隣に座っている。


竜縁はかつて姉弟仲を心配していたけど、久々に見た龍応は笑顔で竜縁になにか話しかけている。



それよりも龍海の欠席は珍しいというか、初めてかもしれない。

何かあったのだろうか?



芙蓉たちが席につき、宴会が始まった。

龍空の白鳥妻は乾杯早々に退席して行ったけど、もう芙蓉には見慣れた光景だ。


妻たちは今夜の宴会も、明日のお茶会も全員参加の予定だ。

明日のお茶会で、芙蓉から熊族の最高級香水をもらえるとの噂が広がっているらしいけど・・・窃盗犯は今夜動くのだろうか?


芙蓉は宴会よりも香水瓶が気になって仕方ない。

三輪がまだ侍女だった10年近く前から本家に窃盗犯はずっといるのだろうか?


睡蓮亭と朝顔亭にも盗みに入ったのだろうか?

それとも仲間もいる?



芙蓉を狙っているのはジュウゴだけではないらしい。

族長妻の暗殺は珍しくないそうだし、最近では龍空の前妻狐も誰かに暗殺された疑いがあるそうだ。


芙蓉も死の前日まで狐妻に会っていたのに、本家の医務室で警固されていたはずなのに、狐妻は誰にどうやって殺されたのだろう?



ここ本家は安全な場所じゃないのだ。

先代族長の熊妻には護衛を兼ねた熊の侍女が常にそばにいたらしい。

今も人以外の妻は同族の侍女たちを連れてきていて、アイーダの侍女の中には、三輪を殺そうとした白鳥族のスパイも居た。



「母上?」


龍陽に呼ばれて芙蓉は我に返った。


「え?なあに?」


「大丈夫?体調悪い?」


龍陽だけでなく、娘も心配そうに芙蓉を見ている。



「大丈夫よ。考え事してたの。」


芙蓉はあわてて笑顔を作った。



「そう?ぼくらは母上の味方だからね。」


「ありがとう。頼りにしてるわ。」


芙蓉には強い夫に頼れる子どもたちもいる。

本家に刺客が居ても大丈夫だ。


芙蓉は自分に言い聞かせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ