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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第24章 豊編
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肉体と魂

「誰ならできるんだ?」


龍希は嫌な予感がしながらも質問した。


「・・・紫竜一族は象妻の治療をお求めで?夫竜は不在のようですけど。」


朱鳳族長ははぐらかした。


「龍栄から依頼したら受けるのか?」


「条件次第ですな。魂を戻せる方の協力も必要になる。」


「龍栄が戻ったら改めて協議をしよう。

この件はこれで終わりか?」


「まさか。ストールの秘密を知った獣人たちがいるでしょう?」


朱鳳族長はまた険しい顔になった。



「ああ。とりあえずうちの別荘にいる。ワニの子はそちらに引き渡してもいいぞ。」


「要りません。紫竜が責任をとるべきです。」


「・・・藍亀に獣人の記憶に干渉できる雌がいる。獣人からストールの記憶を奪えれば問題ないだろ?」



龍希の提案に朱鳳族長は初めて驚いた顔になった。


「その獣人に、貴殿の妻も入っていますよね?」


「・・・ああ。妻は口外しないと言っても、お前らは納得しないだろ?」


龍希は苦渋の決断だ。

藍亀の(まじな)いは得体が知れないが、妻の命を守るにはほかに方法がないのだ。



「随分と物分かりがよくなられた。賢い奥様のおかげですな。」


朱鳳族長はいつもの嫌味な顔に戻った。


「余計なお世話だ。」



「藍亀への報酬は紫竜の負担ですよね?」

鳳雁が尋ねてきた。


「ああ。でかい貸しがあるからな。」


少なくとも龍希とその次の族長時代はどんな依頼も藍亀は無償で受ける約束だ。

雄竜の命がけの仕事の対価だからこれでも安いくらいだ。



「ああ。そうでしたな。」

鳳雁は納得したようだ。


「さて、では後は鳳雁に任せよう。」


そう言って朱鳳族長は立ち上がったので、龍希は驚いた。



「待て!これで話は終わりか?」


「ええ。まだなにか?」


「・・・いや。」


最低でも族長交代を要求してくると思っていたのに、朱鳳族長は本当に大樹に戻って行った。



「やれやれ。藍亀の仕事が終わるまでは竜の巣ですか。」


鳳雁はため息をついているだけで、これ以上何かを求めるつもりもなさそうだ。



「龍緑、客間に案内してやれ。」


龍希は龍緑に命じて鳳雁を会議場から追い出した。




「どういうことだ?朱鳳は何を企んでる?」


龍希の問に答えるものは居なかった。

皆、呆気にとられた顔になっている。


族長引退は不可避だろうと皆が信じていたのだ。



「後から更なる要求をするつもりでしょうか?」


「いや、それはない。朱鳳族長自ら話を終わらせたのだ。」


龍海が否定した。


「話を整理しましょう。ストールの秘密を獣人に知られた件は藍亀の呪いで解決できるなら朱鳳もそれで良し。族長妻のストールを象妻に使った件は、象妻のタマシイを呼び戻すための協力も朱鳳はする・・・としても、わが一族による落とし前は?朱鳳は何も求めて来なかった?」


龍賢が話をまとめてくれたが、龍希もまだ信じられない。



「ん~龍希の妻を朱鳳が取引に巻き込んだ件と相殺ということではないのか?」



父がすごいことを言い出した。


「え!?そんなこと言ってました?」


「儂にはそう聞こえた。鳳雁はどうしても妻の作る解毒剤が欲しいのだろう?」


「そんな話はしてましたけど、それは元々俺との取引だから、と言ってましたよ。」


「そんな取引は無効だ。妻を朱鳳との取引に巻き込むのは本来許されぬ。だが、夫のお前が取引の継続を許したから朱鳳族長は手をうつことにしたんじゃないのか?」


「ええ!?いや、さすがに釣り合いが・・・」

龍希は信じられない。



「いいえ、龍峰殿の言うとおりかもしれません。朱鳳・・・鳳雁が族長妻を利用するなんて、どんな手段を使ってもできないことです。」


「いや、あれは妻が望んでいるから仕方なく・・・」


「理由はどうあれ、朱鳳としても妻たちを取引に巻き込み、妻たちが死にかけたことは軽視はしていないのでしょう。

鳳雁と朱鳳族長だけが来たのも、これ以上騒ぎを大きくしたくないからかもしれません。」


龍海の言葉に、頷くものは多い。



「そうなの?え?俺は引退しなくていいのか?」


龍希は拍子抜けだ。



「朱鳳はむしろ困るんじゃないか?お前が族長でなくなったら妻はどうする?」


「どうもしませんよ。妻は死ぬまで俺のそばにいます。」


父の指摘に龍希はムッとなった。


「族長妻でなくなれば、取引先の獣人たちを利用して解毒剤を作らせることは難しくなりますよ~族長妻だから皆が芙蓉ちゃんの顔色を伺っているのです。」


竜礼が補足する。



「なんで鳳雁はここまでして解毒剤を欲しがるんだ?」


龍希は訳が分からない。



「鳥族でよほどの被害が出ているのでしょうか?いや、そうだとしても介入しすぎでは?」


「うちのせいにしていましたけど、あの時は龍風様たちの守番にも支障が出て大変だったのですよ!

解毒剤の開発にどれほど苦労したか!族長妻の助力も必要でしたけど、私たちもかなりの手間と労力をかけてます!」


竜紗が怒り出したが、龍希も同感だ。

ワニの毒で龍賢たちまで寝てしまい、一族にも大きな被害が出たのだ。



「落ち着け。なんにせよ朱鳳との話はついたのだ。今は龍栄様の妻だ。」


龍賢がなだめ、会場は静かになった。


「龍栄様は明日の夕方にはお戻りになれそうです。」


「竜紗、先程の話を詳しく教えてくれ。タマシイとは何だ?」


「私も詳しくは知らないのですが、獣人はタマシイと肉体でできており、タマシイは目には見えないそうです。獣人はタマシイが肉体を離れると死ぬそうです。」


「今は妻のタマシイが肉体から離れかけているという話だったな。そして朱鳳ではタマシイを戻せないと。」


「龍栄様がお戻りになってから、タマシイ戻しを依頼するのか?誰に?間に合うのか?」


「落ち着・・・」



コンコン



龍緑がようやく戻ってきたが、疲れた顔だ。


「遅くなりました。」


「遅かったな。何かあったのか?」


「はい。鳳雁のおしゃべりに付き合わされてました。」


やはり龍緑では鳳雁に対抗できなかったようだ。

普段なら龍海に相手をさせるが、今回は龍海は会場に残して置きたかったのだ。



「無駄話か?」


「私には判断がつきません。族長妻と龍栄様の妻はどのくらい仲がいいのか?だの、龍栄様の妻が命がけで族長妻を助けたのはなぜか?だの質問責めにされました。」


「は?あいつは何がしたいんだ?」


「分かりません。私の手には負えません。」


「龍緑ご苦労。次からは龍海に相手させる。」


「はい。」



「皆もご苦労だった。もう解散でいいか?」


「族長、連れてきた獣人はしばらくは別荘に?」

龍海が尋ねてきた。


「ああ。ちょうどユリの息子たちが居なくなって空いてるからな。」


「承知しました。」


「人族は解放軍ですよね?本家には連れて来ませんよね?」

今度は龍景だ。


「ああ。解放軍は本家には入れん。藍亀が来たら別荘に向かわせる。」


「承知しました。」

龍景はほっとした顔だ。


「じゃあ解散。」


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