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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第24章 豊編
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約束違反 

翌日の午後、龍景は旅行先から本家に戻ってきた。


昨晩、赤手紙を受け取ったけど、さすがに寝ている息子をたたき起こして、妻に徹夜をさせて深夜に出発するわけにはいかないので、朝早めに起きて鶴族領を発った。

 食事休憩をとりながらも急いで帰ってきたので、妻子は疲れて馬車の中で寝てしまった。


本当は今日1日鶴族領で過ごして、明日にのんびりと朝顔亭に戻るつもりだったのに、何事だろうか?



ガチャリ



本家に到着して、執事が馬車のドアを開けた音で寝ていた妻は目を覚ました。


「ついた?」


「ああ。ユリたちは朝顔亭に戻っててくれ。」


領景はそう言って一人で馬車から降りたけど、なんと龍算が出迎えたので驚いた。



「え!?いつお帰りに?」


龍算は族長のお供としてワニ族領に行っていたはずなのに!?



「今だ。明日の朝には族長たちも戻る。」


龍算は言い終わらないうちに龍景を引っ張って族長代理執務室に連れていった。



~族長代理執務室~

龍景が龍算に連れられて入ると、族長代理の龍海、龍灯、龍緑、父、竜礼と竜紗がすでに来ていたけど、雰囲気が重苦しい。



「遅くなりました。」


「龍景、家族旅行中にすまん。龍算、詳しい話を頼む。」


どうやら緊急事態は龍算側で起きていたらしい。

族長たちは出発前からワニを警戒していたけど、案の定、トラブルだろうか?



「実は・・・」



龍算の報告は龍景の予想を超えていた。

龍栄の妻が瀕死なことも一大事だけど、それ以上に朱鳳との約束違反がヤバイ!



朱鳳のストールやスカーフに獣人を癒す力があることは、獣人たちにはトップシークレットなのだ。

それに、ストールは贈られた妻にしか使用しないというのが紫竜と朱鳳の取決めだ。


朱鳳はストールを贈る妻を選ぶ。

どんな基準で選んでいるのかは知らないけど、鳥族でもないのにストールを贈られたのは龍希様の妻のみだ。



族長と龍栄は2つのタブーを破ったのだから鳳雁は怒ったのだろう。

双方の一族を巻き込んだ大問題に発展していることは間違いない。



「族長たちはいつ戻る?」


龍海も父も皆が真っ青な顔になっている。


「族長夫妻は明日には。龍栄様は意識のない妻を護送しているのでもう少し時間がかかります。」


どうやら龍算は徹夜で飛んで帰ってきたらしい。

族長夫妻もかなりの強行軍で帰ってきているようだ。



「族長が戻ったらすぐに一族会議だ。朱鳳は龍栄様の帰りを待つとは限らん。明日にでも大樹から族長代理たちが飛んでくるかもしれない。」


朱鳳担当の龍海が言うならその可能性が高い。



「龍算様は本家でお休みください。明日また会議で報告をお願いします。」


父に促されて龍算は出ていった。

疲労困憊なのは明らかだったけど、父の懸念はそれだけではないだろう。



「朱鳳は何を要求してくる?」


「金では済まんでしょう。族長交代は避けられないかと・・・」


父の問に答えた龍海は悔しそうだ。



「ストールの秘密を知った族長妻はどうなる?」


「朱鳳は口封じはできん。わが一族で後始末をつけろと要求してくるだろう。」



「・・・」

龍景は言葉が出ない。


ストールの秘密を知った獣人を生かしておくことを朱鳳は許さないだろう。

とはいえ朱鳳は族長妻に手を出せない。

わずかでも殺気を出せば、龍希様は迷わず朱鳳を殺すはずだ。


とはいえ、紫竜一族にどうしろと?

龍希様を離婚させて妻を殺すのか?


そんなことをすれば、龍希様の子どもたちは?

龍景の妻だってそんなことは許さないだろう。

龍緑の妻もだ。


ぶちギレた妻に離婚されたらどうしよう!?


龍景にとっても一大事だ。



それに族長の後任は?


龍栄様は無理だ。

今回の責任をとって龍希様ともども引退は避けられない。

なら龍算か?

龍灯には相変わらず息子がいないし、龍光か龍算の二択なら力の差で龍算になるけど、けど、龍算には無理だろ!


族長の器ではないのだ。頼りなさすぎる!

とはいえ他には居ない。



「同席していた龍算様まで責任を問われるか?」


父が問いかける。


「分からんが、その要求は飲めん。龍灯には息子が居ないのだ。後任にはできん。」


龍海たちも同じことを考えているようだ。

まあ、龍灯に息子がいたところで龍算と大差ないけど。



「ここで話し合って解決策のでる話ではないな。会議の準備を急ごう。」


父の促しで、龍景は会議の招集に動いた。




~一角獣の馬車~


その頃、豊はなぜか龍希の空飛ぶ馬車に乗っていた。

やはり豊も解放してもらえなかった。

あのタンチョウの上司?ホウガンと話がつくまでは紫竜の監視下に置かれるらしい。


龍サンは紫竜本家に知らせるためにすぐにどこかに行き、龍エイは意識の戻らない象妻で手一杯なので、龍希が豊とワニの子を連れて紫竜本家に帰ることになったらしいが・・・


機嫌の悪い龍希は怖い


だけど、かなりましになった。

芙蓉のおかげだ。



ワニの子はともかく豊が芙蓉のそばにいるのが気にくわないようで、龍希はずっと怖い顔で豊をにらんでいたのだが、芙蓉に怒られてからは、龍希はヘタクソな営業スマイル?を顔に張り付けて、芙蓉からの問いかけに豊が答えるのは許したらしい。



不思議なことに、夫婦の力関係は芙蓉が上のようだ。

しかし、芙蓉は話してみると、性格がキツイ感じはなく、上品で控えめな女性だ。



やはり彼女は水連町の水人の娘らしい。

象族領で出会った水人の孫は、龍希と芙蓉の息子だそうだ。



芙蓉は司令官と仲がよいらしく、そのおかげで豊を警戒することもなく、芙蓉は身の上を教えてくれた。

だけど、龍希とのなれそめだけは話題にしなかった。

どう考えてもまともな縁談ではないのだろうし、龍希の前で詮索もできないので、豊は何もきかなかった。



龍希はずっと芙蓉の横に座って密着しているけど、芙蓉が嫌がっている様子はない。

まあ、芙蓉が嫌がっていても今の豊にできることはないけど、芙蓉が龍希を前に愛想笑いしているわけでもないので、龍希のことを受け入れているのかもしれない。



アーストは、芙蓉のことを龍希と添い遂げる覚悟を持った妻だと言っていた。

だから、シュホウは鳥族でもないのに芙蓉に特別な贈り物をしたのだとも。


アーストの言っていた特別な贈り物が、あのストールなんだろうけど、この話もできない。

あの光る不思議なストールのせいで、豊は今まさに監禁されているのだから。



それにしても、芙蓉はどうやらシュホウにも気に入られているらしい。

芙蓉からワニの宿で誘拐された後の話を聞くと、概ね豊の推理どおりだったけど、地底湖の三叉路で芙蓉たちを右の道に案内して、隠し扉を教えたのは、あのタンチョウだったらしい。


芙蓉は増水する縦穴で、象妻に地上に向かって投げられたものの、地上にはわずかに届かず、必死で地上に手を伸ばした時に、その手を掴んで地上に引き揚げたのもタンチョウだったそうだ。

 すでに地面にはワニが倒れていたそうなので、芙蓉たちを待ち伏せしていたワニをタンチョウが倒したのだろう。


とはいえ、さすがのタンチョウも水に沈んだ象を引き揚げることはできず、芙蓉が泣いていると、先に地下水脈を泳いで逃げていたワニの子が泣き声を聞き付けてやって来たらしい。

ワニの子は自分の3倍近くでかい象を抱えて泳いであがってきたというから驚きだ。

 やはり水中のワニには敵わない。



ワニの子はテンという名前らしい。

親を知らない混血獣人で、物心ついた時からワニの兄が面倒をみてくれたそうだ。


テンはワニの兄を慕っているようだけど、おそらく実の兄妹ではない。

10番(テン)という名からして実験のために研究所に買われた混血獣人で、【兄】は世話係といったところだろう。


幸か不幸か研究所が事実上閉鎖されても、テンは雑用係として生かされたようだ。

雌の混血獣人には需要があるので成獣するまで生かされることは珍しくない。



「テンにききたいことがあるんだ。」


「なに?ユタカ?」


ワニの子は龍希には怯えているけど、芙蓉と豊とは会話をしてくれる。


「雄の人族が来たことはあったかい?」


「あるよ。サクシの部下なら。」


「日に焼けた中年男か?」


「ヒニヤケタってなに?ユタカよりは年とってたよ。」


「肌が茶色じゃなかった?」


「あ!うん。ユタカたちよりも茶色だった。」


「やっぱりな。」



豊は何年もジュウゴの監視役をしていたけど、毒の研究中はそばを離れていたので、毒やガスを開発する現場は見たことがない。

ジュウゴは毒の材料探しに度々、ワニ族領を訪れていたし、策士の部下ワニもよくジュウゴのところに来て毒の開発を手伝っていた。


芙蓉の言うとおり、ジュウゴが開発したと言っていた毒やガスは実はワニの発明品だった可能性が高い。



「解放軍は知っていたのか?」

龍希も会話に入ってきた。


「いいえ。ジュウゴが開発したと思っていました。とはいえ、ジュウゴ一人で毒やガスを作っていた訳ではなくワニなどの策士の部下とも協力していましたので、実はワニの研究所で開発されたと聞いても驚きはしないです。」


「兄さんたちは?ワニの発明品なのに!?」


テンはショックを受けている。

どうやらこの子は何も知らされていなかったらしい。



「ねえ、豊さん?解放軍に毒の資料を渡せば解毒剤の開発をできますか?」


今度は芙蓉が尋ねてきた。

芙蓉と象妻は解毒剤開発のために命がけで毒の資料を持ち出してきたらしい。



「残念ながら今の解放軍には無理です。その手の研究なら北の貴族の研究所が一番可能性がありますね。南の貴族も研究はしていますが、北の貴族ほどの実績はありません。」



「そう・・・」


芙蓉はなにやら考え込んでしまった。

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