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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第23章 ジュウゴ編
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タンチョウの正体

~地底湖の穴~


「なんだ?」


龍サンに連れられて豊にもようやく地上が見えてきた頃、龍サンが上空を見上げて眉をしかめた。


豊が視線を辿ると・・・上空をタンチョウの獣人が飛んでいる。

旋回しているようだ。



「あ!あのタンチョウ!?」


「なんだ?知り合いか?」


「違います!さっき地底湖で追いかけられたんです!お三方が地下室に降りた後に!」


「なんだと!?ワニの手先か?」


龍サンが睨むと、タンチョウはどこかに飛んで行った。

ワニの指示で豊たちの帰還を確認しにきたのだろうか?




「芙蓉!?」


すると突然、下から龍希の悲鳴?が聞こえた。


豊が下を見ると、龍希が猛スピードで登ってくる。



「なんですか?フヨウ?」


「族長の奥様の匂いだ!まさか本当に自力で脱出してたのか?」


龍サンは驚愕しているけど、豊も驚いた。



妻が自力で脱出していたことも、龍希の妻がヨウコではなくフヨウという名であることにも。

 フヨウは珍しい名前だけど、水人の娘は芙蓉という名だった。



豊が地上に降ろされるのと同時に龍希も追い上げてきて地上に出てきた。



すぐ近くの地面に女性が一人座り込んでいた。

ドレスはびしょ濡れなのに、肩からかけた深紅のストールはなぜか濡れていない。

不思議と目を惹くストールだ。



「芙蓉!!」


龍希はまっすぐ女性に飛んでいって地面に跪き、女性を抱き締めた。


彼女が、龍希の妻、解放軍が長年探していたヨウコこと芙蓉で間違いない。



彼女のそばにはワニの獣人が2匹倒れている。

タンチョウは見当たらない。

けど、象の妻もいない。




「あ、あなた!カモミールさんが!」


芙蓉は泣いている声だ。

龍希の両袖を掴んで何か訴えている。


「落ち着け!無事でよかった。象妻はどこだ?」


龍希は信じられないほど優しい声だ。

あの龍希が地面に跪いていることも信じられないが、こんなに優しい声と話し方ができることにも驚きだ。



「私のせいで!水に落ちて!」


芙蓉は泣きながらそばの直径2メートルほどの穴を指差した。

今にも水が溢れてきそうな穴だけど・・・



「は!?」


豊は真っ青になった。

この穴から芙蓉は地上に出てきたのか?

そして象の妻は間に合わなかった?



ダダダ



豊のそばにいた龍サンが穴に向かって走る。

象を探しに行くつもりだろうか?


いや、いくら潜水できても象の獣人を抱えてあがってくるのは無理じゃね!?



龍サンが穴に飛び込もうとしたまさにその時、水面が揺れた。


「ん?」



ザバン



水音をたてて、何かが浮き上がってきた!?



「カモミール!?」


豊の背後から悲鳴が聞こえた。

悲鳴の主は龍エイだ。


龍エイは穴に飛んで行って、片手で水に浮いた生き物を引っ張りあげた。

引き上げられたのは大きな象の獣人だ。

ドレスを着ているので彼女が象妻のようだ。

カモミールという名らしい。



象は自力で浮上してきたのだろうか!?

すげぇ


豊は関心して象の顔を見たが、まぶたは閉じたままで象は動かない。

胸を見ると、動いていない!?

呼吸が止まっている。



「カモミールさん!?呼吸が!?」


芙蓉が悲鳴をあげて象に駆け寄ろうとする。


「芙蓉、ストールを貸せ!」


こんな時なのに、龍希は芙蓉から深紅のストールを剥ぎ取った。



「おい!何を!?」


豊は思わず龍希を怒鳴りかけて息を飲んだ。


龍希が奪った深紅のストールがなんと光り出したのだ!



「龍栄殿!」


龍希は光るストールを龍栄に投げた。


「族長!感謝します!」

龍エイは受け取るなり、象妻の身体にストールをかけた。



こいつらは何をしてるんだ?


豊がじっと見ていると、ストールの光が象妻に広がり、なんと象妻の身体も深紅に光り出したので、豊は驚きで声も出ない。


芙蓉も驚いた顔で光るストールを凝視しているけど、ストールは彼女の持ち物じゃないのか?



「・・・ご、ごほごほ」


なんと象が息を吹きかえした。



「ええ!?象が生き返った!?」



子どもの叫び声が聞こえた。

いつの間にか芙蓉の背後にワニの子がいる。



「まだ生き残りがいたのか?」


龍希はワニの子に手を伸ばした。

始末する気なのだろう。



「ま、待って!」


なんと芙蓉が両手を広げてワニの子を庇い、龍希の前に立ち塞がった。


「芙蓉!?どうした?」

龍希も驚いている。



「違うの!この子がカモミールさんを助けてくれたの!」



「え!?」


「ええ!?」


豊は龍希と同時に驚いた。


「どういうことだ?こいつは誘拐ワニの仲間じゃないのか?」


「違うわ。」


芙蓉ははっきり否定したけど、当のワニは龍希に怯えて腰をぬかしている。



「おい!お前は妻たちを誘拐したワニの仲間か?」


龍希はワニの子に直接尋ねることにしたようだ。


「ゆうかいなんて知りません。」


ワニの子も否定したが、龍希が反応しないので嘘ではないらしい。


「ならなんでここにいる?」


「ここ?そっちの人族がリュウキが来るからにげろって言って・・・外に出てきたら、ここでないてたからぞうをつれてきたの。」


ワニは怯えながら答えているが、目の前にいるのが、その龍希だとは分かってないらしい。



「誰に断って俺の名前を呼んでんだ!?」



龍希がキレた。


「あなた!子どもになんて顔するの!」


芙蓉もキレた!?


「え!?あ!ごめん!」


なんと龍希が慌てた顔で謝った!?



豊は目の前の光景が信じられない。

龍希は二重人格か、そっくりな誰かと入れ替わったのかと疑うレベルだ。


それに芙蓉の龍希に対する態度も想像と全く違う。

竜の巣に監禁された非力な娘だなんて誰が言い出したのだろう?


あの龍希を怒鳴り付けるほどの気の強い女じゃないか!!



「ごめんね、倉庫番さん。」


芙蓉は謝る龍希を無視してワニの子に微笑みかけているけど、ワニの子は困惑した顔で芙蓉と龍希を交互に見ている。


「え?え?なに?」


「えっと、その名前はここでは言っちゃダメなの。」


「わ、分かった。もう言わない。」


ワニの子は驚くほど素直だ。


「いい子ね。カモミールさんを助けてくれてありがとう。」


「ど、どういたしまして!ないてる女をみすてたら兄さんにおこられるからね。」


ワニの子は意外にも紳士っぽい。



「あ!そうだわ!あなたにまた会えたら渡そうと思ってたの。」


芙蓉は背中の風呂敷を降ろして開いた。

中にはファイルが入っているみたいだけど、芙蓉が取り出したのはコインのペンダント?



「あ!兄さんの!?」


ワニの子は驚いている。


「下で拾ったの。お兄さんの落とし物かしら?あなたに渡すわね。」


芙蓉はワニの子にペンダントを手渡した。

下で、ということはこのワニの子の兄は象に殺されたワニのどれかということだろうか?


ワニの子は両手でペンダントを受け取った。


 

「兄?死んでたワニか?」


龍希は子ども相手でも遠慮がない。


「え!?死んでた!?」


ワニの子はショックをうけている。


「違うわ。この子のお兄さんは何年も帰ってきていないんですって。この子は私たちの誘拐には関係ないわ。カモミールさんを助けてくれた恩もあるから、このまま逃がしてあげて。」


「え?まあ妻の頼みなら。」


龍希はあっさり応じた。

族長妻の誘拐事件なのに、そんな簡単に解放していいのか?

と豊は思うけど、声には出せない。



「さ、もう行きなさい。お兄さんが見つかるといいわね。」


「え?う、うん!」


ワニの子が立ち上がって逃げようとした時だった。



「困りますなあ」



突然、頭上から男の声が響いた。

豊が見上げると、



なんとタンチョウの獣人が頭上にいた!



あのタンチョウ・・・のはずだけど、何か雰囲気が違う気がする。


あの目のせいだ。


タンチョウの目はなぜか深紅に光っている。

それに今の声は明らかに男だったけど、このタンチョウは雌だ。



「やっぱりお前の手先か。鳳雁」



龍希は驚いていない。

けど、ホウガンとは誰だ?



「ルール違反ですよ、紫竜族長。そのストールは人族妻に贈ったものだ。」



タンチョウことホウガンが困っているのはあの光るストールのことらしい。


「あ!?龍栄の妻まで巻き込んだのはお前だろ?貴重な花嫁を失うとこだったんだぞ?」


龍希は怒った顔でタンチョウを怒鳴るが、タンチョウは全く動じない。



「心外だな。妻を連れてきたのは夫竜の判断だ。妻を守るのは夫竜の仕事だろ?なのに、なんで1/3を外すんだ?」



「は!?1/3!?何の話だよ?」


龍希は分かっていないが、豊は察した。

地底湖の3本道のことだ。芙蓉たちは右の道の先に居たのだ。

つまり・・・龍希の見落としだ。



「やれやれ。これは私の個人的な取引では済まなくなった。結論が出るまでそこの獣人たちは紫竜の責任で捕まえておいて下さいよ。」



タンチョウは龍希の返事を待たずに飛び去ったが、なにやら怖いことを言っていた気がする。

「獣人たち」に豊は入ってないよな!?



「ちっ!」

龍希は渋い顔だ。反論しなかったところを見ると、心当たりがあるようだ。



「あなた?このワニの子は・・・」

芙蓉は不安げだ。


「悪いが、朱鳳と話がつくまで解放できなくなった。龍算、執事たちを呼んでこい!本家に戻るぞ。」


「はい。」


龍サンはどこかに飛んでいった。

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― 新着の感想 ―
綱渡りだったけど成果だけ見れば犠牲もいないし大勝利かな 桃の入水だけは…唐突で本当に死んでるのかちょっと信じられないけど
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