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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第6章 望郷編
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竜湖の脅し

「はあ!?人違いだと?」

龍希は拍子抜けしていた。


 タンチョウ領で捕えた人族たちは、妻の素性を知っているようなので、竜湖と2人で訊問していたのだが、

8匹とも妻のことは知らず、宿近くで殺した人族の長女と勘違いしたとぬかしてやがる。

バカな嘘をつくなと言いたいが、悪意を感じないのでどうやら嘘ではないらしい。

 妻の素性を一族に知られるわけにはいかないのだ。だから、女たちの反対を押しきって龍希が訊問を担当することにしたのに・・・とんだ時間の無駄だった


「がっかりだわ。やっと芙蓉ちゃんのことを知ってる人族を見つけたと思ったのに~」竜湖は疲れた顔になって、椅子に座ると天井を仰ぎ見る。



「にしても、不思議ねぇ。8匹ともあんたと子どもたちを人族と見間違えたっていうのよ。」

ギクッ

「寒さで鼻がきかなかったんでしょう。ただでさえ人族は鼻が弱いので」龍希は焦った。

「にしたって、姿を見ても分かんないなんて・・・信じられない。」

「・・・」

竜湖に睨まれて龍希は無言で目をそらす。


 だから、竜湖も同席させたくなかったのに!

龍希1人ではダメだと女たちだけでなく補佐官全員に反対されては・・・

竜湖が一番ましというか、万一バレても黙っててくれそうだったけど、やっぱ気づいたか?


「あんたが正直に言うなら、一族には隠しといてあげる。」

「な、何をですか?」

「ずーと疑問だったのよ。あんたが芙蓉ちゃんにどうやって手をつけて巣まで連れて帰ってきたのかって。力ずくで襲うなんて、あんたがするはずないし、賢い芙蓉ちゃんを騙せるはずもないしって思ってたけど。」

「俺は襲っても、騙してもないですよ。そんなことしたら芙蓉が大人しく俺の巣にきてくれる訳ないでしょう?」

「ふーん。じゃあどうやって口説き落としたの?芙蓉ちゃんは紫竜のことを知らなかったけど、あんたをどんな生き物だと思ってたのかしら?」

「俺を人族と勘違いしてはいませんよ。疾風が側に居ましたし、枇杷亭を人族の巣と勘違いするはずないでしょう?」

「そうなのよねー。でもあんたが最初に手をつけた時はどうだったの?枇杷亭の外だったんでしょ?」

ギクッ

「・・・」

「龍希、どこ見てるの?私はこっちよ。」


「変な言いがかりは困りますよ。俺は人族のふりをしたことなんてないです。そんなことして初対面の芙蓉に手をつける理由もありませんし。」

「人族のふりなんて必要ないんじゃない。何もしなくても、勝手に向こうが同族と勘違いしてくれるなら。昨日みたいに。それに、あんたは実家のない妻を探してたじゃない。」

「いや、あんな人族との区別もつかないバカどもと賢い俺の妻を一緒にしないでください。それに、芙蓉がもし俺を同族と勘違いしてたなら、勘違いがわかった後に俺と夫婦を続ける理由がないですよ。

人族は異種族との婚姻を嫌悪してるんですから。」

「う・・・そうなのよねー。勘違いで結婚したとなると、あんたに悪意や敵意を持ってないとおかしいのに・・・芙蓉ちゃんからは感じないのよねー。枇杷亭で初めて会った時からそう。」

竜湖は両腕を組んで悩み始めた。


セーフ



「あ!そーだわ。」竜湖がふいに立ち上がった。

「な、何です?」龍希はまた焦った。

「人族のことは人族にきけばいいのよ。」

竜湖はそう言って悪い笑みを浮かべると、壁際に鎖で繋いでいる人族たちの方に歩いていく。

「ねぇ。」

「ひっ」

「あんたらの中に商人の娘はいない?」

雌は3匹いるが、その中の1匹に他の2匹の視線が向けられる。あとの5匹は拷問途中に死んでしまったというか自殺しやがった。

「あんたはそうなの?」

「ひっ!は、はい。お、親はか、商人でした。せ、戦争でもう家族も実家もな、なくなりましたが。」顔と右肩から血を流している人族の雌は震えながら答えている。

「ねぇ。商人の娘って婚前交渉は普通なの?」

「は、はい?」

「婚・前・交・渉。結婚前に男と子作りすること。」


「え?い、いえ。しょ、商人の娘は親が結婚相手を決めますので、こ、婚前交渉なんてしません。」


「ふーん。その親が死んで働いてる娘だったらどう?」

「え?お、親が死んで?し、親戚に引き取られて、その店で働いていたなら親戚が縁談を持ってきますので、しないです。」

「ふーん。じゃあ初対面の商人とその場で縁談が決まることってあるの?」

「え?え?しょ、初対面で縁談?」

「そ。余計なことは考えなくていいの。思ったことを喋りなさい。上手にできたら、あんたへの拷問は終わりにしてあげる。」

「わ、私は聞いたことがないです。縁談のめ、メリットがあるか分からないですから。」

「なるほどねぇ。実の娘じゃなくてもそう?」

「え?は、はい。あ、で、でも・・・」

「なに?」


「あ、あの・・・せ、戦争で困窮した商人は、じ、実の娘ですら売り払ってたので、え、縁談ではな、ないですが。な、中には売りはしなくてもむ、娘にば、売春をさせていたや、やつも・・・」


「バイシュン?なあにそれ?」

「え?お、男から金をもらって、む、娘にその男と、その、一夜を過ごさせるのです。」

「一夜を過ごした後は?男に嫁がせたりする?」


「え?ば、売春している娘を嫁に欲しがる男はいないです。」


「仮の話よ。もし男が結納金支払うから娘をくれって言ったら?」

「え?え?あ、相手の男の素性と、金額次第ではないかと・・・」

「相手の男の素性が分からないとどうなの?」

「そ、その、じ、人身売買や売春がバレては大変ですから、す、素性の分からない男にはと、嫁がせないです。」

「ジンジンバイバイってなーに?」

「え?ひ、人を金銭で売り買いすることです。ひ、人の法律では違法です。人相手なら最低でも20年の禁錮刑、じ、獣人相手なら死刑一択です。だ、だからいくら金銭的に困っていても素性の知れない男には、は、発覚の危険があるので売らないはずです。」

「なるほどねー。」

竜湖はがっかりしている。



「伯母様、もういいですか?時間の無駄です。始末しましょう。」

冷や汗をかいてやり取りを見ていた龍希は、竜湖に声をかけた。

「え?急いで殺す必要ないでしょ?特にこの雌は、買った奴らと違ってなかなかお喋り上手だし。」

「前のワシのように逃げ出されては大変です。脱走を手引きした獣人がワシかどうか分からないんですし。」

「うーん、まぁねぇ。」

「族長命令です。この場で始末します。人族は油断なりません。」

「うーん、この雌だけ私にくださいな。私が全責任をもちま・・・」

「ダメです!」龍希は食いぎみに拒否した。


この雌だけはダメだ。これ以上喋らせてなるものか!

人族の売春のことを竜湖に教えるなんて!くそ!



「えーなんでです?族長が困るようなお話をしまして?」

「そんなわけないでしょう。到底信じられない内容ばかりです。生かしておく価値がない。」

「ふーん。ねぇ、族長。この雌を私に下さるなら、こいつから聞いた話は一族には内緒にしますわよ。」

「え?」

「どうされます?」竜湖は嫌な笑顔で問いかけてくる。

「な、なんでその雌にこだわるんです?」

「商人の娘なんてまず買えないじゃないですか。希少価値ですわ。だから私に下さいな。こいつから聞いた話は、族長にだけ共有すると約束しますわ。」

「う~。絶対に俺の妻子に近づけないで下さいよ。てか存在自体教えないでください。」龍希は折れた。

『竜湖の口止めの方が重要だ。』


「ありがとうございます。さ、あんたはどうする?私の言うこと聞くなら、生かしておいてあげるし、獣人とつがわせたりはしないわよ。」竜湖は目の前の雌ににこりと笑いかける。

「ど、奴隷になれってこと?」

「そゆこと。拒否するなら一緒に殺すわよ。」竜湖はそう言うと机の上に置いていた長剣を手に持って他の2匹を始末した。

雌は目の前で同族が殺されていく様子を目を見開いて見ている。

「さ。残ったのはあなただけ。剣で刺されて死にたくないでしょ?私に従うならここから出して、服を着せて食べ物をあげるわ。反抗しない限り拷問もしないし。」

「じ、冗談じゃないわ!人外に飼われるなんてまっぴらよ!」

驚いたことに人族の敵意が今までで一番強くなった。


なんで?


「はー残念。」

竜湖は無表情になって剣を振り下ろした。


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