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この校舎は既に閉鎖されています。  作者: トランス☆ミル
ゲーム

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17/19

Day15 開放

 明け方。僕は静かに目を覚ました。


「……朝か」


 薄暗い教室の天井を見上げながら、小さく呟く。


 眠れなかった訳じゃない。


 だけど、深く眠れた気もしなかった。


 今日で終わる。その事実だけが、ずっと頭の片隅にあったからだ。


 窓の外に広がるのは、相変わらず淡く明るい虚無。


 僕はゆっくりと身体を起こす。


 Day0。あの日、この校舎へ閉じ込められた。


 そして気づけば、もう16日目。


 生き残ったのは、たった6人。


「……起きてたのか」


 隣から声が聞こえる。


 岩倉は、眠そうに目を擦りながら起き上がる。


「まぁね。興奮して眠れなかったよ」


「そりゃそうか」


 岩倉は苦笑いする。


 いつもの軽い笑顔。


 だけど、その奥には緊張が見えた。


「ついに最後だな」


「そうだね」


 今日という日を迎えるために、今まで幾つもの試練を乗り越えてきた。


 そして今日、全てに終止符が打たれる。


 そんな思いが頭をよぎった。


 やがて、反対側の布団から桐谷も身体を起こす。


「……おはよう」


「おはよう。桐谷さん」


「おはよう」


 いつもの挨拶。


 だが、多分これが最後になる。そんな予感があった。


 桐谷は窓の外を見つめながら、小さく息を吐く。


「終わるのね」


「うん」


「長かったわ」


 その言葉に、僕と岩倉は小さく笑った。


 実際には、現実時間で1週間程度しか経っていない。


 だけど、体感では数ヶ月は過ぎた気がする。


「終わり……か」


 もう、このゲームは終わる――そう思うと、不意に胸の奥が少しだけ痛んだ。


 解放されるはずなのに。待ち望んでいたはずなのに。


 どうしてか、少しだけ寂しかった。


 その感情に気づいて、僕はそっと苦笑した。



◇◇◇◇◇◇



〔――Day15。朝になりました。本日は『ARMAGEDDON』最終目です。〕



【Day15/ARMAGEDDON:朝】(06:00:00〜06:59:59)



 朝。合成音声が響いた。


 教室の空気が、わずかに張り詰める。


 僕たちは誰も言葉を発さず、黒板へ視線を向ける。

 

〔それでは、第三競技を発表します。第三競技:『KODOKU』。〕

 

「……蠱毒こどくか」


 僕は思わずそう呟いた。


 岩倉が首を傾げる。


「コドク? なんだそれ」


「呪術の一種よ」


 答えたのは桐谷だった。


 桐谷は黒板を見つめながら続ける。


「壺の中に大量の毒虫を入れて殺し合わせ、最後に生き残った一匹を呪物にする儀式……確か、そんな意味だったはず」


「うわ、最悪な名前……だけど、今の状況にピッタリだな」


 岩倉が顔をしかめる。


 最後まで生き残った者だけが勝者。それ以外は全て敗者。


 まさに、このゲームそのものだった。


「そうなると、ルールは――」


 岩倉がそこまで言った瞬間、黒板に新たなルールが表示されていく。

 


【第三競技:KODOKU】

 


【ルール】


・全プレイヤーにライフ3を付与。


・HPが0になるとライフが1減少する。


・ライフが0になったプレイヤーは脱落(脱落者はメインアリーナへ転送される)。


・グループ全員が脱落した時点で敗北。


・プレイヤーがライフを失う度、そのグループの残存メンバー全員をランダム地点へ転送する。


・制限時間は5時間(昼終了まで)。


・グループメンバーとの距離制限は20m。


・制限時間以内に終わらなかった場合、人数差、ライフ差での決着となる(全く同率の場合は延長)。


・アイテムはランダムスポーン。


・フィールドは本校舎全域。


・無敵期間保有者は一度だけ攻撃を無効化可能。



「やはりバトロワか……」


 岩倉が呟く。


「アルマゲドンの無敵の継続ルールってこのためだったのか。となると、今無敵を持ってるのは、俺、北村さん、越宮くんの3人が確定で、Day12で三上さんが殺人鬼だったから、いてもあと1人か」


 続けて岩倉は、黒板を眺めながら静かに分析した。


「無敵は実質ライフ4ってわけね」


「無敵の有無は、作戦を立てる上で大きな要素だな……」


 そんな話をしていると、第六がこちらへ歩み寄ってくる。


 そして、北村が口を開いた。


「越宮くん」


「ん?」


「最後まで楽しもう」


 穏やかな声だった。


 敵意も裏もない。純粋な言葉


 僕は思わず笑った。


「ハハッ、もちろん」


「すぐに、やられないでくれよな」


 岩倉も笑みを浮かべてそう返す。


「フッ、それはお前たち次第かな」


 その煽りに、池田は小さく微笑みながら言う。


 これが最後。これで終わり。


 僕たちは互いに微笑み合いながら、運命の時を静かに待った。



◇◇◇◇◇◇



〔昼になりました。第三競技『KODOKU』を開始します。〕



【Day15/ARMAGEDDON:昼】(07:00:00〜11:59:59)



【05:00:00】



 昼。僕たちは競技開始と同時に、校舎内のランダム地点へ転移させられた。


「ここは――」


 僕は周囲を見回す。


 見覚えのある場所。4階、生徒会室と資料室前の廊下だった。


「4階の端……幸い、死角は少ないわね」


 桐谷が呟く。


「そうだな」


 岩倉も周囲を警戒しながらうなずいた。

 

 やがて、僕たちは慎重に進み出す。


 武器を確保するため、教室を一つ一つ確認しながら索敵を続けた。


 そして――


「ナイフか。とりあえず、武器ゲットだな」


 4階の講義室で武器を発見した。


 近距離武器では心許ないが、無いよりは幾分かマシだ。


「できるだけ早めに相手の持ち手を把握したいところだな。猶予を与えると、それだけ相手が銃やグレネードなどのハイティア武器を獲得する可能性が高くなる」


「そうね。4階にはいないようだから、ポジションは私たちが有利だわ」


 僕たちは状況を整理しながら、その後も作戦を立てつつ足音も気配も消し、慎重に移動した。



◇◇◇◇◇◇



 そうして、校内を進むこと十数分。


 3階東廊下の窓から、中庭を挟んで2階南側の教室に入っていく第六グループの姿を発見した。


「いた! 教室の中なら好都合。奇襲を仕掛けられる!」


 岩倉はそれを見るなり、駆け出そうとする。


「待って、岩倉くん」


 そんな岩倉を、僕は制止した。


「なんでだ? 俺たちだけが相手の居場所を把握できている今、仕掛ける絶好のチャンスじゃないのか?」


「いや。まだ相手の居場所を把握できていない状態で、中庭越しに丸見えな南廊下にいることは不自然だ。もしかしたら、第六は既に俺たちの居場所を知って……誘っているのか? トラップなんかもあるかもしれない」


 僕は思考に思考を重ね、ブツブツと考察を述べる。


「僕たちを欺くための作戦が――」


「零」


 だが、そんな中、桐谷が僕の肩にポンと手を乗せた。


 僕はそれで冷静さを取り戻す。


「少し考えすぎよ。第六は適応してると言っても、知能まで上がっている訳ではないのよ。零や高杉くんが別格なだけで、そこまで深読みする必要ないと思うわ」


 優しい声。


 確かに、このチャンスを逃す手はない。


 リスクのない選択はない。だからこそ、賭けが成立する。


「ごめん。そうだよね。Day8の賭けに比べたら、ビビる必要なんてないか……よし、行こう」


 そうして、僕たちは南階段を静かに降りて、第六グループを狙った。


 第六グループがいる教室は、南階段のすぐ隣。


 僕たちは、階段の陰に身を潜める。

 

 扉までは数メートルほど。

 

「頼んだよ」


 僕が小声で言う。


「あぁ」


 岩倉は短くうなずいた。


 やがて、


 ――ガラガラ


 と、手前の教室の扉が開く。


 最初に出てきたのは池田だった。


 その瞬間、岩倉が飛び出す。


 一直線。迷いのない突撃。


 完全な不意打ちだった。


「な――!」


 池田が目を見開く。


 岩倉のナイフが、そのまま胸元へ突き込まれる。


 だが――


 ――バチィッ!!


 青白い光と共にナイフは見えない壁に阻まれ、弾き返される。


「クソッ、やっぱ持ってんのか」


 無敵。恐らく、Day12の時の偽装者。


「チッ」


 池田の表情が、一瞬険しくなる。


 しかし、池田は怯むことなく、岩倉のがら空きの胴体にナイフを突き刺した。


 だが再び――


 ――バチィッ!!


 閃光。青白い火花。


 今度は岩倉の身体を包むように光が広がった。


「……なるほど」


 全てを悟った声。池田が思わず笑う。


「悪いな」


 岩倉も笑みを浮かべ、一気に踏み込んだ。


 ――ザシュッ!


 ナイフが池田の胸に突き刺さる。


 ナイフを引き抜くと、池田がその場に倒れ込んだ。息はない。


 その直後。第六グループ全員の身体が青白く発光した。


 ライフ減少による強制転移。


「流石だね」


 北村が静かに口を開く。


 光が第六グループ全体を包み込む。


 そして次の瞬間、3人の姿は跡形もなく消えていた。


 静寂。残されたのは僕たちだけ。


「まさか、向こうも持ってるとはな……焦ったぜ。無敵も失ってしまった」


 岩倉は肩で息をしながら苦笑いした。


「でも、結果的にはこっちの勝ちだ」


 僕は少し表情を緩めてそう声をかける。


 それから、おもむろに端末を見た。



〖第三グループ:♥♥♥♥♥♥♥♥♥〗


〖第六グループ:♥♥♥♥♥♥♥♥♡〗



 たった一つ。されど大きな一つ。


 真の最終決戦は、第三グループが先手を取る形で始まったのだった。



◇◇◇◇◇◇



 池田のライフを削ってからしばらく。


 僕たちは無理に追撃せず、慎重に校舎内を移動していた。


 相手の居場所は分からない。


 こちらが有利とはいえ、ライフ差はたった一つ。


 たった一度の失敗で簡単にひっくり返る程度の差だ。


「とりあえず、武器を集めよう」


 僕がそう言うと、2人もうなずく。


 その後、僕たちは教室や特別教室を回りながらアイテムを回収していった。


「……なんか、武器の質、上がってないか?」


 そんな中、1階の教室で見つけた拳銃を手に取りながら、岩倉が呟く。


 序盤はナイフやメリケンサックのような、近距離武器ばかりだった。


 だが今は違う。


 拳銃。グレネード。


 そして――


「これは……探知機?」


 桐谷が小さく首を傾げる。


 手のひらサイズの電子機器。


 電源を入れると、円形のレーダーのような画面が表示された。


「便利そうね」


「うん。だけど、相手も同じような物を拾ってる可能性は高い」


 時間が経つほど、スポーンするアイテムのティアが上がっている。


(いずれ、大規模な戦闘が発生するな……)


 僕はそう考えながら、廊下を進んで行った。


 そうして、お互いの干渉がないまま約20分が経過した。


 僕たちは3階南廊下を、窓より姿勢を低くして進む。


 静かだ。静かすぎる。


 足音一つ聞こえない。


「ハイドでもしてるのか?」


 岩倉が小声で呟く。


「向こうも慎重になってるんでしょうね」


 桐谷も周囲を警戒していた。


 だが、その時だった。


 ――ピッ


 探知機が小さく反応した。画面の端に光点が現れる。


「ッ!」


 僕は即座に足を止めた。


「いる」


「どこだ?」


「恐らく、図書館付近」


 距離は分からない。だが確実にいる。


 岩倉が拳銃を握りしめ、桐谷は息を潜める。


 廊下の先。曲がり角の向こう。


 そこにいる。そう確信した。


「待ち伏せする?」


 桐谷が尋ねる。


「いや――」


 しかし、僕が口を開いた、その瞬間だった。


 ――カランカラン


 何かが転がってくる。小さな円筒。


「まず――」


 そう言い終わる前に、


 ――シュウウウウウッ


 と、大量の白煙が噴き出した。


「スモーク!?」


 一瞬で視界が真っ白になる。


 前も後ろも分からない。


「逃げるぞ!」


 僕は小声で叫ぶ。


 だが――


 ――パンッ!!


 乾いた発砲音。


「ぐわッ!?」


 岩倉の声。


 ――パンッ!! パンッ!!


 続けて銃声が響く。


「岩倉くん!」


 桐谷が叫ぶ。


 だが、岩倉からの返事はなく、ドサッと床に倒れ込む音だけが帰ってきた。


 そして次の瞬間、僕たちの身体が淡く発光し、気づけば1階の購買に立っていた。


「ゲホッゲホッ! クソ、やられた……」


 岩倉は蘇生され、お腹を抑えながら悔しそうに呟く。


 一瞬だった。一瞬で僕たちはやられた。


 残りのライフ数は8対8。これで振り出しに戻る。


「スモーク越しに、反撃の余地がないよう確実に無敵がないとわかっている岩倉くんを的確に狙って……やっぱり、サーモグラフィみたいな特殊なアイテムを拾っていたのか。迂闊だった」


「アイテムをうまく使ってきたわね」


 僕と桐谷も、少し眉間にシワを寄せる。


 だが、僕たちはすぐに気持ちを切り替え、態勢を立て直した。


 購買に転移させられたことで位置情報はリセットされたが、逆に言えば向こうも僕たちを見失っている。


 現在、第六グループが図書館前にいることがわかっている分、むしろ僕たちが有利だ。


「次はこっちの番だ」


 そう言って、僕は拾ったナイフを強く握り直した。



◇◇◇◇◇◇



 それからの戦いは、完全な消耗戦だった。


 探知機や小型ドローンで位置を探り、スモークで視界を奪い、トラップで道を制限する。


 もはや序盤のような奇襲合戦ではない。アイテムと戦略を総動員した総力戦だった。


 そんな中、最初に均衡を破ったのは僕たちだった。


 物理室付近。探知機に反応した大森を見つけた僕たちは、二方向から挟撃を仕掛ける。


 桐谷の投げたスモークで視界を塞ぎ、逃げ道を限定。そこへ岩倉が飛び込み、至近距離から拳銃を撃ち込んだ。


 大森のライフが一つ減る。


 だが、その代償はすぐに返ってきた。


 転移後わずか数分。今度は桐谷が北村の狙撃を受けた。


 中庭を挟んだ長距離射撃。気付いた時には既に遅かった。


 乾いた銃声と共に桐谷が崩れ落ちる。


 再び強制転移。


 ライフは7対7。無敵も僕と北村の1対1。


 完全な互角だった。


 それから一時間近く。削っては削られ、追っては逃げるを繰り返す。


 ライフ表示は何度も変化した。


 池田が脱落を喫し、大森も残りライフ1。


 だがこちらも岩倉が落とされ、桐谷も追い込まれていく。


 気付けば残り時間は半分を切っていた。

 

 絶体絶命の状況で、部位欠損覚悟でトラップに飛び込んだり、ロケットランチャーで全員削ったり、相討ちしたり、校内に広がっていたかつての光景は見る影もなく混沌を極めていた。


 銃声。爆発音。割れる窓ガラス。


 そして、入り乱れる攻防の末――残ったのは僕と北村だった。


 互いに最後のライフ一つ。池田も大森も岩倉も桐谷も、既にメインアリーナへ送られている。


 端末には、たった2つのハートが表示されていた。



〖第三グループ:♥♡♡♡♡♡♡♡♡〗


〖第六グループ:♥♡♡♡♡♡♡♡♡〗



 校内は静かだった。不気味なほどに。


 気づけば僕は3階西廊下を歩いていた。


 何度も通った校舎。何度も走った廊下。


 その全てが今日で終わる。


 そんな感傷を抱きながら角を曲がった瞬間――


「やあ」


 声がした。


 数メートル先。そこに北村が立っていた。


 傷だらけの制服。疲労した表情。


 それでも、その顔には穏やかな笑みが浮かんでいる。


「結局、こうなったね」


「あぁ」


「それじゃあ、始めよっか」


 北村がそう告げた瞬間、僕たちは互いに武器を抜いた。


 僕はナイフ。一方で北村はリボルバー。


 毒付きナイフとはいえ、圧倒的な不利。だが、トラップだらけの校内を逃げ回ることはできない。


 ――パァン!!


 まずは、北村が先制攻撃を仕掛けた。


 僕は即座に物陰に隠れる。


(リボルバーか……まずいな、装填数がわからない以上迂闊に近づけない。それどころか、他のアイテムも持っているかもしれない)


 僕は息を整えながら、冷静に状況を分析する。


(やはり逃げるしか……でも、どのルートが一番安全なんだ? 考えろ!)


 端末のマップを見ながら、この場を離脱する作戦を立てる。


「どうしたの、越宮くん? 早く出ておいでよ」


 そんな中、煽りを入れる北村。


 北村は、今は僕のカウンターを警戒して近づいて来ないが、僕の手持ちがナイフだけだとバレるのも時間の問題。


(早く、何か仕掛けないと……)


 焦りは思考を鈍らせる。


 逃げるか仕掛けるか。どちらにしても絶望的な状況。


 だが、ここで僕はあることに気がついた。


 ニヤリと口角が上がる。


(賭けにはなるが……これしかない!)


 僕は覚悟を決めると、その場にあった消火器を拾い上げた。


 そして、廊下の角めがけて消火剤を噴射する。


「うわっ!」


 北村の声。同時に、僕は消火器を構えたまま北村に向かって一気に走り出した。


 ――パァン!! パァン!!


 発砲。しかし、照準が定まっておらず、弾は外れる。


 だがその時――


 ――コロコロコロ


 何かが、僕の目の前に転がってきた。


「手りゅ――!?」


 ――ボォン!!


 反応する間もなく、僕の足元で手榴弾が爆発する。


「ふふっ。私の勝ち」


 北村は勝利を確信した。


 いくら適応しようと、僕たちは所詮ただの高校生。戦闘は、一瞬で呆気ない。


 手榴弾と消化剤の煙が、ゆっくりと広がる。


 誰が見ても、第六グループの勝利――のはずだった。


 ――ザシュッ!


 次の瞬間、煙の中から出てきたナイフが、北村の腹部を突き刺さる。


「ぐッ!? な、なんで……?」


 北村の表情が崩れる。


 その瞳に写ったのは、死んだはずの僕の姿だった。


「そういえば、隠し報酬の無敵……受け取ってなかったなぁ」


「ッ!? ま……さか……」


 僕はそう軽く呟くと、ナイフを引き抜く。


 ――ドサッ


 北村はその場に倒れ、同時に僕たちはメインアリーナに送られた。


 メインアリーナに戻ると、みんなは僕たちの戦いをスクリーンで観戦していたらしく、岩倉と桐谷が駆け寄ってきた。


「ナイス! 越宮くん!!」


「勝った……勝ったのよ! 零!!」


 嬉しそうな、今にも泣きそうな表情。人間らしい表情。


「これで……やっと……解放される!」


 僕も2人につられて、思わず笑みを零した。



◇◇◇◇◇◇



 しばらくして、僕たちは教室に転移させられる。


 激しい戦いで壊れた校舎は、いつの間にか綺麗になっていた。


 しばしの静寂。そして――


〔第三競技『KODOKU』終了。勝者、第三グループ。〕


 無機質な合成音声が響く。


〔以上をもって、最終選抜システム『ARMAGEDDON』を終了します。総合勝者は2対1で第三グループとなりました。よって、第六グループの処刑を執行します。〕


 同時に、第六グループの3人が光の鎖で拘束された。


「はは……負けたか」


 池田が苦笑する。


 悔しそうではあった。だが、その顔に絶望はなかった。


「あと一歩だったんだけどなぁ」


 大森も笑う。


「まぁ、仕方ない」


 そして北村は、僕たちの方を見た。


「強かったよ。本当に。過ぎたるは及ばざるが如し……って、よく言ったものね」


 その言葉に、僕は小さくうなずく。


「そっちも強かったよ」


 短い返事。それだけで十分だった。


 北村は満足そうに微笑む。


「最後に越宮くんたちと戦えて良かった」


 北村はそう言って空を見上げた。


 その瞳に後悔はない。やり切った人間の顔だった。


「俺もだよ」


 岩倉が真っ先に答える。桐谷も静かにうなずいた。


 北村は嬉しそうに笑う。


「楽しかった――」


 最後にそう言い残し、第六グループの3人は笑顔のまま光へ溶けていった。


 そして、教室――もとい、校舎には第三グループだけが残された。


 心臓が高鳴る。遅れて実感がやってくる。


「それで……これから、どうなるんだ」


 岩倉がぽつりと呟く。


 その瞬間、再び合成音声が響いた。


〔ゲームの勝者が確定しました。勝者:第三グループ。まもなくこの校舎は開放されます。開放されると同時に、準備期間『APOCALYPSE』が始まります。それでは、ゲームお疲れ様でした。〕


 合成音声が言い終わると同時に、校舎全体が光り始める。


 祝福の光。開放の光。


(準備期間……? なんだそれは――)


 合成音声が告げた言葉に疑問を持つが、光が身体を包み、思考がまとまらない。


 そして、僕たちはゆっくりと光に飲まれていった。


少しでも、


「面白い!」「展開が気になる!」


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【生存者:3/36】


【脱落者】


〈Day1〉

第二グループ:水嶋 恒一


〈Day2〉

第五グループ:佐伯健人

第一グループ:長谷川 莉乃


〈Day3〉

第十一グループ:板橋 直斗

第五グループ:辰島 雅人/野口 佳奈(全滅)


〈Day4〉

第九グループ:佐藤 愛楽


〈Day5〉

第四グループ:田中 悠人

第八グループ:神谷 篤志


〈Day6〉

第七グループ:高波 遥斗

第十グループ:佐々木 煌

第二グループ:安元 寛治

第八グループ:牧野 亜美/定方 美来(全滅)


〈Day7〉

第一グループ:斎藤 学

第九グループ:村田 那海/永谷 翔吾(全滅)

第十一グループ:小町 朝陽


〈Day8〉

第二グループ:西口 涼介(全滅)

第十グループ:石田 沙羅/藤原 蓮(全滅)


〈Day9〉

第一グループ:川島 奏叶(全滅)

第十一グループ:櫻木 沙友理(全滅)


〈Day10〉

第十二グループ:菅 友彦

第四グループ:東 ゆら/渡辺 美香


〈Day11〉

第十二グループ:鳴川 和葉

第七グループ:早坂 響子


〈Day12〉

第十二グループ:高杉 蒼(全滅)

第七グループ:三上 彩花(全滅)


〈Day15〉

第六グループ:北村 志穂/池田 茂人/大森 秋(全滅)


【ARMAGEDDON】


〈Day13〉

第三グループ(1):第六グループ(0)


〈Day14〉

第三グループ(1):第六グループ(1)


〈Day15〉

第三グループ(2):第六グループ(1)


【勝者:第三グループ】

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