↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢宙時空  作者: 星秤
PR
41/43

第四宙 第九夢 御黎夢宙館

多くの夢宙者たちが、少しずつ広場から去っていく中。


狼子は祁翔、雁羽、陸達たちを連れて、ゆっくりと夢宙時空管理局の談話ホールへ向かった。


広大な談話ホールには、美しい彫刻が数多く施されていた。


さらに、線の表現が非常に優雅で、色彩も見事に使われた、まるで生きているかのような絵画が何枚も飾られている。


そのため、ホール全体は非常に豪華な雰囲気に包まれていた。


個人用の独立した空間もあれば、複数人で利用できる会議室も用意されている。


狼子は祁翔たちを、そのうちの一室へと連れて行った。


祁翔はソファのある場所を選び、そこへ腰を下ろした。


そして、静かに考え込む。


ここ最近、夢宙時空で起きた様々な出来事。


気がつけば祁翔の心には、以前よりもさらに強い決意が芽生えていた。


――白い蝶を探したい。


――あの白いローブの男の正体も知りたい。


――そして、もっと多くの色を持つ、様々な色系統の魂の欠片を集めたい。


そうすれば、宙之曆に隠された、さらなる秘密を知ることができるかもしれない。


宙之曆によって宙武の技能が向上するという、思いがけない出来事。


その様々な機能を知ったことで、祁翔は自分の宙技や戦闘能力を、これからどのように強くしていくべきかを考えていた。


もう二度と、仲間たちが倒れている姿を見たくなかった。


だから祁翔は、心の中で静かに決意した。


――自分は必ず成長する。


そして祁翔は、伝説とされる上古十二宙器についても興味を抱いていた。


しかし、今もっとも緊急なのは、狼子たちと共に噩夢蛇の巣穴に関する手がかりを探すことだった。


だが、夢宙時空はあまりにも広い。


一体、どこから探せばいいのだろうか。


その疑問が、ずっと祁翔の心の中に残っていた。


狼子は祁翔の表情から、その迷いを察した。


「どうした? ずいぶん悩んでるみたいだな。顔中に疑問が浮かんでるぞ」


狼子がそう尋ねると、祁翔は少し考えてから、ゆっくりと答えた。


「赫爾姆大陸って、ものすごく広いだろ? 俺たち、一体どこへ行けば噩夢蛇の巣穴とか、迷宮を見つけられるんだろうって思ってさ」


「なんだ、そのことを悩んでたのか」


狼子はそう言うと、自分の宙之曆を開いた。


すると、そのページには、地図のような細かな情報がびっしりと表示されていた。


「これは……?」


祁翔は不思議そうに尋ねた。


雁羽は楓葉を撫でながら、陸達と共に宙之曆のページを見つめている。


二人も、狼子が何を言うのか期待しているようだった。


「これは夢宙時空の地図だ。翔、まだ言う機会がなかったからな」


狼子は祁翔を見ながら言った。


祁翔は目を輝かせ、新しいものを発見した子供のような表情を浮かべた。


今までの祁翔は、ほとんどナビゲーションシステムばかりを使っていた。


宙之曆の様々なシステムを、真剣に使ったことはほとんどなかったのだ。


狼子は宙之曆の地図の一箇所を指差した。


「ここが、夢宙時空の蔵書閣だ。現実時空で言うなら……図書館みたいなものだと思えばいい」


しかし祁翔は、まだ不思議そうな表情をしていた。


その顔を見た狼子は、さらに説明を続ける。


「俺たち、そこへ行ってみないか? 夢怪時空について、もっと詳しい資料を集められるかもしれない」


「いいじゃん! さすが狼子!」


祁翔は嬉しそうに言うと、狼子の肩を勢いよく叩いた。


「そんなに強く叩く必要あるか?」


狼子はその勢いに少し身体を震わせ、呆れたような表情を浮かべた。


「それじゃあ、何を待ってるんだ? 行こう!」


祁翔はすぐに出発するような勢いで立ち上がり、扉の前から狼子、雁羽、陸達たちに手を振った。


まるで、


――早く立って、行こう!


と言っているようだった。


狼子は首を横に振り、両手を広げた。


まるで祁翔には敵わない、と言いたげな表情だった。


そして狼子は、黙って祁翔の後ろについて歩き始めた。


祁翔は宙之曆に表示された地図を見ながら進んでいたが、途中で突然足を止めた。


狼子は祁翔の隣まで歩いてきて、不思議そうに尋ねた。


「どうした? 急に止まって」


祁翔は少し恥ずかしそうに言った。


「実は……俺、地図の見方がよく分からないんだ。いつもナビゲーションの矢印に頼ってたし。やっぱり狼子が案内してよ」


狼子は思わず笑い出した。


そして首を横に振る。


「まったく。地図も読めないのに、先頭を突っ走るんだからな」


そう言うと狼子は、宙之曆の地図ページを開き、先頭に立って皆を案内し始めた。


しばらく歩いた後。


狼子はついに祁翔たちを、一つの非常に洗練された、独特なデザインの建物へと連れて行った。


その独立した建物は、どこか幻想的だった。


まさか中が図書館だとは、誰も思わないような外観だった。


祁翔はその建物を、目を離すことなく見つめていた。


すると、いつの間にか狼子はすでに建物の中に入っており、祁翔を呼んだ。


「ほら、行くぞ! 入ってこいよ。何ぼーっとしてるんだ」


祁翔は我に返り、頷いた。


そして建物を見上げながら、ゆっくりと中へ入っていった。


建物の中へ入った瞬間。


祁翔の視線は、壁に刻まれた五つの美しい文字に釘付けになった。


――『御黎夢宙館』。


「御黎夢宙館……? 御黎って、何?」


祁翔が尋ねると、狼子は首を横に振った。


「……さあ、分からない」


祁翔はその五文字を眺めながら、狼子たちの後を追った。


さらに進むと、目の前にもう一つの扉が現れた。


その扉をくぐった瞬間。


祁翔は再び、目の前に広がる光景に驚かされた。


内部は非常に壮大で、豪華だった。


狼子、雁羽、陸達は、建物の案内図の前で何かを探している。


すると突然、狼子が大きな声を上げた。


「あった! ここだ! 時空歴史蔵書エリア!」


狼子は興奮した様子で手招きをし、皆に自分についてくるよう促した。


狼子たちはさらに奥へと進み、階段を上った。


内部の様々な場所は、壮大なだけではなかった。


非常に上質で、デザインの中には芸術的な雰囲気が漂っていた。


壁には数多くの絵画が飾られていたが、祁翔たちは誰が描いたものなのか知らなかった。


しばらく歩いても、狼子は地図のナビゲーションが示している場所を見つけることができなかった。


一番奥まで来ても、もう先へ続く道はない。


狼子が不思議に思っていると、その時。


宙之曆が声を発した。


『夢宙時空・歴史蔵書エリアの転送ポイントを開きますか?』


「えっ? 図書館の中にまで転送ポイントがあるのか!?」


狼子は驚き、新鮮な発見をしたような表情を浮かべた。


「はい」


狼子がそう答えた瞬間。


皆の目の前に、白い光と霧のような雰囲気をまとった転送門が現れた。


その姿は、以前、夢怪時空へ向かった時に使用した転送ポイントとよく似ていた。


狼子は特に疑うこともなく、真っ先に転送門へ入っていった。


雁羽と陸達も、その後に続く。


祁翔は一度だけ後ろを振り返った。


――こんなに大きな蔵書館なのに、どうして誰もいないんだろう?


そんなことを考えながら、祁翔も転送門へ入っていった。


狼子たちが転送門を通り抜けると。


なんと、皆の身体は空中に浮かんでいた。


そしてその空間には、一体の未知の生物がいた。


その生物は、数多くの本を整理していた。


狼子たちの存在に気づくと、手にしていた作業を中断し、ふわりと宙に浮かびながら、彼らのもとへ近づいてきた。


そして口を開いた。


「久しぶりだな。資料を探しに来る者がいるなんて。本当に珍しいことだ」


その未知の生物を見つめながら。


雁羽は楓葉を抱いていたものの、その瞳はまるで星が輝いているかのように、きらきらと輝いていた。


「かわいい……」


雁羽は思わず呟いた。


祁翔たちの目の前にいる未知の生物。


その毛並みは真っ白で、見た目はまるでカワウソのようだった。


眼鏡をかけており、その姿は可愛らしいのに、どこか知的な雰囲気も感じさせる。


狼子たちは中へ入った瞬間から、あちこちへとふわふわ漂っていた。


祁翔、雁羽、陸達も、懸命に浮遊感覚へ慣れようとしている。


しかし雁羽は、うっかり楓葉を手から離してしまった。


楓葉はそのまま、本棚へとぶつかった。


「痛い!」


楓葉は尾で額を撫でながら言った。


雁羽は申し訳なさそうな表情を浮かべ、浮遊感覚に慣れようとしながら、再び楓葉を抱き直した。


狼子は未知の生物に尋ねた。


「俺たちは、夢怪時空に関する資料を探しています。噩夢蛇についての情報なんですが、ここにありますか?」


狼子の質問を聞くと、その未知の生物は少し迷ったような表情を浮かべた。


周囲を見渡しながら、口の中で何かを呟いている。


「種族……種族……噩夢蛇……噩夢蛇……」


「カワウソが喋ってる……」


祁翔は、その姿を見ながら思わず口にした。


未知の生物が迷いながら、ぶつぶつと呟いている間。


祁翔は周囲を観察していた。


そこには数え切れないほどの書籍があり、中には光を放っている本まで存在していた。


すると突然。


未知の生物は何かを思い出したようだった。


「あった!」


そう言った瞬間。


その身体から、無数の光の糸が伸びた。


光の糸は一冊の光る本へと繋がり、その本を狼子の目の前まで導いていった。


「これは……?」


狼子、雁羽、陸達は不思議そうにその本を見つめた。


祁翔もふわりと近くまで漂い、一緒に覗き込んだ。


その本が狼子たちの前で開かれると。


狼子の宙之曆も本来の姿へ戻り、目の前に浮かび上がった。


未知の生物が取り出した光る本は、まるで宙之曆の中へ組み込まれるかのように、一つになっていく。


そして組み込まれた瞬間。


宙之曆のページには、以前と同じように投影が現れた。


この不思議な組み込みシステムに、狼子たちは驚いた。


祁翔は思わず口を開く。


「宙之曆に、こんな機能まであったなんて……」


祁翔たちは真剣な表情で投影を見つめた。


するとそこには、立体的な映像が現れた。


それは赫爾姆大陸のようだった。


さらによく見ると。


赫爾姆大陸の立体地図の上に、数多くの噩夢蛇の印が表示されていた。


「これは?」


祁翔は理解できないという表情を浮かべた。


すると未知の生物が答えた。


「その印はすべて、噩夢蛇がかつて巣を作った場所だ。君たちの役に立つかもしれない」


狼子は地図をよく観察し、最後まで見終えると口を開いた。


「これらの手がかりを使えば、探せるかもしれない。奴らの習性や、巣を作りやすい場所を調べれば……」


狼子がそう話している間。


祁翔は未知の生物の後ろにある、白い光の束に気がついた。


それは転送門のようにも見えた。


祁翔は好奇心を抑えきれず、ふわりとそちらへ近づいていく。


そして、触れようとした瞬間。


「うわっ!」


祁翔の身体は、何かに弾かれた。


幸いなことに、狼子がすぐに祁翔を支えた。


祁翔は不思議そうな表情を浮かべた。


「何これ? なんでこんなことになるんだ?」


未知の生物は、まるで祁翔をからかうように言った。


「そこは、お前たちが入れる場所ではない。SS級以上の夢宙者だけが探索できる禁書空間だ」


「禁書……空間?」


祁翔と狼子は同時に声を上げた。


「そこには多くの奇書が眠っている。それに……あの、誰もが奪い合っている……」


未知の生物は途中まで話した。


しかし、急に言葉を止める。


「……なんでお前たちに、そんなことまで教えなきゃならないんだ」


祁翔は少し不満そうに言った。


「何それ。言うなら最後まで言ってよ。なんで途中まで話して終わるんだよ」


雁羽と陸達は、興味深そうに白い転送光を見つめていた。


「さて。そろそろ、お前たちを外へ送る時間だな」


未知の生物はそう言うと、さらに続けた。


「それと、私はカワウソではない。千年以上生きている上古宙獸で、私の名は――」


しかし。


その名前が告げられる前に。


祁翔、狼子、雁羽、陸達の身体から、無数の光が溢れ出した。


次の瞬間。


彼らは再び、御黎夢宙館の大ホールへと戻っていた。


「……あ」


祁翔たちは、あっという間に外へ出されてしまった。


一方。


カワウソのような姿をした上古宙獸は、先ほどまで彼らがいた空間で呟いた。


「……出て行ったか。まあ、いい。名前は次に会った時にでも話すとしよう」


そして、整理の途中だった本を再び開いた。


祁翔と狼子は、困惑した表情で周囲を見渡した。


最初に口を開いたのは祁翔だった。


「禁書空間かぁ……。中にはどんな本があるんだろう?」


祁翔の想像は、すでに止まらなくなっていた。


「伝説の魔法書とか? それともアニメによく出てくる召喚の本とか……それとも……?」


狼子は祁翔を見た。


――本当に、こいつは想像力が豊かだな。


狼子はそう思いながら、首を横に振った。


「さあな。でも、少なくとも噩夢蛇の手がかりは手に入った」


祁翔は狼子の言葉を聞き、頷いた。


「うん。でも、またあの場所へ行くと思うと、やっぱりちょっと怖いな……」


雁羽は楓葉を抱きながら、微笑んだ。


陸達も同じように微笑んでいる。


狼子は自信に満ちた表情で祁翔に言った。


「俺たちがいる。怖がる必要なんてない」


実際には、狼子自身も以前の蛛后との戦いを思い出すと、まだ恐怖を感じていた。


王級、后級以上の存在。


その力が、決して軽視できるものではないことを、狼子は身をもって知っていた。


しかし。


祁翔や仲間たちを励ますために。


そして皆を安心させるために。


狼子は、自分が恐れていないように振る舞う必要があった。


祁翔は狼子を見つめた。


すると、心の中にあった恐怖が、少しだけ小さくなっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。