第三宙 第十夢 蜘蛛后イース
一行が歩いている途中、通路で金色の髪をした幼い少女に出会った。祁翔が近づこうとしたその時、少女は素早く走り去ってしまった。
「変だな、どうしてこんなところに女の子がいるんだ? ここって、食夢蜘蛛の巣穴の迷宮じゃないのか?」
祁翔は困惑した。
狼子は祁翔を見ながら、真剣な表情で言った。
「気をつけろ。油断するな。」
祁翔は頷いた。
彼らはさらにしばらく歩き続けた。道中には相変わらず何体かの人面食夢蜘蛛が現れたが、祁翔たちと狼子たちは簡単に倒していった。
そしてその時、彼らは巨大な扉の前まで辿り着いた。
扉の床には、スクリーンに映っていたものとまったく同じ五芒星陣が描かれていた。
「これって、伊幽たちの記憶の欠片に出てきた五芒星陣じゃないか?」
祁翔は思わず口にした。
祁翔たちは五芒星陣を見つめ、しばらく考えたが、それでも中へ入る方法を見つけられなかった。
もしかして、この陣を利用しなければ扉を開けられないのだろうか?
祁翔は以前、自分が遊んだアニメゲームを思い出しながら、そんなことを考えていた。
祁翔たちは周囲を観察していた。
すると突然、狼子が床に描かれた五芒星陣に気づいた。
五つの尖った頂点が、どうやら淡く光っている。
しかし、目の前にいるのは四人だけだった。
それでも狼子は全員に合図を送り、それぞれ一つずつ頂点の上に立つよう示した。
祁翔、狼子、雁羽、陸達が四つの頂点を踏んだその時、どうすればいいのか考えていると――突然、一匹の白い蝶が飛んできた。
祁翔たちは、空中を舞う白い蝶を見つめた。
しばらくすると、白い蝶は扉の前にある五つ目の頂点へと止まった。
その瞬間――
扉から轟音が響き渡り、突然、大きく開いた。
扉が開くと同時に、白い蝶も扉の中へと舞い込んでいき、やがて姿を消していった。
祁翔たちは目の前で起きた光景を見て、驚きを隠せなかった。
「いったい、あの白い蝶は何だったんだ?」
祁翔が不思議そうに尋ねた。
「分からない。だが、敵意はなさそうだ。ずっと俺たちを助けてくれている。」
狼子が答えた。
陸達も頷いて同意を示した。
雁羽は特に反応することなく、楓葉を撫で続けている。
楓葉は相変わらず呆れたような表情をしていた。
楓葉は心の中で思った。
――実はあの白い蝶がいなくても、俺があそこに立って試してみてもよかったんだけどな。
狼子が先頭を歩き、皆に一緒に扉の中へ入るよう合図した。
中へ入った後、一行はさらにしばらく歩き続けた。
そして廊下の突き当たりまで来た時――
そこに人影が見えた。
まるで、先ほどの少女のようだった。
少女は祁翔たちに背を向けたまま、静かに問いかけた。
「あなたたちは、夢が叶うと信じていますか?」
突然の問いかけに、祁翔は少しだけ戸惑った。
雁羽と陸達もその問いについて考えている。
狼子は目の前の少女に対して警戒を続けていた。
祁翔がもっと気になっていたのは、なぜこの迷宮にこんな少女がいるのかということだった。
――この子はいったい、どうやってここへ入ってきたんだ?
祁翔は少女に尋ねた。
「どうしてこんなところにいるんだ?」
少女は再び問いかけた。
「お兄ちゃんたちは、夢が叶うと信じていますか?」
「信じてる。」
祁翔は答えると、続けて言った。
「ここは危険だ。どうしてこんなところにいるんだ? お兄ちゃんが外へ連れて行ってあげようか?」
祁翔は心配そうな表情で言った。
少女は答えた。
「でも、私は信じない。」
そう言うと、少女は振り返り、続けて言った。
「危険? あなたたち夢宙者よりも危険なの?」
その瞬間――
先ほどまで金色の髪、青い瞳をしていた幼い少女の姿が、瞬く間に変貌した。
黒い礼服を身にまとった、絹のような質感を持つ女王へと変わった。
その手には蜘蛛のトーテム模様が刻まれた杖。
白く長い髪は頭上でまとめられている。
そして彼女は高い場所から祁翔たちを見下ろすように、威厳に満ちた眼差しを向けていた。
その身長は、祁翔たちよりも遥かに高い。
「こ……これが……蜘蛛后……イースなのか?」
強大な威圧感を放つ蜘蛛后に圧倒され、祁翔はその場に尻もちをつきながら言った。
蜘蛛后イースは、凶悪な光をその瞳に宿しながら、祁翔たちを見つめた。
「夢宙者たち……まさか四伊衆まで、あなたたちに殺されたというの?」
「彼らは、私が最も誇りに思っていた弟子たちだったのよ。」




