第三宙 第九夢 悲しい過去
祁翔と狼子が、宙之曆の要求に答えると、二人の宙武は宙之曆の形態へと変化し、目の前にスクリーンのようなものが現れた。
祁翔は隣にいる狼子に尋ねた。
「魂の欠片を開くって、何なのか知ってる?」
「知らない。」
狼子は両手を水平に上げ、肩をすくめながら首を横に振って祁翔に答えた。
「じゃあ、なんで『はい』って選んだんだよ。やられた。」
祁翔が狼子に言った。
「お前だって同じように『はい』って選んだだろ。それに、やっぱりすごく気になるじゃないか!」
仮面の下から、狼子の笑い声が聞こえた。
「それもそうだな。」
祁翔も狼子の言葉に同意した。
「だろ? だろ?」
狼子が祁翔に言った。
祁翔は作り笑いを浮かべながら、呆れたようにスクリーンを見つめた。
しかしその一方で、スクリーンに一体どんな映像が映し出されるのか、少し期待もしていた。
スクリーンには、三人の男の子と一人の女の子が楽しそうに遊んでいる姿が映し出された。
とても無邪気で、優しい子どもたちに見える。
祁翔は興味深そうに尋ねた。
「これって、四伊衆の子どもの頃の記憶なのか?」
狼子は答えた。
「知らない。たぶん、そうじゃないか?」
その時。
次の場面へと切り替わる。
スクリーンには、たくさんの残骸が映し出された。
それは人面食夢蛛の残骸のようだった。
その残骸の中には、三人の男の子と一人の女の子が立っていた。
その姿には、伊幽、伊無、伊盡、伊希とどこか似た雰囲気があった。
彼らの前では、多くの人面食夢蛛と夢宙者たちが戦っていた。
四人の子どもたちは悲しそうに泣きながら、必死に走っていた。
伊希は途中で振り返る。
彼女の目の前には、自分たちよりも遥かに大きな大人たちがたくさんいた。
祁翔は不思議そうに尋ねた。
「これが、彼らの記憶なのか?」
狼子は頷いて答えた。
「どうやら、そうみたいだ。」
ようやく伊幽たちは、あの大人たちから遠く離れた場所まで走っていった。
すると、伊希が泣きながら隣にいる少年に話しかけた。
「伊幽お兄ちゃん……どうしてあの人たちは、私たちのお父さんやお母さん、友達をあんなふうに殺すの?」
伊幽には、伊希にどう答えればいいのか分からなかった。
彼はただ伊希を抱きしめ、彼女の肩を優しく叩いて慰めることしかできなかった。
そして、口の中で小さく呟いた。
「くそ……夢宙者め。いつか必ず、お前たちに相応の代償を払わせてやる。」
祁翔はそこまで見て、心の中で思った。
――なるほど……彼らは子どもの頃に、夢宙者たちによって討伐された出来事を目の当たりにしていたのか。
そして祁翔は思った。
――もしかして、俺は何か間違ったことをしたんじゃないのか?
狼子は、まるで祁翔の顔に浮かんだ迷いを見抜いたかのように、祁翔の肩を軽く叩いた。
「お前はよくやった。確かに、彼らの過去は悲惨だ。でも、今の彼らは間違いなく人間を傷つけている。それどころか、人間の時空さえも傷つけている。」
祁翔は、狼子が自分を励ましているのだと気づいた。
狼子に心配をかけないため、祁翔は頷き、笑顔で答えた。
「うん、分かってる。」
「それに、お前が彼らを殺さなかったら、今度は俺たちが殺されていた!」
狼子は真剣な表情で祁翔に言った。
祁翔はようやく迷いを振り払い、頷いた。
祁翔たちは再びスクリーンを見続けた。
するとスクリーンに、一人のとても背の高い人物の影が映し出された。
その影は伊幽たちを覆い尽くしていた。
伊幽たちはその影を見上げると、一礼し、そして跪いた。
どうやら、伊幽たちの目の前にいる人物は、かなり高貴な身分の者らしい。
祁翔は狼子のほうを振り返り、尋ねた。
「もしかして、あれが蜘蛛后なのか?」
狼子は顎に手を当てながら答えた。
「その可能性はある。かなり高いと思う。」
祁翔たちはそのままスクリーンを見続けた。
その後、伊幽はその人物に向かって頷いた。
そして、四人はその影について歩いていった。
場面が変わる。
伊幽たちは、地面に五芒星陣が描かれている場所へと辿り着いた。
そして――
そこで映像は途切れた。
スクリーンは瞬時に消え去った。
「なるほど……これが、彼らが四伊衆になった過去なんだな。」
祁翔は、映像を見終えた感想を口にした。
「たぶん、そうだろうな……。」
狼子が答えた。
「この魂の欠片に残っている記憶って、何に使えるんだ? 見終わった後は?」
祁翔は不思議そうな表情で尋ねた。
狼子は答えた。
「彼らの過去を知ることができた。そして、これらの過去も宙之曆の中に記録される。もしかしたら、未来で本当の宙之曆を探す時に、ほんの少しでも手掛かりになるかもしれない。」
「なるほどな! じゃあ、他には何も機能はないのか?」
祁翔はさらに尋ねた。
「その他の機能については、今のところまだ分からない。もしかしたら、未来で彼らの魂の欠片が何かの役に立つのかもしれないな。」
狼子は祁翔に答えた。
「じゃあ、先に進もう。スクリーンに映っていた五芒星陣が、ちょっと気になるんだ。」
そう言いながら、祁翔は先頭に立って歩き始めた。
そして笑顔で振り返り、手を振りながら先へ進むように合図した。
狼子は祁翔を見ながら頷き、歩き出した。
雁羽は楓葉を抱きながら、狼子と祁翔の後ろについて歩いていく。
そして陸達は、相変わらず一行の最後尾を歩いていた。




