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第10話 城下町の散策

見たことのない世界を文章で表現することの難しさに直面しています。


私の想像と読者さんの想像する世界が近ければ嬉しいです。


「ねぇ!あれは何?」


街道を歩きながらハクトは気になったものをどんどん質問してゆく。

今は建物にぶら下がっている家をモチーフにした看板を指を差して聞いていた。


「あれは宿屋だ。下の階に酒場があって夜になると娯楽を求めて客が寄ってくる」

「へー!じゃああれは?」


今度は風呂敷を広げて物を売っている人を指差す。


「あれは雑貨屋だ。旅の行商人だろう。ここは都市ではないがギルドの承認があれば市場のように売り出していい形になっている」

「ギルドってまとめている組織があるの?」

「ああ、商売するには『商業ギルド』に参加もしくは許可が必要だ。そこで物の価値を保証してもらい、値段を極端に大きくしたり小さくしたりできないようにするんだ」


どうやらギルドという全体の取り締まり役があるようだ。

...だとするとファンタジーお決まりの冒険者ギルドってあるのかな?


「他にはどんなギルドがあるの?」

「結構あるぞ。俺が所属している鉄を扱う鍛冶ギルドや皮を扱う皮革ギルドなどの『職人業ギルド』もそうだし、画家や製本工などが所属する『芸術業ギルド』や大工がいる『建築業ギルド』もそうだ。細かくしてゆくとキリがないな」

「あとは冒険者ギルドってのもあるぜ!」

「え!?」


レックスが話に突然食いついてきた。

やっぱりあるんだ!冒険者ギルド!さすがは異世界!


「冒険者ギルドって!?」

「お?なんだなんだ?興味が湧いてきたかボン?実はな俺とニーミは昔冒険者だったから詳しいぞ?」

「ホント!?」


レックスとニーミは冒険者をしていたらしい。

レックスが得意げな顔をしている。

こりゃいろんな話が聞けそうだ!


「やめておけレックス。あれはハクトがやるような仕事ではない」

「えーキロさんさ酷くなーい?」

「僕も聞きたい!教えてよ!」


どうやらキロは僕に冒険者に興味を持って欲しく無さそうだった。

眉を目尻に寄せてお前ら何余計なこと言っているんだって顔をしている。


「あのなハクト、冒険者は未知の大陸や場所を探索してゆくことを目的としているが、実際はただの傭兵軍団だ。冒険しているだけで実りがない。仕える国もないためすぐにお金が底を尽きる。そしてお金さえ払われれば大抵のことはしてしまうようになる。レックスとニーミは俺がいた国の傭兵として雇われたが、アインに惹かれてそのまま入隊しただけだ」

「うぐっ。結構な言い草さねキロさんさ。ちゃんと私たちも最初は冒険していたのさ...その...あの時はただちょこっと資金が底を尽きかけてただけでさ...」

「つまり冒険者は夢を追いかける職業だ。何か別のお金を調達する手段がなければすぐにこうなる」

「うぐっうぐっ」


いい例が目の前にあると親指でニーミとレックスを指す。


そうなのか...


僕の想像した依頼を受けて町や街道にでた魔獣(モンスター)や野盗を退治する冒険者の仕事とはかけ離れていた。

では誰がそれらを退治しているのだろう。


「町に出てくる魔獣(モンスター)とかをやっつけたりはしないの?」

「?ハクトはなにやらごっちゃになっているようだな。町の治安は国の騎士団が守るものだ。他の者たちにやらせたりはしない。だからハクト、冒険者だけはやめておけ」


どうやら僕の想像していた仕事は騎士が行うようだ。騎士は警察のように治安維持の役割も果たしているのかもしてない。


「そりゃ酷いぜキロー俺たちにも自慢話をさせてくれよー」

「ダメだ。お前らの主観で話して万が一にでもハクトが冒険者になりたいと言い出したらどうする」

「くっそーせっかく美談を作ってたのによー」


どうやらこの世界で冒険者という職業は夢はあるが収入がないようだ。


「ねえ、それじゃあ冒険者は実際どうやってお金を稼ぐの?」

「ああ、それはもちろん危険な土地や未開の地にダンジョンの攻略などの世界が認める有力な情報をもたらすことによって収益が得られる」

「場合によっちゃあ一発で大金持ちになれんだぜ?」

「ほんと!?」

「おい!レックスいい加減にしろ。そもそも冒険者はごまんといるが実際にそうった偉業を成し遂げているのは極わずかだろ。ハクトも興味を持つな」

「えー」


興味を持つなと言われても無理があるよ。

お金の問題だけはどうにかしないといけなさそうだけど。

戦う気がなくて、だけどこの世界を見て回ってみたい僕にとって冒険者はよい仕事になるかもしれない。

今度キロがいない訓練の時にでもレックスとニーミに聞いてみようかな。


「...それよりも何か欲しいものがあったかハクト?色々あるぞ」


どれだけ僕に冒険者になって欲しくないんだろう。

無理やり話題を変えてきた。


「うーんとねー本が欲しいかな!」

「なに?本か...まあ良いだろう」

「ハクトは勉強好きさねー。えらいえらい!本ならすぐそこのお店がいいのさ!」

「えへへっ」


ニーミに頭を撫でられながら満面の笑みで入店した。

すると、目の前に眼鏡をした老人がカウンターに座っていた。


「いらっしゃい」

「すまない。ここに本は置いているか?」

「あっちの端っこのスペースにあるよ」

「ありがとう。こっちだハクト」

「うん」


店内は本屋というより雑貨屋だった。

端にあった本コーナーも小さく、数えられるくらいしか置いていない。


「本は高価だが一冊だけなら買ってやる。慎重に選べ」

「わかった!」

「...わかればいい。決まったら教えろ」

「うん!」


どうやら本は高価な物らしく、前世にあった本屋のようなものはこの世界には存在しないのだろう。

棚にあった本もずっと買われていないのかホコリを被っているものが多い。

しかし、種類は絵本や伝記に図鑑とあるので意外と迷う。

一冊しか買えないし数が少ないからここで読んでしまおうか。


「ハクトさ、どの本がどんなものかわかる?」

「え?...あっわからない!」

「やっぱりそうさよね!私がどの本にどんなことが書いてあるか教えるのさ!」


一冊の本をじっくりと見ては置いてを繰り返していたらニーミが読めないで困っていると勘違いして声をかけてくれた。

他の二人は雑貨を一つずつ真剣に物色しているというのにニーミだけは僕の心配をしてくれる。

優しい。


「ハクトが持っているこれはこの国の成り立ちが書いてある本さね。気に入った?」

「ううん。もっとためになるのがいい!」

「ためになる本さね。ちょっと待ってね...えーとじゃあこれは?」


ニーミがとった本は図鑑だった。


「これは異能力の図鑑さね。きっと全部じゃないけどほとんどの異能は網羅されてるみたいさ。知っておくだけでいろいろ便利になったりするさよ」

「じゃあその本にする!」

「え!?いいの?」

「うん!」


僕が本を欲しがったのは読み書きの練習をするためだった。

なので内容は正直気にしないし、別に知る必要のないことが書いてある本をニーミは選ばないだろう。

だから僕はニーミが選んだ本を買うことにした。


「キロ!決まったよ!」

「よし、この本だな...ってこの本確かニーミが前から気になってたやつじゃないか?」

「え!?そっそんなことないさー...ははは」


どうやら自分が気になっていた本を僕に勧めたようだ。

よく本を見てみると確かにこの本だけホコリが被っていない。


「僕まだ難しいの読めないから帰ったら読み聞かせてね!ニーミママ!」

「ううっハクトありがとうなのさー」


図鑑は絵も入っているため結構なお値段だったようだ。

キロが革袋から金ピカの大きい硬貨と小さい硬貨を数枚だして支払っていたので間違いない。


「そろそろお腹すいたな!ボン!飯屋にいくか!」

「うん!」


お店を出るとちょうどお昼くらいに差し掛かって来ており、お腹が減ってきていた。

僕たちは比較的に空いていて一応亜人も入っている軽食屋に入った。


「ハクト決まったか?」

「うーんよくわからない」

「まあそうだろうな!適当に頼むから大丈夫だ。ボン!」


メニューを見てみたが何の料理かわからないものだらけだった。

キロとレックスが僕の知らない料理名をウェイトレスに告げてゆき、料理が運ばれてくる。


「これは何?」

「パテとラグーだ。パテはひき肉を丸めて焼いたもので、ラグーは煮込み料理のことだ」

「これが下町での一般料理なんだぜ?どこにでもあるから覚えておけボン!」

「わかった!」


食べてみるとわかるが、全体的に味が薄い。

それにたまにガリッとする。

なんだろう?


「...正直こういった下町の軽食屋はモラルが低い。こういった砂利がパンや肉と一緒になって混ぜられていることが多々ある」

「え...」

「まあしょうがない!これも下町の味の一つだ!がっはっは!」

「そうさね。これで家でのご飯のありがたみがますしさ。私的には混ぜられているのが虫でないだけマシさよ」


どうやらこれは許容範囲内らしい。

いつも料理を作ってくれるニーミに感謝しないと。


この世界での食のモラルを学びつつ食事を終えて再び街道を歩き出す。

ずっと歩いてゆくと中央に教会らしき建物がある広場に出た。


「次はどこにいくさ?」

「うーんとね」

「ハクト、この近くだと騎士学校があるぞ」

「え?学校?」


よかった!学校っていう概念あるのね!

騎士っていうのがちょっとあれだけど...


「ああ。せっかく町に出て来たんだし悪くはないだろう。話せばきっと見学もできるぞ」

「うん!少しなら...」


ドンッ!!!

「きゃああああ!!!」


突如中央の教会から大きな音と叫び声が聞こえた。


「なになに!?今の!?」

「落ち着けハクト。わからんが教会で何か起きたようだ」


広場にいた人間全員が教会を見ている。


ガチャッ


教会の塔で一番上の窓が開いた。


「あれは亜人さね。それも竜人族(リザードマン)。人間を抱えてるさね」

「だな」

「おう」


ニーミが一番に気がつき、次々に周辺の人間も気付き始める。

そして竜人族(リザードマン)が口を開いた。


「この教会は我々亜人同盟が占拠した!いいか人間共!我が同胞を今すぐ奴隷から解放するのだ!さもなくばこの教会にいる人間共を皆殺しにする!!!」


この声を皮切りに広場にいた亜人たちが次々に武器を取り出す。

広場の人たちが驚いている間に広場一帯を囲うように亜人たちが包囲網を完成させていた。


「厄介だな」

「困ったのさ」

「がっはっは!威勢がいいじゃねーか!」


「うそでしょ...」


こうして僕たちは亜人たちによるクーデターに巻き込まれた。


次回からようやく戦闘に入ります(予定)。


ちゃんとした戦闘シーンを書くのは初めてになるので頑張ります!

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