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22話 第七師団の訓練

走り込みは、想像以上に過酷だった。


ただ走るだけなら、まだいい。


問題は――全員が魔力による身体強化を使っていることだった。


「は、速すぎるだろ……!」


前を走る団員たちは、息一つ乱さずに距離を伸ばしていく。


俺も身体強化を維持している。


それなのに、ついていくので精一杯だった。


(これが……第七師団か)


魔力操作を覚えたばかりの俺と、何年も身体強化を使い続けてきた団員たち。


同じことをしているように見えても、積み重ねてきたものが違う。


「クロスさん! 頑張るっスよ!」


前方からソルトの声が飛んでくる。


「分かってる……!」


返事をするだけでも息が切れる。


だが、そのときだった。


ふと、前回の模擬戦が脳裏をよぎった。


レオンとの戦い。


追い詰められた瞬間、魔力を込めた俺の身体は、爆発したように加速した。


あの感覚。


足の先から何かが弾けて、身体そのものが前へ飛び出したような――。


(……あれを、もう一度)


俺は走りながら、意識を足へ集中させた。


全身に巡らせていた魔力を、少しずつ下へ。


太腿。


ふくらはぎ。


足首。


そして――足の親指。


そこへ魔力を集める。


「……っ」


前回とは違う。


あのときは、何が起きたのかすら分からなかった。


今なら――。


俺は地面を踏み込む。


その瞬間。


――ドンッ!


身体が前へ弾き出された。


「――っ!?」


一気に距離が縮まる。


前を走っていた団員の背中が、目の前まで迫った。


「クロス?」


その団員を追い抜く。


さらに一人。


もう一人。


「…でき、たけど…はえええええ!!!!」


ほんの一瞬だった。


だが、確かに自分の意思で加速できた。


「今の……」


練兵場の端で訓練の様子を見ていたアザレアが、ニヤッと笑う


俺はそのまま走り続けた。


以前のように暴発することもない。


魔力を足先へ集中させ、必要な瞬間だけ使う。


まだ完璧じゃない。


だが――使える。


走り込みが終わる頃には、俺の順位は中盤まで上がっていた。


「はぁ……はぁ……」


膝に手をつき、荒い息を吐く。


「お疲れっス!」


隣では、ソルトが平然と立っていた。


「……お前、化け物か?」


「何言ってるんスか。これくらい普通っスよ」


普通。


その言葉を聞いて、俺は周囲を見渡した。


確かに、他の団員たちも多少息を切らしている程度だ。


(……この世界の軍人って、こんなに強いのかよ)


俺は改めて、第七師団の異常さを思い知らされた。


◇


走り込みの次は筋力訓練だった。


巨大な鉄塊を持ち上げ、運ぶ。


単純な訓練だ。


だが――。


「うおおおおおッ!」


「おいおい、またバルドルが一番かよ!」


「当然だろ!」


轟くような声とともに、バルドルが巨大な鉄塊を担ぎ上げる。


「こんなもんでへばってんじゃねえぞ!」


「相変わらず凄いっスね……」


俺は歯を食いしばり、目の前の鉄塊へ手を伸ばした。


――重い。


身体強化を使っても、簡単には持ち上がらない。


「……くっ!」


なんとか持ち上げる。


数歩進んだところで、腕が限界を迎えた。


「そこまで!」


アザレアの声が響く。


俺は鉄塊を地面に下ろし、大きく息を吐いた。


遠くでは、バルドルがまだ訓練を続けている。


(……いつか追いついてやる)


そう思った。


◇


最後の魔力操作訓練では、ロゼが圧倒的だった。


「はい、今回もロゼが一番ね~」


「やっぱりロゼさん凄いっス」


「まあね~!」


球状の魔道具をクルクル掌の上で回しながら、ロゼは得意げに豊かな胸を張る。


俺も魔道具に魔力を巡らせる。


一週間前とは比べ物にならない制御力。


それでもロゼには遠く及ばなかった。


(まだまだだな)


少し悔しい。


だが、不思議と嫌な気分ではなかった。


自分が成長していることは、はっきり分かっている。


なら、もっと強くなればいい。


◇


そして――最後は模擬戦。


「クロス。今日の相手はお前だ」


アザレアが一人の兵士を指した。


「よろしく」


男が前へ出る。


俺も構えを取る。


「なお、今回は魔法の使用を許可する」


周囲から声が上がった。


「アリアリっスね!」


「お、久しぶりだな」


「クロス、頑張って~!」「おっさーん!」


どうやら魔法だけでなく、銘の使用も許可されるらしい。


いわゆる――アリアリ。


俺は一度、深く息を吸った。


「始め!」


号令と同時に、相手が踏み込んできた。


速い。


俺も身体強化を全開にする。


拳を受け流す。


蹴りを避け、こちらも拳を返す。


だが――。


「くっ!」


相手の方が上手い。


攻撃を読まれている。


一歩下がる。


さらに踏み込まれる。


俺は拳を受け流し、その腕を掴んだ。


組み手の形になった。


「――ッ!」


相手の力が強い。


そのまま押し込まれる。


俺は足を踏ん張った。


「――土よ、穿て」


男の足元から魔力が噴き上がる。


次の瞬間、地面から鋭く尖った土の塊が突き出した。


「げっ!」


反射的に身体を捻る。


土塊が脇を掠め、訓練場の地面を抉った。


「こっちは訓練初日だぞ!」


「アリアリなんだろ?それに戦場でも同じ事をいうのか?」


男が笑う。


「…チッ」


男の手に再び魔力が集まる。


俺は腕を離し、距離を取ろうとする。


だが、その瞬間。


足元の地面が盛り上がった。


「なっ――!」


バランスを崩す。


そこへ男が踏み込んできた。


「食らえ!『銘』砂の惑星(ハングバンカー)」

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