↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きみの知らないぼくのこと  作者: さか
新たな始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/62

第六十話



 ――次の日。

 カーテンから溢れる朝の日差しに、凪は眉を顰めた。

「……っ、……眩し……」

 凪はモゾモゾと動きながら、寝返りを打つ。

 その時に薄らと目を開けると、目の前にスヤスヤと眠る律希の顔があった。

「――っ!? り、りりり、律希さんっ……!?」

 凪は驚いた勢いで、ベッドから転がり落ちた。

 その衝撃でドスンと音がして、その音に律希は目を覚ます。

「……、……凪……? 大丈夫……、……って、なんで床で転がってるの?」

「そ、それは……! 律希さんが隣にいるから!!」

 凪がワナワナと震えながら、律希を指しながらそう言った。

 律希は瞬きを数回した後、クスクスと笑い出す。

「同じベッドで寝てただけだよ。それに、離れたくないって言ったのは君じゃないか」

「………………へ……? わ、私……が……?」

 凪は口をポカーンと開けて、律希を見つめる。

 少しした後、記憶が戻ってきたのか、顔を真っ赤にさせて両手を振った。

「――っ、あ、あれは! せっかく近くにいるのに遠いのは寂しいなって思って……、……って、これもなんか恥ずかしい……!」

 凪は恥ずかしさのあまり、両手で顔を覆った。

 そんな凪を見て、律希は愛おしそうに微笑む。



 ――……あぁ、本当に。幸せだな……。



 律希はベッドから降りて、凪の視線に合わせて座った。

 そして凪の頭を優しく撫でる。

「昨日の君、可愛かったよ。年相応の女の子って感じで」

「それって、子どもっぽいって言ってます……?」

 凪の言葉に、律希は小さく首を横に振った。

「……いつも大人びてるから、余計に幼く見えたのが可愛かったんだよ」

「それ子どもっぽいって言ってます!!」

 凪は頬を膨らませて、そっぽを向く。

 そんな凪の顔を、律希はニヤリと笑って覗き込んだ。

「……可愛いよ」

「……そっ、そう言って誤魔っ、……んっ……!」

 凪の言葉が発せられるより先に、律希の唇が凪の唇を塞いだ。

 凪が離れようとした時、律希は凪の後頭部を押さえて逃れられないようにする。


 

 二人の距離が離れた時、凪が律希に思いきり頭突きをした。

 その瞬間、二人して額を押さえて倒れ込む。

「――っ、な、なんで頭突き……?」

「数分前の自分の行動を振り返ってください……! 朝から心臓に悪いです……!」

 涙目で訴える凪を見て、律希はフッと口角を上げた。

「……ごめんね。可愛かったからつい」

 そう言って、律希は額と額を合わせた。

 凪は怪訝そうに律希を見る。

「…………反省、してませんよね」

「する必要ないかなーって。キスしたい時にして何が悪いの?」

「ひ、頻繁にされると心臓保たないんです!」

 凪はそう叫んで、勢いよく起き上がった。そして扉を開けて、律希の方を振り返る。

「洗面台、お借りします!」

 バタンッ、と扉が閉まってパタパタと足音が遠のいていった。


 部屋に残された律希は、ゆっくりと起き上がり、額に手を当ててため息を吐いた。

「…………昨日は、理性があって、よかった……」

 そう呟いて、ガシガシと頭を掻く。



 ――……どんどん、欲深くなってる気がする。凪のことを独り占めしたい……って……。



 そんなことを考えて、さらに大きなため息を吐く。

「……って、おれ、重すぎね。本当に」

 律希も顔を洗おうと、洗面台に向かった。










 

 ――リビングにて。

 律希が顔を洗ってリビングに行くと、何故か正座して床に座っている凪がいた。

 律希はそんな凪を見て、目を丸くする。

「…………え、っと……。何してるの?」

「い、いや……。なんか……、どんな顔していたらいいのか、分からなくて……」

 凪は目を泳がせて、律希と目を合わそうとはしなかった。

 律希はゆっくりと凪に近づいた。

「……怖がらせちゃった……、とか?」

 律希の言葉に、凪はハッとして顔を上げる。

 凪の視界に映った律希は、眉を下げて困ったように笑っていた。

「ち、違います! 私がただ、慣れてないだけで……。律希さんは何も悪くありません!」

「おれも、揶揄いすぎたよね。ごめん」

 そう言って、律希は凪の頭を優しく撫でた。

 凪はぎこちなく笑って、その手を受け入れていた。

「……私も、動揺しちゃって、すみません……。慣れます、これから」

「慣れてくれるの?」

 律希がフッと笑って首を傾げる。

 凪は頬を染めて、律希から顔を逸らした。

「………………だって、私だって……。律希さんに、近づきたいですもん……」

 顔を赤くして言う凪に、律希は目を見開いた後、すぐに目を細めて嬉しそうに微笑んだ。



 ――……あぁ、本当に。君はおれを喜ばすのが得意だよね……。



 律希は凪に手を伸ばして、優しく抱き締めた。

「……うん、ありがとう。その気持ちだけで、嬉しいよ」

 しばらく抱き締め合って離れた後、二人は目を合わせて笑った。

 律希が立ち上がって、凪の荷物を持つ。

「……家まで送ってくよ」

「えぇ!? わ、悪いです! 一人で帰れます!」

 凪も慌てて立ち上がり、荷物を奪い返そうと手を伸ばした。

 律希はその手を取って、ニヤリと笑う。

「おれが一緒にいたいから。……ダメ?」

「――っ! だ、ダメじゃ……ないです……」

 凪は少し俯き、顔を赤くして小さく呟いた。

 そんな凪に、律希はクスクスと笑う。

「じゃあ行こっか」









 * * *








 

 ――凪の家の近くにて。

 凪の家が近づいたところで、凪は律希が持っている荷物に手を伸ばす。

「すぐそこなので、ここで大丈夫です! ありがとうございました!」

「ううん。こちらこそ楽しい一日だったよ」

 そう言って、律希は荷物を手渡した。


 何か言いたげな凪に、律希はキョトンとした顔をして首を傾げる。

「……どうしたの?」

「えっ、あ、えと、その……、……えっと……」

 凪はしどろもどろで、上手く言葉に出来ない様子だった。

 律希は身を屈めて、凪の目線に合わせる。

「なぁに?」

「……また、泊まりに行っても……、いいですか……?」

 その言葉を聞いて、律希はピシッと固まった。

「………………それって……」

 律希が言わんとしていることを察した凪は、真っ赤な顔で律希の口を両手で塞いだ。

「分かってます!! 変なこと言ってるのは、分かってます!! ……でも……」

 そう言って、一呼吸置いた凪は、ゆっくりと口を開く。

「……私だって、律希さんに、触れたいって……、思います……よ……」


 その瞬間、二人の間に沈黙が流れる。


 律希は優しく凪の手を掴んで、自身の口から離した。

 そして真剣な眼差しで、ジッと凪を見る。

「……それって、そういうことでいいの?」

 律希がそう言うと、凪は目を伏せて小さく頷いた。

 そんな凪を見て、律希は安心したように目を細めて笑う。

「…………凪が大丈夫ってなるまで、いつまでも待つよ。その気持ちだけで、おれは嬉しいから」

 律希は凪の頬を撫でる。

 その時に、凪は眉を下げて照れ臭そうに笑った。

「……はい。必ず、伝えます」

「うん。待ってる」

 律希はそう言って、凪の頬から手を離した。

「じゃあね。また連絡する」

「……はい。ありがとうございました!」

 凪はニッコリと笑って、家の方に歩いていった。

 そんな凪の背中を見つめて、律希も微笑む。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。