第五十四話
――体育館にて。
約一ヶ月後に行われる、二、三年生合同の校外学習の班決めのため、体育館に集まっていた。
クラス毎に集まっており、話が始まるまで、生徒達は談笑をしている。
しばらくするとマイクの音が入り、教員が話を始めた。
「……えー、今から校外学習の班決めと自己紹介、校外学習の計画をしてもらう。班決めについてだが、各クラス二人か三人で固まり、他学年のクラスと合体する。どのクラスとくっついても問題ない。班が決まったら、近くの教員に教えてくれ。その後は各自、スクリーンに映し出されていることをするように」
そう言って、教員は話を終えると壇上から降りた。
少しした後から生徒達が動き始め、着々とクラス内でグループを作り始める。
凪もどうしようかと考えていたところ、肩を誰かに叩かれた。
振り返ると、海都が立っていた。
「……あー、よかったら一緒になんねぇ? 見ず知らずの三年生とやるってなった時、凪がいてくれたら心強いな〜って……。……迷惑なら……」
海都は気まずそうに頬を掻いて、凪から視線を逸らして言った。
凪は少し目を見開き、首を横に振る。
「ううん、そんな事ない。私も海都がいてくれたら助かる。よろしくね」
「……それならよかった。……で、どうする?」
海都がパッと周りを見渡すと、徐々に二、三年生の班が出来ているように見えた。
「うーん……、私は海都みたいに部活やってないから知ってる先輩なんていないし……」
「だからといってサッカー部の先輩だけで固めるわけにもいかねーだろ」
そんな両腕を組んで思案している二人に、声を掛けてくる二人組がいた。
「あ、やっぱり二人一緒だ」
「……何で校外学習までこいつらと一緒に行かなきゃいけねーんだよ」
二人に話し掛けたのは、律希と遥人だった。
凪は嬉しそうに顔を綻ばせ、律希に駆け寄る。
「え、え、律希さん!? 何で!?」
「何でって……、二、三年の合同だからいるでしょ。声掛けたのも一緒の班になりたいなーって思って」
そう言って、ニッコリと笑う律希。
凪は同意を得るように、勢いよく海都の方を振り向いた。
「……いいんじゃねぇの? このメンバーなら、俺も気兼ねなく楽しめそうだし」
海都の言葉に、凪はパッと律希の方を向いた。
「よ、よろしくお願いします!!」
「うん。よろしくね」
律希は凪を見て微笑んだ後、遥人の方を見た。
「遥人もいいよね?」
「リツがいいなら俺は何でもいい」
「相変わらず自主性がないなー。嫌なら嫌って言わないと」
律希が口を尖らせてぶーぶーと文句を言うと、遥人は小さくため息を吐いた。
「……本気で嫌ならちゃんと言うっつーの」
遥人の言葉に、海都がニヤリと笑って遥人に近づいた。
そしてそのまま遥人の肩に抱きつく。
「千蔭さんってば素直じゃないな〜。俺達と一緒で嬉しいならそう言えばいいのに〜」
「一言も言ってねぇよ、殴んぞ」
「そんなこと言って〜。本気で殴んないくせに」
そう言って、ケラケラと笑っている海都。
そんな海都に腹が立ったのか、遥人は真顔のまま海都の胸倉を掴んだ。
「……今ここで本気出してもいいんだな?」
「えへー、すみませんー」
遥人はジッと海都の顔を見た後、ため息を吐く。そして、海都の胸倉を掴む手を離した。
海都は軽く身なりを整える。
「じゃ、班はこれで決定ですね。俺、先生に言って来ます」
そう言って海都は凪達から離れ、近くにいた教員に駆け寄った。
そして凪達を指差しながら話すと、その教員は驚いたように目を見開いて凪達を見た。
凪達は訳が分からず、首を傾げてキョトンとする。
「…………私達、何かやばいことしましたっけ?」
「してないけど……、遥人、何かした?」
「する訳ねーだろ。するとしたら蓮實だろーが」
「しっ、してませんよ!」
三人が話している中、海都は軽い足取りで三人に駆け寄った。
「オッケーですって……って、何でそんな俺を見る?」
海都は怪訝そうに三人を見た。
三人は顔を見合わせ、律希がおずおずと先ほどの教員を指差した。
「……いや、さっき、あの先生がおれ達のことを見てたから。……何かしたかなーって」
律希の言葉に、海都は合点がいったように「あぁ〜」と手を叩く。
「俺達って何かと目立つじゃないですか。女装男装してた二人に、サッカー部の部長に、文武両道の俺」
「最後の情報いらねーだろ」
「千蔭さんうるさい。……で、そんな目立つ四人だから大丈夫かーっていう心配」
そう言って、海都は肩をすくめた。
海都の、先生からの言葉を聞いて、凪は心配そうに律希を見上げた。
「……私達って問題児扱いですか?」
「まぁ、少なくともおれと蓮實さんは、ややこしいって思われてただろうね」
律希は苦笑いを浮かべた。
しかし遥人は腕を組んだまま、真顔だった。
「……リツは別に問題児じゃねーし。問題あるのはそこの二年二人だろ」
眉を顰めた凪は、遥人の方を向いた。
「少なくとも私は問題起こしませんよ」
「おい凪、ふざけんな。俺だって問題起こさねーって」
そう言って、お互いに睨み合う二人。
そんな二人を見て、律希はクスクスと笑い出した。
「……やっぱり、この四人がいいな」
律希のその呟きは、誰の耳にも入らず、かろうじて遥人の耳に掠めた。
遥人はちゃんと聞き取れず、律希の方を見て首を傾げる。
「リツ?」
「いいや、ごめん。何でもない。……色々決めた方がいいんじゃない?」
律希は筆記用具を取り出した。
律希が動いた事によって、他の三人も動き始めた。
「……そうだな。サッサと決めて帰るぞ」
「じゃあ俺は自由行動場所調べまーす」
「わ、私はお昼ご飯の場所、調べます!」
そうして、四人は校外学習の計画を立て始めた。
そんな四人の様子を、遠目から見ていた教員達が心配そうに見つめていた。
女性の教員が、男性の教員にコソコソと耳打ちをする。
「……だ、大丈夫ですかね。あそこの班……」
「問題は起こさないと思うが、……、……なんというか、目立つな……」
「まさか蓮實さん達と園田くん達がくっつくとは思わなかったですね」
チラリと凪と律希の様子を見た男性の教員は、小さくため息を吐いてフッと笑う。
「…………まぁ、いいんじゃないか。あいつらがああやって過ごせてるなら」
そう言って、教員達は他の班の様子を見に歩き始めた。




