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異世界伝承記  作者: メロンソーダ
公国編
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74/75

神秘と秘匿の国 サクラ公国

今更ですが各国の街の名前はそのモチーフになった国と街の特徴から文字ってつけています。

公国は日本の固有種の花の名前にしました。都だけ違うかもしれません。多分。

(その場のノリで決めているので…(笑))

険しい山道を延々と歩く。舗装が全くされておらず、所々地面が陥没していたり岩が転がっていたりと今までの中で一番過酷な道のりだ。


「あれ~~ここまで酷い道じゃなかったはずなんだけどな」


カグヤが転びかけたユキの手を取りながらぼやく。数カ月前、コーンヴェルへ行くためにここを通った彼はその時とは少し違う光景に首を傾げていた。


「魔物や山崩れかな」


「うーん同胞に聞いたときはちょっと荒れてるぞ★ぐらいしか言ってなかったんだよなぁ」


「足腰鍛えている人のちょっと★は当てにしたらだめじゃない?」


誠司のツッコミにそうかぁとカグヤは頷いた。真由も何度も足を取られそうになっていた。隣の誠司にほぼしがみついている状態だ。幸い周辺に魔物や瘴気の気配はない。カグヤが時折森の方へ手を振っている。おそらく山道を警備している忍者だろうか。もしかしたら森の中からこちらを守ってくれているのかもしれない。お礼を言いたいが隠密部隊だからとカグヤがやんわり流している。


「今日中に最初の街に着けそうか?」


「多分!つーか、今日中に行けないと天気悪くなりそうだから危ないな」


空を見上げながらカグヤが呟く。真由もつられて見上げると空は灰色の雲が広がっている。風も冷たくなってきた。雪国育ちの真由のカンがささやく、そろそろ雪が降るのではと。さすがに冬の野営は厳しい。一行は何とか前へと足を進めた。

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あれから数時間歩きやっと最初の街、いや集落へと着いた。集落の名はヤマブキというそうだ。馴染みのある花の名前に誠司はなんだか安心感を覚えた。集落の家は歴史の教科書や資料館で見たような昔ながらの家の造りをしていた。屋根は急勾配の寄棟で土台は束を用いて高さを上げている。


「本当昔の日本そっくりだ…」


「驚きだよね…」


日本人の真由と誠司は息を切らしながら驚いている。話には聞いていたが本当に昔の日本人が異世界で国を創り上げた事実にただ驚くことしかできない。


「ここで驚いていたら都だともっと驚くぞ」


近くの民家に声を掛けに言っていたカグヤが戻ってきた。あまり都の話を聞いたことは無いが、堅牢で城があるらしい。どのくらい規模が違うのだろうか。気になるが今は休息が先だ。カグヤが借りた空き家に一行は腰を下ろした。


「さてここからだけど…まずは瘴気の核の浄化だね。公国は三か所発生している。一番近いのは…」


「この次の集落の近くだな。祭事に使う泉があるんだけど、その近くに出現したらしい」


獣人族の聖域に次いで二か所目の聖域だ。本来なら聖なる力で守られるはずの場所に出来ているということは、やはり神の―恵みの力が弱まっているのだろうか。


「ほかは?」


「残りは都の近くと公国の港町にある。ただその二つはそこまででかくないらしい」


公国の地図を広げてカグヤが指を指す。公国の港町は湾のような形をしており、海を隔てた反対側は王国のヴァランスだ。以前ヴァランスで瘴気の気配をうっすら感じたとき、風に乗ってきた瘴気はここのものだったのだろう。真由は一人納得している。


「じゃあ道にそって進んで一か所目を解決してそのまま都行くか」


「そうだな。一番心配なのは冬に入ったことだな…ペース配分は気を付けよう」


クラノスの言葉に全員賛同し、アイラと真由は台所を借りて夕食の用意を始めた。

---------------------------------------------------------------------------

「集落の人が野菜と肉分けてくれたぞ」


「ありがたいね!うーん温かいもの食べたいし…お鍋にする?」


「いいなそれ!よし真由は炊飯頼んだ、アタシは具材処理するわ」


今晩はすっかり冷えた体を温めるための鶏肉の鍋だ。根菜に白菜ににた野菜まで分けてもらえた。空き家の持ち主に挨拶をしたときに心の底から歓迎してもらえたのもありがたいことだ。


(期待にはちゃんと応えないと…)


米を研ぎながら真由は心の中でつぶやいた。残る瘴気の核は公国内と王国にある四つだ。すべてを浄化し、魔王も倒し、そして帰還する。帰還したら小野田家を探しフユミのことを伝える。これが真由の目標だ。ルークス邸を発ってからユキとアルベルトにフユミの話や旅路を聞き、真由なりにまとめ始めている。歴代聖女達も同じように生きた証を伝えたいが、情報が一切ない。


(そうだ五代目…確か公国の初代公主だよね、五代目のことならなら公国内にいっぱいお話残っているかも)


カグヤと初めて会ったとき、カグヤの上司アズマから聞いた話を思い出す。自分たちのことは秘密にするよう指示をし、秘匿主義が現在まで続いている。きっと召喚の時に色々あったのだろう。


「ん、あれ水がうまく出ないな」


アイラの声で真由は我に返った。顔を上げるとアイラが水を流すためのポンプのようなところで首を捻っていた。寒さで固まったのだろうか。


「私カグヤ呼んでくるよ」


頼んだというアイラの声を背中に真由はカグヤを探しに外へ出た。確か裏手でユキの護衛をすると言っていた。案の定裏手にはユキとカグヤが何か会話をしていた。


「…の…はまだ…」


何か深刻な顔をして会話をしている。何かあったのだろうか、声を掛けようと息を吸い込んだ瞬間カグヤがユキを背に庇い即座に振り向きクナイを構えた。素早すぎる動きに思わず固まる。真由であることを確認するとカグヤは悪い悪いと両手を上げた。


「すまん、なんかあったか?」


「えっと、あ、あの台所の蛇口が調子悪くて…」


「あぁあれか、この季節なると冷えてうまく動かないときあるんだよな。今行く」


ユキに視線を向けユキも気まずそうに頷くと二人は歩き出した。ユキは魔法を使用していたのだろうか。薄っすら魔力の気配が残っている。


「ユキ、魔法の調子悪いの?鉱山行った後からずっと魔法書読んだりしてるし…」


「え、いやそうじゃないの!ちょっと今後のために復習しようかなって!」


ユキは慌てたように手を振った。だがその眼は真由を見ずに左右に泳いでいる。鉱山に行った後からユキは勿論日中は買い出しに行ったり魔法を教えたりしてくれるのだが、こうやってカグヤを伴い人目に付かないところでこそこそ何かを試していたり、魔法書を何度も読み漁っていたりしていた。勤勉なのかと思ったのだが、決して何をしていたのか真由に言うことは一切ない。それに真由以外の仲間達とこそこそ話していることもある。


「そう…勤勉だね」


真由は声色を思わず落として返した。真由だけ仲間外れにされている状況に薄っすら気付いてはいるが、真由は気にしないように振舞っている。きっとみんな世界のが良くなるように色々考えているのだろう。そう信じたい。


(なんだろうな…ちょっと嫌な感じ)


正直ずっとモヤモヤしている。ユキは時折誠司と夜遅くまで何かを議論しているのだ。誠司もずっと何かを考えているのかコーンヴェルを発ってからあまり会話らしい会話をしていない。その様子を見ていると真由はなんだか胸の奥がモヤモヤするのだ。嫉妬だろうか。


(…誠司は私の近衛騎士なのにな…ユキばっかり構って)


でも決して口にしてはいけない。今後も旅は続いていくのだ。ここで仲間割れしている場合ではない。いつかきっと誠司はこっちを見てくれるし説明してくれる。今はそう信じるしかない。


「真由~水でた~~~!!」


台所から聞こえるアイラの声で我に返る。ずっと下を見てぼうっとしていたようだ。冷たい風を受けて冷えてしまった。温かい湯気が立ち込める台所へと真由は足を走らせた。

---------------------------------------------------------------------------

「あぁ~~この味がしみた豆腐が最高なんだよなぁ」


出来上がった鍋を囲炉裏へ運び、全員で囲んで座る。筋肉が分厚いクラノスは座布団の上に座るのが大変そうだ。真由は初めて見る囲炉裏に興味津々だ。


「ここで魚とか団子も串にさして焼けるんだぜ」


「ほう、団らんもできるし料理もできる、おまけに鍋をつるせば温かいものが常時食べられる…素晴らしいね囲炉裏は」


「これ私の住んでた集落のおばさん達の家にもあってね~たまに御馳走なってたんだ~管理大変だけど良いよね」


「煤と灰が多そうだからな…掃除が大変そうだ」


真由は仲間達の会話を聞きながらゆっくり食べ進める。久々に食べる豆腐が美味しくてたまらない。分けてくれた村人に明日心からお礼を伝えようと密かに決めていた。豆腐は良い、安いし体に良い。ひき肉系料理のかさましにも使える。父から渡される生活費が少なくなってきたときにとても助かっていた。


(豆腐ともやしが命綱だったなぁ)


今のように食べ物を分けてくれる優しい隣人なんていなかった。叔父夫婦に頼めば助けてもらえただろうし、祖父母が残してくれたお金を使えば良かった。だが育ちざかりが三人いる叔父一家の負担やあの両親のために自分のお金を使いたくないという意地で絶対にしなかった。そもそも窓際社員で給料が低い父が悪いのだ。篠澤家を見習ってほしい。


「ご飯もおこげが美味すぎる…真由、お代わりもらってもいい?」


「いいよ、おこげ多めにするね」


久々に誠司と会話をした気がする。お茶碗を渡された真由は手早くおこげ多めにご飯をよそい、誠司へと返した。誠司は満面の笑みでお礼を言うと漬物と一緒に白米を口へと運んだ。真由も漬物を咀嚼する。歩き疲れた体に染みる塩分が美味しい。昔祖母がぬか床を持っていたのを覚えている。祖母が亡くなった後、あのぬか床はどうなったのだろうか。懐かしい味を異世界で味わえるとは思わなかった。


「さて雑炊作って食ったら順番に風呂入るか」


「あじゃあ今のうちに窯に薪入れて着火するか、旦那か誠司手伝ってくれる?」


「私が行こう、誠司は焦らず食べていなさい」


「ありがとう、食べたら行くね!どんな感じか見てみたいし!」


案内された時に風呂場をのぞいたら丸い大釜のような形をしている浴槽があった。五右衛門風呂、というものだろうか。温かい湯に浸かれるのは非常にありがたい。真由はひそかに楽しみにしていた。


「それにしても五代目聖女が召喚された時ってことは…ここと現代は300年離れているからだいたい1300年…鎌倉時代ぐらいかな、湯船につかる習慣って江戸時代からだったような気がするけど」


「こっち元々湯船使う習慣あったみたいだしそれに合わさったんじゃないかな」


「それもそうか、郷に入っては郷に従えだね。そのおかげで俺ら助かっているし!」


誠司の知識量はすごい。真由は鎌倉時代なんてなんか争っているぐらいの認識しかないのに彼は生活の背景まで知っている。どこで覚えたのだろうか。(※同人誌作成のための情報収集)


「よし、いったんごちそうさまでした!お風呂場みてくるね!」


誠司はお椀を丁寧に置くと手を合わせてカグヤとクラノスが作業している風呂場へと走っていった。真由はその姿を見送ってからユキに顔を向けると彼女はお椀を手に難しい顔をしていた。声を掛けようか悩んだがまたはぐらかされるのだろう。真由は何となく気まずい時間を過ごした。


「ユキ、進んでないけど具合大丈夫か?」


「あ、ごめんごめん大丈夫!考え事してただけ!」


アイラがそんな空気を破るかのようにユキに声を掛ける。ユキはぱっと顔を上げると何でもないと首を振った。お椀に残った汁を飲み干し雑炊が楽しみと笑う。アイラもそうかと笑うと作業に戻った。


「アイラ、私先にお布団敷いてくるね」


「おう、ありがとな!」


真由はそそくさと理由をつけてその場を離れた。とは言っても居間の続き間なのだが。この広間で布団を敷いて雑魚寝をする。一人火の番で交代で起きるが、それでも気分は修学旅行だ。…と誠司が言っていた。小中の修学旅行は欠席したり、高校も欠席する予定の真由はその空気感がわからないが、誠司がそう言うならそうなのだろう。少し楽しみだ。きっと宿泊研修とは違うのだろう。


「おぉーいできたぞ!」


布団を敷き終わったあたりでアイラが風呂場へと声を掛けている。男性陣から木魂のように返事が返ってくる。最近色々思うところがあってあまり深く寝つけていない。今日は温かい食事と風呂でゆっくり寝れるだろうか。真由はそんなことを願いながら食卓へと戻った。

異世界に日本家屋と文化あるわけないだろと思いますが見逃してください(笑)

公国はだいたい鎌倉時代あたりの集落をイメージしています。というか年代遡ったらそうなった。

調べながら書きますが色々多めに見てください、だってファンタジーなんだし!(笑)

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