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俺の閣下  作者: テディ
本編
98/186

第97話 凄腕

ヘアネシア王国に戻ったクアドロは

いつもの穏やかさは、どこにいったのかという位

疾風のように準備を整えた。


まず両親。兄弟。重鎮に議会。

特に議会に至っては、緊急と言って

夕刻には必要なメンバーを全て集め、

婚約を認めさせ、国内外に発表までおこなった。


王宮内は、蜂の巣を突いたような騒ぎになり

、大騒ぎになった。


もちろん影ではヴェルデとツァイトが、

殿下にやる気が満ちあふれてる内にと

重鎮達を次々に説得し、リリーが

いかにクアドロの妻にふさわしいか力説して歩く。


おかげで皆が、リリーを拝謁できるのを

心待ちにする程になっていた。



ヘイネシア国王は、驚きと喜びを同時に持ち、

それでも国王らしく穏やかに、事にあたった。


ーーどの程、この刻を待ったことか……!!


国王は、出来るだけ暖かな気持ちも込めて、

婚約を発表し、グリフィス王国が

寛容に見守ってくれる事に感謝を示した。



ーーかたや、知らせを受けたグリフィス王国側は

クアドロの本気さかげんに舌を巻いた。


真剣だと思ってはいたが、あまりに早く届いた知らせに、オーリーは大笑いした程だ。


「な、言った通りだろう?」


ルークも、ジョシュも、カイまでもが苦笑した程、

それは早い仕事ぶりだった。


ソフィアは、ま、そうなるだろうと思うと同時に

リリーの気持ちがついていっているのか

心配になった。


自分達は、特に自分はグリフォンからの導きがあり

両者納得の上で発表だった。

一方でリリーは、同じ聖動物からの導きではあるが、

リリーに納得や実感出来るだけの時間はなかった。

自分で手助けしたとはいえ、こんなに速くクアドロが

事をなしえるとは、想像外だったのだ。



ソフィアは、ジョシュアに頼み

終業後直ぐにリリーと会えるように

してもらった。



今日は外にしよう。ジョシュに結界を

張って貰えば良い。


お気に入りの場所に、テーブル席を用意してもらい

暖かな夕暮れのお茶会にしよう。


ちょうど美しい夕焼けが

空に広がっていた。


春の花達は、葉や実に役割を引き継ぎ、

変わりに次の季節の花がつぼみを持ち出していた。


リリーは、時間通りに席についた。


「ソフィ、ご招待ありがとう」

「いや、私がリリーに会いたかったのだ。

連日、無理を言ってすまん」


ソフィアは、珍しく紅茶を勧めた。

「モリンから教えてもらったのだ。

高地で取れる茶葉だそうで、1番積みの葉は

特に貴重なんだそうだ。知ってたか?」

「いいえ、知らなかったわ。いつもより

香りが濃い感じがするのね」


リリーはそう言うと、ゆっくりとお茶を楽しんだ。


「ああ、美味しいわ。柔らかな味で、

だからこそ香りを楽しめるのね」

「そうだな。何でも奥が深くて面白いもんだな」


「ああ、何だかやっと日常に戻った気がするわ」

リリーは、クスクスと笑っていた。


ソフィアは、真顔で尋ねた。

「リリー、クアドロ殿下の求婚を

受けたのだな」


「ええ。まだ実感がないわ。

この先、うまくいくかも分からないし」

そうは言っているものの、リリーは

そんなに心配そうではなかった。


「クアドロ殿下を好きか?」


ソフィアの質問にリリーは笑い出した。


「ソフィ、まだ分からないわ」

「分からんのに求婚を受けたのか?」


リリーはまだ笑っていた。

「ソフィ、正直に言うと貴族の結婚は

そんな贅沢は言えないと思ってたの。

私達は、やらなければならない事や

周りから望まれる理想像があるわ。

あなたが仕事で国民の為に働きたいと

思っていたように、私もどんな形か

分からないけれど、人の役に立つ事が

大切だったの。それは自分の為にも

家族の為にも」


「そうだったのか……」

ソフィアは、とても驚いていた。


「別に身分のある方と

結婚したかったわけではないわ。

でも自分から誰かに愛情を傾けて、

自分が誰かのために役立つチャンスを

捨ててしまうのは私には出来そうになかった」


「リリーらしいな」

ソフィアは優しく微笑んだ。


「だから恋愛や結婚に理想がなかったのよ。

変な期待がなかったのが、良かったのかも」


リリーは、少し顔を赤らめて続けた。


「クアドロ殿下に望んでいただいて、

翌朝早く起きて考えたの。

こんなに自分を望んでいただいたのだから、

1歩進んでみても良いのかもって」


「そうか」


「それにね、クアドロ殿下に

立ち上げる商会をやり遂げて良いか

お聞きしてみようかと思って」


「それは良い考えだ!!

ぜひ話してみれば良い!!」


「結婚後は、利害が絡んでしまうから

表立っては出来ないわ。でも軌道に乗せて

マイアとモリンが働きやすくしておきたいの。

反対なさったら婚約は破棄して頂こうと思って」



さすがのソフィアも、たじろいだ。

婚約を破棄した女性は、まだまだ噂の

対象になる。次の縁談が来なくなる

可能性もあるのだ。


「リリー、そんなに生真面目にならんでも……」


「いいえ、ソフィ」

リリーは、柔らかく首を振った。


「私、自分の責任を認めて下さらない方を

尊敬できる自信がないわ。

でも殿下は第1王子なのよ。

殿下にも譲れないものが、お有りだと思うわ。

それならば仕方ないわよ。運命ではないのだわ」



ソフィアは、清々しく述べる友人に

呆気に取られていた。


これはこれは……。我が友人らしく

世の常の先を望んでいるらしい……。


ふむ……、クアドロ殿なら知恵を出すだろう。


ソフィアは、そう思いリリーを応援する事にした。


「リリー、友人として誇らしい気分だ。

ぜひクアドロ殿に、話してみると良い」


そう言って、紅茶を飲んだのだった。

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