第94話 各々
オーリーは、無事に残業を終えた。
真っ赤な顔をしたリリーを、リリーの兄に送り届け、
あとで説明しろっ!!と無言の圧力を受けた。
明日、皆に分かるだろうと伝え、早々に引き上げる。
ーーまったく、ソフィのヤツ。あてられるこっちの身にも……。
……っって分かってないか……。
王宮のバーガンディ色の絨毯が敷き詰められている廊下を
急いで歩く。
目指すのはルークの王宮内の私室だった。
ソフィアには明日の朝、ルークから報告する事になっている。
オーリーはルークに報告する事になっていた。
ルークの部屋を訪れるとカイも来ていた。
「おお、お疲れ」
オーリーはいつものように声をかけた。
「オーリーもお疲れ様。長い業務で大変だったね」
カイはニコニコしていた。
「お前ほどじゃねぇよ。ルーク、報告は聞いたのか?」
「ああ、ちょうど聞き終わったところだよ。2人ともお疲れ様。
食後酒を用意してもらったから、どうだい?」
オーリーはニヤッと笑った。
「もらおうか」
しばらくの間、それぞれが忙しかったので
久しぶりに顔を合わせている気がする。
ルークは、珍しく強い酒を口に含んで尋ねた。
「それで?リリーはどうだった?」
「案の定、即婚姻の申し込みだ。リリーの兄に
迎えにきてもらったんだが、物凄い形相で睨まれた。
俺を睨んでも、しょうがねえんだけどな。
リリーが真っ赤な顔でふらふら出てきたら、そりゃそうなるか」
ルークは、少し眉をひそめた。
「あのクアドロ殿下にしては、ずいぶん性急だね。
リリーは、もちろん大丈夫だったんだろうね?」
「まあ、抱きしめられるくらいはしてた。
あちらは運命を見つけたと思っているんだ。
よく我慢した方かもな」
オーリーは、笑っていた。
カイも少し心配している。
「今頃、リリーの家は大騒ぎだよ。父上と兄上達が
深刻な顔で話し合っているかも」
「そうだろうな〜〜。あの兄達に、ずいぶん縁談を
なかったことにされていたからな」
苦笑するオーリーに、ルークは微笑んだ。
「今回は、影の力は入らないだろう。何と言っても
他国の第一王子だ。公爵が理由もなく断るとは思えない」
「明日の朝一番、帰国前に挨拶に行くらしいぞ」
カイは驚いていた。
「それは早いね〜〜。さすがと言うべきなのかな。
リリーの気持ちが追いつけばいいけど……」
ルークは考えていた。
「1国の王子の婚姻だ。しかも国民はクアドロ殿下の
結婚を待ち望んでいた。少なくとも半年から1年
準備期間はあるだろう」
「いいや、半年だ」
そんなルークに、オーリーは断言した。
「どうしてそう思うの?」
カイは首を傾げている。
「殿下の、あのご様子じゃな……。速攻で話をまとめるぞ。
有言実行の方だ。間違いなく最速なはずだ」
カイはさらに驚いていた。
「そりゃあまた……、ずいぶんと見初められたものだね……。
ルーク、念のために調べようか?」
ルークはうなずいた。
「そうだね、念のために頼むよ。仕事が増えて申し訳ないけど……」
「やだな、何を言ってるのさ。このくらい簡単に調べられるよ。
リリーに幸せになってほしいし、ルークが心配のあまり老け込んだら
困るからね」
カイはいつものニコニコ顔に戻っていた。
「皆、年頃だものね。結婚ラッシュだ」
「カイ、お前はどうなんだ?誰かいないのか?」
カイは、急にため息をついた。
「僕、結婚に向いていないのかも。いいなって娘と
デートしてみるんだけど、いまいち違うんだよね〜〜。
しばらくは、いいやって思って」
「ここにも面倒くさいのが隠れていやがった」
オーリーは、優しくカイを見て大笑いしていた。




