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俺の閣下  作者: テディ
本編
91/186

第90話 思案

 昼食を終えたクアドロ達は、クアドロに用意された客間に

ヘイネシア王国の者、全てが集まった。


部屋付きの侍女が、お茶や、果物の準備をして

部屋を下がった。近衛はドアの外で1名待機だ。


クアドロとツァイト、ヴェルデはソファに腰掛け一息ついた。

騎士と近衛に隣の書斎で休んでいいと告げ、

ヴェルデは、紅茶に手を伸ばした。


クアドロがクスクス笑いだす。

「それにしても、あの2人の魔力と言ったら……。

恐ろしいものがあるな」

「殿下、久しぶりに興味深い方達です」

ツァイトは、にこやかに返事をする。


「ツァイト、あの御二方と同じ内容ができるんだな?」

ヴェルデは心配だった内容を尋ねた。


「ええ、もちろんです」

答えるツァイトの表情は、穏やかなものだった。


クアドロも紅茶を1口ふくんだ。

鼻から抜ける、爽やかな香りと渋みの少ない味。

間違いなく自国でも美味しいと言われる味だろう。

歓待されていることにホッとする自分がいた。


自分も万が一の時のために、訓練しなければならない。

クアドロは、国内の騒音を抑えることを決心していた。


ヴェルデは、この後の話し合いのためクアドロに尋ねることがあった。

「殿下、グリフィス王国とは親交を深めることができます。

他国はいかがいたしますか?」


クアドロは、少し厳しい顔をしていた。

表情とは裏腹に、室内を見る。華美ではないが、しっかりした家具。

フカフカの絨毯。落ち着いた色合いでまとめられている。

デスクにある紙のセット、文具。ライトは植物の形を模したガラスでできている。

紙質もしっかりしており、文具もペンからインクまでなめらかだ。



……良き職人が、安心して稼業に励んでいるのであろう。

我が国も、なかなか良いと思ってはいるが、グリフィス王国も

目指している道が一緒らしい。まずは民のことを……。


クアドロは、おもむろに顔をあげた。

「ヴェルデ、他国の情報はどこまできている?

聖動物の動きもつかめたのか?」


ヴェルデはニヤッと笑った。

「殿下、グリフィス王国もなかなかの手腕ですが、

我が国もなかなかのものですよ?」


「そうか。では安心だな」

クアドロは笑い出した。


細々とした報告を聞きながら、打ち合わせをし

だいたいここが落とし所になるだろうという点を見つけ

クアドロは満足した。


「では、行くか……」


ソフィアから、休憩後会議室ではなく

サロンで話すのはどうか尋ねられていたのだ。


「確かに、話し合う内容に似つかわしくない場所です。

でも……、申し訳ない。私が会議室に飽き飽きしているのです。

結界を張りますので、いかがですか?

頭が固くなって動かなくなりそうだ……」

そう言ったソフィアに、クアドロは大笑いして了承したのだ。


 

 それは……、あまりにも突然に、そして自覚もないまま訪ずれた。


クアドロがサロンに通されると、ソフィアの隣で立ち上がった女性がいた。

ソフィアと同じ金髪だが、目は薄いブルーで、まるで青龍の瞳のようだ。

今にも風に飛ばされてしまいそうな細身だが、そのたたずまいから

きちんと教育を受けたものの気品が出ている。


その女性は、ソフィアの一歩後ろに下がり王族への礼をとっていた。


ソフィアが立ち上がり、にこやかにクアドロを迎える。

「ああ、クアドロ殿、すまない、先客があったのです。

私が、この時間しか空いていなかったので」


そう言ってソフィアは握手を求めた。


クアドロも、握手を差し出そうとした時、突然龍達が頭に絵を描き出した。

青龍は笑っているように見える。

その先には、ソフィアではなく、後ろの女性が見えた。


一瞬のことだった。

不可思議に思ったソフィアが、戸惑っていた。

「クアドロ殿?申し訳ない、気分を害されたか?」


クアドロの後ろでは、してやったりという顔をしたヴェルデと

おや、まあ、といった顔をしたツァイトが控えていた。

が……、もうかまってはいられなかった。


かろうじてソフィアと握手をし、挨拶をした後は、

もう止められなかった。


「ソフィア殿、ご友人を紹介いただきたいのですが……。

あつかましいでしょうか……?」


クアドロの視線は、礼を取り続けている女性に向いていた。


「……??いいえ、もちろん紹介します。私の大切な友人ですから」


そう言って、ソフィアは女性に声をかけた。


「リリー、こちらへ」


その女性は、美しく、そして派手にならないように、居住まいを正した。

礼儀正しく、視線は床にむいたままだ。

クアドロは、その視線を自分にむけてもらえないことに苛立ちを感じた。

それが、とても理不尽な感情だとしても押さえられなかった。


「ヘイネシア王国のクアドロ・シス・ヘイネシア殿下だ。

ご挨拶を……」


ソフィアは、リリーなら突然でも問題ではあるまいと

自己紹介するように求めた。


リリーは、美しく挨拶をした。


ドレスを少しつまんで持ち上げ、膝を深く折って身体を沈めた。

「クアドロ・シス・ヘイネシア殿下。思いがけず拝謁できる喜び、

深く感謝申し上げます。ソフィア閣下のお言葉に甘えて、

謁見に訪ずれた私の至らなさでございます。

どうぞ、ご無礼をお許し下さい……」


クアドロは、謝罪するリリーに思わず駆け寄った。

ひざまづくように礼をとる彼女に、優しく両手で

彼女の腕を支え、立ち上がらせ微笑んだ。


「いいえ、ソフィア殿にも、貴方にも

お会いできて本当に良かった」


ソフィアの頭の中は、疑問だらけだった。

クアドロを怒らせたかもと思った瞬間、

グリフォンが大笑いしている絵が頭に浮かぶ。


……ああ、……そうだったのか……。

ソフィアは微笑んだ。


訳がわからない者達を放っておいて、クアドロに祝福を述べた。


「クアドロ殿、おめでとう。貴方も見つけたな。

さ、これで心置きなく問題解決に向かいましょう。

早く片付けないと、蜜月は過ごせないのですよ?」


蜜月の意味をはっきりと把握していないソフィアに、

ルークとオーリーは、天井を見上げたのだった。

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