第89話 反復
ジョシュアは、定位置について
ソフィアの魔法を待っていた。
ーーさて、ここからは集中力だ。
ソフィアには言わなかったが、ジョシュアも
無詠唱を試すつもりだった。
無詠唱は、ジョシュアにとってラクな方法だった。
小さな頃から、こちらの方がラクで
なぜ皆は、わざわざ面倒な呪文を唱えるのだろうと
不思議に思っていたくらいだ。
カイから、無詠唱だと魔法を発動できないと
聞いた時は本当に驚いた。
魔力の差なのか、個人差なのか
理由は分からないが、普通は無詠唱では
発動しないようだった。
ソフィアは、まだふてくされた顔で
ジョシュアを見ていた。
「皆、用意は良いか?」
ジョシュアとアヴニールは、静かにうなずいた。
ソフィアが仕掛けを完成させると、
ジョシュアも今度は花から距離をとった。
手をかざす……。
あぁ、やはり発動は緩やかだな。
そう思った瞬間、反対の手を握りこぶしにした。
前胸に隠した魔具と、アヴニールの魔法が
同時に起こった気がする。
もちろん、花は再び浮いていた。
ジョシュアは皆を振り返って見た。
「閣下、クアドロ殿下、ご覧になっていかがでしたでしょう?」
「いかがと言うのは、初見と言うことでいいのかな?
ジョシュア殿、医療団責任者殿、花がなければ何が起きたか
気がつかないでしょう。ああ、医療団責任者殿、あとで名前を教えていただこう」
クアドロは、おもしろそうに答えた。
そしてソフィアを見る。
「ソフィア殿、貴方はどのように……?」
「クアドロ殿、貴方と同じ意見です」
そう言ったソフィアも微笑んでいた。
テオドアが、次の課題に切り込んでいきた。
「さすがジョシュア殿ですね。体調は前回と比べていかがですか?」
「テオドア殿下、問題ありません。衝撃もありませんでしたし、
魔力も9割は戻っていると思います。
前回は私に残っている魔力は1割あるかどうかだったようです。
ですので、魔具と回復の魔法で8割は回復できたことになります」
「ジョシュ、それでは2回発動するのは危険ではないか」
ソフィアは、顔をしかめた。
ジョシュアは、やはり微笑んでいた。
「いいえ、閣下。2回目は回復を5割できれば充分ではありませんか?
そのくらい残っていれば、緊急事態に結界、転移魔法が使えます。
いかがでしょうか?」
「それはそうだが……」
「閣下、訓練なのですから試しましょう。こんなに安全な状態で
魔力について実験ができるのですよ?
閣下もご覧になりたいでしょう?」
ジョシュアに言われて、ソフィアは思わず目をか輝かせた。
……確かに……、魔力の増減を訓練できる……!
ーーいかん、いかん。ジョシュに乗せられるところだった。
「ジョシュ、その手には乗らんぞ。お前は2つ魔具をもて。
アヴニール、ジョシュの言うように5割りに戻せるか?
戻した後に、お前に倒れられては敵わん」
アヴニールは涼しげな顔をしていた。
「閣下、問題ないかと思います。ただ魔具を2つ持っておく必要が……。
先ほどの魔具はランクを上げましたので、2つ目の魔具は当初の予定通り
ランク3のものでいかがでしょう。私の魔力はかなり温存できましたので……」
「そうしてみよ。さすがにランク2の魔具を連発するわけにいかんからな。
本番は、ランク2をもう1つ予備として持っておけ。さすがに1人で3回の発動は
ないと思うが、念のためだ」
「かしこまりました。では閣下。ご準備を……」
ソフィアは無言でうなずいた。
仕掛けを発動させ、ジョシュアを見る。
「2人とも、いつでもいいぞ」
ジョシュアとアヴニールは顔を見合わせた。
お互いに視線をかわし、静かにうなずく。
ジョシュアはさっきよりも、花との距離をかなりとっていた。
サッと手をかざす瞬間に左の拳を作る。
周りの皆には、ジョシュアが手をかざしただけに見えた。
結果……、こともなく解放の魔法は成功し、
ソフィアは侍医団と医療団を呼んだ
ジョシュアの魔力も4割り戻った。問題はアヴニールの魔力だ。
アヴニールも4割りの魔力を残していた……。
予想より、魔力は回復しなかったが、予後を動けるようにすると言う
目標は達成できたわけだ。
ソフィアは、密かに胸を撫で下ろした。
もう少し、安全を確保できるようになるだろうか……?
……少し考えねば……。魔具をいじるか……?
こうして、ツァイトもジョシュアと同じ訓練をやってのけ、
早々に、訓練は終了したのだった。




