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俺の閣下  作者: テディ
本編
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第84話 逸材

 訓練場に移ったツァイトは、どこか楽しそうだった。

ヴェルデが苦笑しながら声をかける。


「ツァイト、気持ちは分かるがワクワクしている場合なのか?」

「どうせ訓練なら、楽しんだもの勝ちだろう?」


そう言ったあと、急に真剣な顔になった。

「今回は1番危険なところはジョシュア殿がやってくれたんだ。

私も役に立ちたい」


ヴェルデはポンっとツァイトの肩を叩いた。

「そうだな。気をつけるんだぞ」

ツァイトは、元の笑顔に戻った。

「ああ、気をつける」


全ての準備が整い、魔具をもったツァイトは、ソフィアに

うやうやしく頭を下げた。


「ソフィア閣下、こちらの準備が整いました。

あとは閣下のタイミングで、開始してくださるよう……」


ソフィアは、クアドロを見た。クアドロは静かにうなずいた。


「ではツァイト殿。いきますよ……」


ソフィアも静かに答えた。

先ほどと同じように、花が1輪ふわふわと空中に浮いたかと思うと

ポトリと地面に落ちた。


ツァイトは、魔具を懐の中に隠した。

ジョシュアと同じように、立ったまま地面の花に手をかざす。

小声で、長い呪文を唱えていた。


次の瞬間、ツァイトの体がグラリとかたむいた。

が、……何とか立っている。


花は再び、空中に浮いていた。


「ツァイト!!」


今度はクアドロとヴェルデが、ツァイトのもとに走っていた。

ソフィアも、大きく声をかける。

「ツァイト殿!!」


ツァイトは、先ほどのジョシュアと違い、よろけながらも

話すことができた。

「殿下、閣下……、大丈夫です。余力は残りました。

歩けます」


ツァイトは、そういうと訓練場に備えられた椅子まで歩き、

お言葉に甘えてと言いながら、椅子に座り込んだ。


「侍医団、医療団!!入れ!!」

ソフィアの一言で、医師達は雪崩れ込んできた。


代わりにソフィアが、オーリーと控えの間に移る。

治療行為の間、異性が部屋を出るのは当然だった。


 静かになった控えの間で、ソフィアはオーリーに本音を漏らし出した。

「オーリー、ジョシュが倒れたときにゾッとした……」

「よくこらえたな……。俺も頭では分かっていたはずなのに

衝撃を受けた。やはり訓練は大切だな……」

「……身分なんて無くしてしまえばいい……。

そうすれば、ジョシュに最初に訓練なんてさせずにすんだ」

「ソフィ、身分を無くしても責任をとる奴は必要で、

結局同じだ。誰かが引き受けないとなんねーんだよ」

オーリーはポンポンとソフィアの頭を軽く叩いた。


「まあな、生まれながらに決まってるっていうのは

理不尽だよな。でも俺は、お前がそれを選んで産まれてきたって

信じてるんだぜ?それにジョシュはな、例え身分があってもなくても

1番最初にお前が訓練することは許さない。

そうだろ?婚約者なんだろ?ジョシュを信じろ」



ソフィアは、オーリーの言葉に何も言えなかった。

オーリーのいう通りだ。

しばらくの間、考え込んでいたが、だんだん腹が立ってきた。


「オーリー、そもそも怪しげなことをしている奴らが悪い。

そうだな?」

「ん?? おっ……、おう……、その通りだ」

「ガザンの奴らめ……、だんだん腹が立ってきた。

そもそもヤツらが身の程知らずだから、こんなことになったのだ。

……そうだな、政治を利用するのも悪くない……。

覚えてろよ……!!」


ソフィアが、戦意を回復したとき、ツァイトが話せると

お呼びがかかった。

「分かった。今、行く」

そう言って立ち上がったソフィアは、珍しくやる気に満ち溢れていた。



訓練場に足を踏み入れると、ツァイトはいつもの笑顔で座っていた。

「閣下、座ったままでお許しください。申し訳ない……」

「何をいうのです、ツァイト殿。そのままで。

さ、医師達よ。報告を頼む」


侍医は答えた。

「閣下、先ほどと同じく身体的に異常はありません。

魔力切れと同じ症状だと判断しております 」

魔法医療医師も続ける。

「こちらも同じ判断です。魔具の魔力は空になっておりました。

魔具の効果で魔力の減り方が、副閣下より少なかったと見て

間違い無いと思います。医療団の補佐で、さらに魔力の温存が

可能かと思います。ただ、医療団も魔力回復の魔具か、薬湯を

常備する必要があるかと思います」



ソフィアは、顎に手を当てて考えた。

「全ての人物の魔力の温存が必要だのだな?」

「任務で万全を期し、なおかつ秘密裏に魔法を使用するなら

それが不可欠では無いかと考えました」


クアドロもしばらく考えて、ソフィアに提案する。

「ソフィア殿、やはり特別に専任するものを決めた方が良さそうです」

「そうですね。それが全てを守ることになりそうです」


そこに、テオドアがニコニコと話し始めた。

「姉上、次は僕が訓練してよろしいですか?

今、ツァイト殿に魔具の効果を示していただいたでしょう?

今度は魔具と医療団が補佐してくれると、どうなるのか

検証して、本日の訓練は終了という流れでいかがでしょう?」


「テオドア、お前は訓練への参加は無しだ」

そう言われてもテオドアはニコニコしていた。

そう言われるだろうと思っていたのだろう。


「姉上、私たちは2人だけの兄弟だとおっしゃったじゃないですか。

姉上が国内を留守にするとき、国を守るのは僕です。

父上は、最後まで力は使えない。だから、僕も訓練する必要があると思います」

「テオドア、お前はまだ成長途中だ。身体的にも、精神的にも。

お前は、確かにジョシュやツァイト殿より魔力が少ない。

補佐があっても、ダメージが出るかもしれん。お前はまだ学生なのだ」


それでもニコニコとテオドアは食い下がった。

「なるほど、姉上はもしご自分が僕と同じ立場だったら

訓練は避けるのですね?魔力が少し少ないだけで、訓練に耐えられるのに?」


そう言われて、ソフィアはグッと詰まった。

ゲンナリした顔をして、しばらく動かずにいたが、ルークを見る。

大きなため息をついて、ルークに告げた。


「ルーク、父上にテオドアの訓練について許可を取ってくれ。

さすがに私の一存では判断できん」


そう言った後、苦々しい顔でテオドアを見た。

「テオドア、父上から許可が下りなかったら諦めろ。いいな?」


「はい、姉上」


テオドアはいい笑顔で答えるのだった。





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