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俺の閣下  作者: テディ
本編
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第82話 感覚

 テオドアの案は、極めて現実的だった。

まずは、魔具の選定。魔力を増幅させるにも内蔵されている魔石によって

威力が違ってくる。どの魔具を持つかは、重要なことだ。

ランクは魔具にもよるが、だいたい5ランクまである。

テオドアは、ランクが3に値するものを提案した。


「もちろんランク1を持ち歩ければ、それに越したことはありません。

でも国によっては貴重で持ち出せない可能性もある。

やはり一般的な誰でも装備できるアンプリフィカシオンが無難だと思うのです。

これなら魔具の魔力が空になったとしても、魔力も補充できて無駄がありません。

これで事足りるかは、ジョシュア殿に聞いてみることが大切だと思います」


ソフィアは、さっきよりも柔らかな表情でテオドアに聞いた。

「なぜアンプリフィカチュールではないのだ?」

ソフィアが提示した魔具は、ランク2だ。

テオドアは、優しく微笑んだ。

「姉上、皆が魔力が無限にあるわけではありません。

節約ですよ、節約」


そう言ったテオドアに、ツァイトが感心したように尋ねた。

「テオドア殿下、魔力も魔石も節約が大切とお考えですか?」

そうすると、テオドアは少し恥ずかしそうに答えた。

「ええ。でもこれは僕が姉上より能力がないから考えついたのです」


クアドロは、笑いながら言った。

「テオドア殿、そんな謙遜を……。アイディアを持つのは

素晴らしい発想の持ち主だということですよ」

テオドアは首を振った。

「ありがとうございます、クアドロ殿下。

でも本当のことなんです。僕は姉上にできないことができます。

でも魔法に関しては、姉上には敵わない。工夫するしかなかったのです。

でも、欠点も長所になり得ると、思っていただけるでしょう?」

テオドアは、ウィンクして自慢げに言った。


その様子に、思わず皆が笑ってしまった。

クアドロは満足そうに、うなずいていた。

「テオドア殿、その通りですね。皆が長所になるように

工夫すれば良い。ただそれだけですね」

ソフィアは、優しく微笑んだ。

「テオドア、まさかお前、引目を感じていたわけではあるまい?

自慢の弟なのだからな、堂々としておれば良い」


テオドアは素直に返事をした。

「はい、姉上。クアドロ殿下にもご理解いただけて嬉しいです」


ソフィアはテオドアに質問を続けた。

「魔具と魔力の節約をするのは良いとして、どのくらい魔力が残るかが

問題になるのだな?で、節約した魔力を、どのように使うのだ?」

「姉上、まずは撤退か撤収の体力温存に、それから怪我をしたものの

手当てに、そして、予想できない敵への防御か攻撃に。

使わなければいけない所は、多岐に渡ると思います。

そして、1番大切なのは聖動物と話すために」


ソフィアは、やはり静かにテオドアを見ていた。


「魔力がない状態で聖動物と話したことがないので、

何ともいえませんが、やはり魔力が残っていた方が

聖動物の警戒心も取れるのではないかと思うのです。

いかがですか?」


ソフィアもクアドロも少し考え込んだ。

クアドロが口を開く。


「確かに、魔力がない状態で聖動物にあったことがありません。

彼らが魔力の強いものを好むのは、会話できるからかもしれませんね。

……探る必要がなく、安心できるのかも……」

ソフィアも、テオドアとクアドロに同意した。

「そうですね、理論的でもあります。テオドア、よく分かった。

ジョシュが戻ったら確認し、訓練を続けよう」


テオドアはニコニコと嬉しそうにしていた。

「はい、姉上」


ジョシュアが戻ってくるまで、各自自由にしようとなり、

部屋の空気は、緊張感が緩んだ。


それぞれ打ち合わせしたり、確認したり、談笑したりと

休憩らしくなっていく。


ソフィアは、窓辺の椅子に座り、隣にオーリーが立っていた。

警護も兼ねているのだろう。

クアドロは、その様子を見るとソフィアの横の椅子に座ってもいいか尋ねた。


ソフィアは、驚いたように返事した。

「クアドロ殿、もちろん大丈夫です。どうぞおかけください。

ああ、オーリー……」

言いかけたソフィアを、クアドロは笑顔で制止した。

「ああ、ソフィア殿。どうぞそのままで。

オーリー殿も、そのままでいてください」


そういうと椅子にかけて外を眺めた。

「いい季節になりましたね、ソフィア殿」

「ええ、過ごしやすくなってきて景色も色とりどりになってきた。

ヘイネシア王国も、同じような景色ですか?」

「ええ。ただ、我が国は山が多いので、緑の濃くなる事で

季節の変わりゆく時間を感じるのです。今は新緑、

これから深い緑に変わり、それが赤や黄色、陽の色に変わり、

葉が落ちて行く。しばらく何もなかった木に小さな芽が出て、

寒い時期の終わりを感じ、また新緑が出るのです。

花も美しいですが、木々もなかなか良いものですよ」


それを聞いたソフィアは、微笑んだ。

「本当に、それは素敵な季節の移り変わりですね」


「ソフィア殿……、辛い思いをさせてしまって申し訳なかった。

心からの謝罪を……。ジョシュア殿に1人、重責をおわせ

貴方に辛い思いをさせました。もっと訓練を深刻に考えるべきでした」


ソフィアは、いつもとは違いポツリポツリと話し始めた。

「クアドロ殿、謝罪はいらないのです。本当に。

もし貴方が私と同じ立場であれば、同じ判断をしたでしょう?」

そのソフィアの問いに、クアドロは無言で肯定していた。

「いいのです……。私は王族なので、もっと覚悟が必要だった。

……貴方もご存知でしょう?私には仕事でしか国民に報いることが

できません。他国の姫君とは、明らかに違う自分。

ジョシュは私の側にいることが当たり前で、

いなくなるなど考えたこともありませんでした」


王族はあまり自身のことを打ち明けたりはしない。

クアドロは、ソフィアの変化に驚いていた。


「取り乱して申し訳なかった。私こそ貴方へ謝罪を……。

自分でもジョシュとのことは、感情も含めて初めてづくしで……。

戸惑ったり、抑えることができなかったり、お恥ずかしい限りです」

「ソフィア殿、いいえ、それが普通のことなのです。

大切なひとが、傷ついたり倒れ込めば、取り乱すのは当たり前だ。

貴方は、他の人と変わりはありませんよ」


そう言って柔らかく微笑んだクアドロは、ソフィアに尋ねた。

「グリフィス王国の皆さんを、盟友と思ってもよろしいですか?」

ソフィアも柔らかく微笑んだ。

「ええ、もちろん。そう言っていただけると我が国の民も喜ぶでしょう」


そう言ったソフィアに、クアドロはさらに尋ねた。

「ありがとう。ソフィア殿……盟友になったことですし、

1つ教えを乞いたいのです」


ソフィアは、目を丸くした。

「ええ、私でお教えできるならば」

「貴方はジョシュア殿が運命だと分かった時、

どうやって自分の気持ちに受け入れたのですか?

貴方たちを見ていて、私も運命を見つけたくなったのです。

とてもうらやましくなってしまった」


それを聞いたソフィアは、ああ……と笑い出した。

「クアドロ殿、簡単です」

「簡単?」

「私は、確かにジョシュが運命と理解するまで試行錯誤した。

でもジョシュが運命と気がついた時点で、受け入れたのです。

それは理屈ではない。思考も感情も全てが一瞬で納得しました。

だから、貴方にも分かるはずです。貴方は運命を見つけた瞬間に

それを受け入れ、理解するでしょう」


クアドロも笑い出した。

「なるほど……、それは分かりやすい。

私も運命を見過ごさぬよう、気をつけて周りを見ましょう」


そう言って、クアドロは暖かな気持ちになった。

刻を待とう……。自分の目の前に運命が現れるはずだ……。


それはクアドロの気持ちに、明らかに色を塗り始めていた。


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