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俺の閣下  作者: テディ
本編
82/186

第81話 労り

 ジョシュアは待機していた侍医団と魔法医療団に

診察を受けるために、ルークと騎士に付き添われて行った。


ソフィアは、そばについていたいのをこらえた。

他国の王子が来ているのだ。自分には役目がある。

そんなジョシュアがソフィアに笑った。


「閣下、大丈夫です。もう普通に話せるようになったでしょう?

想像より、ダメージは少ない。あとでご説明できるよう

少し回復のためのお時間を頂戴します」


そんなジョシュアの顔色より、ソフィアの顔色の方が

よっぽど青かった。

「閣下、少し休んでください」

そう柔らかく笑って、ジョシュアは下がって行った。


残された面々は、応接室で休むことにした。

グリフィス王国の皆はジョシュアが倒れ込んだことに

衝撃を受けていた。

ジョシュアが仕事について以来、誰もジョシュアが倒れ込むところなど

見たことがない。ソフィアを守るための盾になったとしても、

そんなことは1度もなかった。


テオドアは1人、王子としての役割を果たそうと努めていた。

衝撃を受けている姉の代わりに、ヘイネシア王国の皆を

歓待している。


「クアドロ殿下、さあ皆さんも、こちらへどうぞおかけください。

ああ、姉上の近侍がコーヒーを入れてくれたようです。

ヘイネシア王国でもコーヒーは日常的に召し上がるのですか?」


そんなテオドアに、クアドロは目を細めた。

「テオドア殿、ありがとう。せっかくの心尽くし、

ありがたくいただきます。皆もいただくが良い」

そう言って、コーヒーに口をつけた。

ヴェルデも、ツァイトも、それに続いた。

「テオドア殿下、美味しゅうございます。

ヘイネシア王国は、どちらかというと紅茶を好みます。

でもグリフィス王国のコーヒーは美味しい。

我が国よりも、焙煎の方法などが発達なさっているのかもしれません」

ヴェルデは、素直に感想をのべた。


テオドアは嬉しそうにしている。

「ヴェルデ殿、ありがとう。褒められると嬉しいものですね。

紅茶も種類がたくさんあるでしょう?奥が深そうですね」


クアドロは、テオドアに答えた。

「ヘイネシアには、紅茶の茶葉の選定士がいるのですよ。

細かくランク分けされておりまして、特級選定士は

5人しかおりません。嗅覚と味覚が、敏感なものが向いているようです」

「そうなんですね?!それは初めて知りました。

我が国にも選定士はおりますが、細かくランク分けはしていなかったと

記憶しています。それは興味深いですね」

「どの道にも、それを極められる者がいるというのは

面白い現象ですね。グリフィス王国もそうでいらっしゃる」


クアドロは、優しく笑うとソフィアを見た。

「ソフィア殿、貴方に謝らなければ」

そう言われたソフィアは、ハッとして驚いたような顔をした。

「クアドロ殿、そんなことはありません。なぜ貴方が謝罪する必要が?

全ては私の責任において、進めているのです。だからお気になさらぬよう」


毅然というソフィアに、クアドロは優しく言った。

「いいえ、貴方だけの責任ではない。部下を持つ者には

全ての責任が問われる。私にも責任があるのです。

ジョシュア殿だけに負荷をかけて申し訳なかった。

何としても私が参加できるよう、国内をまとめるべきだった」

そう言うクアドロを、ソフィアは優しく制した。

「貴方のお気持ちはありがたい。魔具を使わないことも、

回復の魔法を使わないと判断したのも私なのです。

どの程度のダメージが、どのような形でくるか

判別できぬうちに むやみに回復の魔法をかけてもしょうがないと、

ジョシュアに大反対されました。

それを押し切ることのできなかった私の弱さの責任なのです」


ツァイトは、そんな2人に進言した。

「部下想いの上司を持って、とても幸せだと我々は思っております。

ジョシュア殿は、だからこそ信頼を持って訓練に臨まれたのです。

ジョシュア殿の経験を無にすることはできません。

これをチャンスに変えましょう。いかがですか、殿下方?」

クアドロは、ゆっくりとうなずいた。

「そうだな、ツァイト。その通りだ。さあ、ソフィア様。

アイディアを出しましょう」


そこにテオドアは若者らしい初々しさで参加した。

「クアドロ殿下、姉上、僕も考えを述べさせていただいて構いませんか?」

「もちろんですよ、テオドア殿」

「クアドロ殿がよろしいのであれば、構わない。言ってみるといい」

「はい、ありがとうございます」


テオドアは、喜んで話し始めた。

「僕が考えつくくらいだから、皆さんも同じ考えが浮かんでいると思います。

ジョシュア殿の様子を見る限り、工夫なくこの魔法に取り組むのは

無謀に思えるのです。確かに魔法の発動は難しくなさそうです。

でも、その後の影響を考えると状況によって好ましくありません。

やはり魔具を使うのが最善だと思います」


クアドロはうなずいた。

「状況によって、すぐに撤退や撤収になるのであれば

やはり動けた方がいい。そこは重要な課題ですね」

「ジョシュア殿は、姉上がいなければ特例で大臣になっていただろうと

言われるほど強大な魔力の持ち主です。その人物が動けないのは

非常にまずいと思うのです。

魔力増幅の魔具が必要ですし、魔力だけを特化して回復させるものが必要です」


ソフィアは、静かにテオドアを見ていた。

「確かにその通りだ。テオドア、何かアイディアがあるのか?」

テオドアは、姉を見てにっこりと笑った。


「ええ、姉上。こういう案はいかがでしょうか?」

そう言って、自分の考えを話し始めたのだった。

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