第75話 小言
その日の晩、ジョシュアはルークの屋敷のサロンで
カイが言うところのお姉さま達に、クギを刺されまくっていた。
リリーは、いつもの様に上品に椅子に腰かけ
ピンと伸ばした背筋で、頬をあからめながらも
大切なことだからと、懇々とジョシュアに話している。
リリーが、平静なふりをして赤くなりながら
お小言をしているので、ジョシュアはいたたまれなくなった。
脇で、カイとマイアが堪えきれない様に
肩を揺らしている。
ジョシュアは、スキンシップを増やせと焚きつけた男性陣を睨み
神妙な顔でリリーの話を聞いていた。
ルークとオーリーは、気の毒そうにジョシュアを見て、
モリンは、リリーと同じ様に赤くなったままだった。
まだ一言も話していない……。
オーリーは苦笑いしながら、眺めていた。
ーーまさか、ソフィから話がもれるとは……。
ジョシュアは、ソフィアが話した内容を告げられ、
思わず片手で眼を覆い、天井を見上げた。
それから30分ほどの間、この状態なのだ。
オーリーは、しょうがねえと事態の収集に乗り出した。
「まあまあ、リリー。ジョシュもそれはよく分かっているさ。
ソフィは王族なんだ。不名誉なことはしねえって最初から言ってたぜ」
リリーは、キッとオーリーを見た。
オーリーは、思わずひるんだ。
ーーマズイ……。こっちにもトバッチリが……。
「オーリー、そうは言っても殿方が約束を守れるのか
誰もわからないのが、世の常でしょう?!」
恥ずかしさのあまり、感情が高ぶったリリーは、
普段の彼女では考えられない文章を口にした。
と、同時にさらに真っ赤になった……。
「ま、……まあ……、そうなんだが……。
いや!!そこはジョシュが死守する!!な?!」
必死に応戦するオーリーに、ジョシュアはうなずいた。
リリーは、大きく息を吸って自分を落ち着けた。
「ジョシュ、あなたを信じているけど、くれぐれも気をつけて!!」
「分かった。ソフィの名誉は守る。ここに誓う」
ジョシュアはそう誓いながら、名誉さえ守ればいいよな……?
と、男性陣を見た。そのジョシュアの瞳に、意を汲み取って
うんうんと男性陣はうなずいていた。
共犯の出来上がりである。
よし、ルークですらうなずいているのだから
ここは良しとしよう……。
ジョシュアは、ゴリゴリと色々なものを削られた様な気がして
久しぶりにグッタリしていた。
念を押した女性陣(マイアはとても楽しんでいたが……)は
遅い時間だからとルークの家令に送られていった。
残った男性陣は、さすがにグッタリとしていた。
人ごとの様に軽やかだったのはカイだけだ。
「いやあ、まさかソフィが話すとはね……」
カイは、笑っていた。
ジョシュアはグッタリとしながら答えた。
「お前……、いつか同じ目に合えばいいんだ……」
カイは、そう言うジョシュアに反撃に出た。
「ジョシュ、ソフィ相手にしても甘さが足りなかったんじゃないかい?
甘さに照れが出たら、さすがにソフィも話さないと思うんだけど……」
「なっ……、お前!!あんだけ甘やかしたのに……!!」
「いや〜、たぶんソフィがそれが
甘い恋人の時間って気がつかないのが問題なんだよ。
ってことはだよ??自覚させられていないことが問題っていうか……」
「……お前、婚約したとはいえ……、あれ以上やっていんだな?!
確かに、ソフィの名誉は守る!!
でも、あれ以上甘やかせって言ってるんだぞ?!」
詰め寄るジョシュアに、カイは笑いながら言った。
「うん。とりあえず、夫婦の秘め事は内緒なんだぞって
教えなくちゃね?」
ジョシュアはウッと詰まった。
ーー羞恥心……。ソフィにそこから教えるのか……。
カイとジョシュアのやりとりを見て、
ルークとオーリーは、眼を覆って首を降っていた。
ルークが、ジョシュアに話した。
「ジョシュ、リリー達の気持ちもわかる。
でもジョシュの気持ちもわかる。
だから、最後の一線だけは守るんだ。分かるね?」
ジョシュは珍しくふてくされた。
「分かってる……!!」
オーリーは、年長者らしくジョシュを慰めた。
「ジョシュ、何せソフィから話がもれるとは
思わなかった……。次は気を付けろ」
「分かってる……!!」
ジョシュアは、まだふてくされていた。




