第74話 爆弾
友人達の計画が、確実に進んでいることに
ソフィアはホッとしていた。ソフィアは立場があるので
女性だからと仕事の邪魔をされたことはない。
ただ、近侍や侍女、役所、至る所で女性が女性というだけで
嫌な思いをしない様に、父から働きかけてもらっているのだ。
同じ様に、男性も男性だからというだけで長時間の勤務や
無理を言われない様に働きかけてもらっている。
父は、ソフィアが真剣にこの問題について訴えたとき
かなり深刻な顔をしていた。
自分には思い付かなかったといい、宰相を呼んで
すぐに対応にあたってくれたらしい。
おかげて処罰されたものも出た様だった。
ソフィアは、本人が思っているよりも
かなり真面目な役人なのだ。
ただ友人だからと言って、大っぴらに御用達にはできない。
本人達のためにならないと、自分は極力動かずにいる。
商人にも、この理念を伝えなければな……。
ソフィアは、もう次に広めるところを考えていた。
そんなソフィアに、皆は口々にジョシュアとのことを聞きたがった。
もちろん口火を切ったのはマイアだ。
「ソフィ、ジョシュとは順調なの?随分と仲が良いんですって?」
ソフィアは、キョトンとして目を丸くした。
「仲良く?……ん、そうだな……、いつも通りだが……。
そうだ!!皆に聞きたいことがあったんだ!」
「なあに?」
皆はソフィアから質問が出たことに、少し驚いていた。
「ちょっと仕事が忙しくてな。以前に紹介してもらった様な
恋愛小説を読む暇がないのだ」
「そうね、ずいぶんと忙しそうだものね。それで?」
モリンが首を傾げている。
「婚約者って、どうするんだ??」
リリーが、紅茶をむせた。
モリンが笑いながらリリーの背をさすり、
マイアが大笑いしている。
マイアは、ソフィアの質問に質問した。
「ソフィ?婚約者らしく過ごしたいの?」
「う〜〜ん??そうではなく……。ほら、私は変わっているだろう?
だから、できるかどうかは別にして、聞いておこうかと思って。
できなきゃ、しょうがない。ジョシュにそう話す」
マイアは、まだ笑っていた。
「そうなの……。そうね、一般的には一緒にお出かけしたり
プレゼントを贈りあったり、2人で会話する時間を
増やすんじゃないかしら?」
ソフィアは、その答えに笑顔になった。
「そうなのか。意外に簡単なことなのだな。
確かに何度もお忍びでは出掛けられんし、
会話は忙しいから仕事の話が多い。
ここは改善せねばならんな。プレゼント……。
ふむ、ジョシュの好きなものは何だ?」
「ソフィから贈られれば、何でも喜ぶと思うけど」
「そうか?実は、前に欲しいものがないか聞いたことがあってな……」
マイアは、じゃあ……と尋ねた。
「簡単じゃない。ジョシュは何が欲しいって?」
ソフィアは顎に手を当て、難しい顔をした。
「それがな、物はほしくないと。
私を抱きしめていると落ち着くから、触れさせろというのだ。
まあ、ジョシュが落ち着くなら良いんだが……。
最近忙しくて、ジョシュも疲れているのだと思うんだ」
今度は、モリンがむせる番だった。
リリーは、厳しい顔になり、マイアはさすがにあっけにとられている。
リリーの冷気にハッと気がついたマイアが、慌ててソフィアをフォローした。
「ソフィ?!それって抱き締めるだけよね?!」
「ん?? ああ、そうだ。でも子供の時にしていた様な親愛のキスが
最近多くなっていてな。ジョシュの話だと、結婚してから
教えることがあるから、触れるのに慣れてくれと言うのだ」
リリーは、冷気を引っ込めモリンと共に、真っ赤になった。
マイアは、再び笑い出した。そして小声でつぶやいた。
……ジョシュってば……、やるじゃない……。
ソフィアは、皆の様子に気がつかず変わらず難しい顔をしている。
「まあ、それでも良いのだが、贈り物をしたいと言う前から
結婚後の夫婦の勉強として、していたのでな。
同じで果たして良いものか、悩んでいたんだ」
リリーはマイアと視線を合わせ、ため息をついた。
「マイア、どうしましょう。怒った方がいいのかしら?」
「そうねぇ、どうしたものかしら……。まあ夫婦になるのだから
避けては通れない道なのだし……。ちょっとクギを刺す程度にしておきましょう」
話し合っている2人を見て、ソフィアは少しバツが悪そうにしている。
「何か、マズかったか?やっぱり、物も贈った方が良かったか?」
そんなソフィアに、マイアは優しく笑った。
「いいえ、ソフィ。あなたは間違ってなんかいないわ。
心配しないでちょうだい。でも、そうね……、時には
ジョシュの好きな物を想像して、贈り物をするのもいいかもよ。
プレゼントは秘密にしておくの」
それを聞いたソフィアの顔はパアッと明るくなった。
「そうか?そうだな!!ジョシュの喜びそうなことを
考えるのも婚約者の役目だな。分かった!!やってみる!!」
ニマニマしているソフィアを見てマイアは、また笑い出すのだった。




