第71話 懐刀
ルークの元に、カイが現れたのは、
青龍が自分の地に帰って、5日後のことだった。
ルークは、屋敷に戻ったところで
やっと晩餐にありつこうかという時だった。
カイは、ルークの屋敷のダイニングルームへ通され
一緒に食事することになった。
ルークはクスクス笑っていた。
「丁度良い時に来たね。1人での食事はつまらないから
助かったよ。まだ食べていないんだろう?」
カイもニコニコと、席につく。
「そうなんだ。僕ってタイミング良いよね。
すごく美味しそうな香りがするもの」
ルークは給仕に、もう下がって休んで良いと言い
人払いした。
ルークはワインが好きだ。赤で何年も寝かせた
渋みの強いワインを好む。
カイは反対に、白でキリッと辛い味を好んだ。
「ルークのところのワインは、いつでも美味しいよね。
冷えていて辛さも際立つし、とても美味しいよ」
「そうか、良かったよ。僕はたいてい赤だからね」
ルークは、グラスを置くと本題に入った。
「さて、カイ。どこまで掴めた?」
カイはフォークとナイフを手にとった。
「ルークから頼まれたことは、全て確認が取れたよ」
「と、言うことは?」
「ガザンの王室は揺れている。何年も前に第一王妃がなくなって、
第一王子は、良くない取り巻きに囲まれた。
あれが諸悪の根源だと思うよ」
「そうか……。ガザン国王は、止めなかったのかい?」
「新しい王妃に夢中だったようだよ。可愛い第二王子に
第一姫、第三王子と立て続けに御子も生まれているしね」
「そうか……。今の国王の動きは?」
「さて……、そこなんだ。親としての愛情が
事態をより深刻にしていると思うよ」
「いさめもできず、思い切った決断もできない」
「うん。宰相あたりから、ついに忠告が上がったらしいよ」
「まあ、そうなるだろうね」
ルークは、静かに食事を続けていた。
「カイ、どう思う?」
「何について?」
「今後の動きについてだよ」
カイは、カトラリーの動きを止めた。
「第二王妃は、頭の良い方だと思う。決して第一王子を
邪険に扱わない。いつでも彼を立てて子供たちにも
お兄様のお手伝いができるよう、勉学にも武芸にも励むように
話しているし、実際そう行動している」
ルークは微笑んだ。
「腹の中は?」
「腹の中が違っても、彼女は行動にはうつさないと思うよ。
子供たちに危険が及ぶことはしないと思う。
国王が決断したら、動くだろうね」
「そうか……。」
「実は……第二王子たちが聖動物に会えていないのは
妨害が入っているのではと思って調査を続けている」
「国王が決断する問題なのに?」
「第一王子はね、自分は知力に長けた策略家だと思っているんだろう。
でも、証拠が上がらないだけで疑われる根拠がありすぎるんだ」
「ソフィが、第一王子の名を出しただけで、とても嫌そうな顔をしていたよ」
「そうだろうね。彼はね、人から称賛されたくてしょうがないんだ。
だから自分の意見に、素晴らしいと言う人だけを周りに置く。
周りに操られていなければ良いんだけどね」
「用意周到な黒幕がいそうだね、カイ」
カイは、いつもの愛嬌のある笑顔ではなく
酷く冷静な表情で、ルークを見ていた。
「ルーク、僕もそれは考えた。でも周りの人間は
第一王子に失敗してもらっては困るわけだ。
となると、やっぱり国民のことを考えない、こずるい役人しか
手元にいないと思うよ。あとは、常軌を逸した魔法使い」
ルークは、ゆっくりとワインを注ぎ出した。
実は給仕がいない方が、自分の好きにできるので
ラクなのだ。
「カイ、他の国でガザンと連携しそうな国は?」
そう聞かれて、カイはふふっと笑った。
「喜んで、ルーク。そんな危険を侵す国は無かったよ。
もうすぐ、ソフィとヘイネシア王国に、連携の申し込みが
来るんじゃないかな」
「さすがに今回は、明るい材料があるとホッとするね」
ルークも小さく笑った。
カイは、ルークに注いでもらった白ワインを
美味しそうに飲み干した。
ルークが、もう一回注ぐ。
「美味しい〜〜、美味しいよ、ルーク」
ルークは微笑んだ。
「そうか、良かったよ。君も、国中枢に関わる部署にいるからね。
安全には気をつけて動くんだよ」
そう言われてカイはいつもの可愛らしい笑顔に戻った。
「うん、分かった。充分に気をつけるよ」
こうして、あとは普段の友人に戻るのだ。
冷静に見えるルークは、誰よりも心配性で気苦労も多い。
カイは、そんなルークが好きだった。
兄がいないので、よけいに有り難く思うのかもしれない。
ルークの愛情もしっかりと感じて嬉しくなるのだった。




